出版社を探す

楽譜の校訂術

音楽における本文批判:その歴史・方法・実践

著:ジェイムズ・グリーア
訳:高久 桂

紙版

内容紹介

楽譜の校訂について,音楽における「本文批判」の見地から,その歴史,方法論,実際の適用における諸問題をコンパクトにまとめた貴重な書。

いわゆる原典版・実用版・正統性といったことも何度も触れられており,楽譜のユーザー(演奏者/研究者)には必読の内容となっている。さらに興味深いのは,楽譜校訂そのものが実に創造的でスリリングな営みであることを現場からリアルに描きだしていること。そして「音楽にとって楽譜とは何か」という本質的な問いを投げかけていることである。

はじめに校訂理論の歴史的な展開と,楽譜の特殊性について触れ,続いて実際の校訂の手順にのっとりつつ,以下のような話題が取り上げられる。(1)音楽史料の性質と校訂の下準備,(2)音楽史料間における派生関係の扱い,(3)テクストの確定と具体化,(4)ケース・スタディ。(5)補遺:史料調査における諸要素や用語,必須となる参考資料。
取り上げられる例は古楽から現代音楽,オペラ,交響曲など幅広く,楽譜校訂の未来,CD-ROMその他の電子媒体への適用可能性についても触れられている。

日本語版刊行にあたり,著者グリーアによる新たな序文と最新資料の紹介を掲載。
訳者による詳細な用語集つき。

目次


日本語版への序(校訂に関する最新の文献リストを含む)
凡例

1 序:校訂者の課題
2 音楽史料の性質
3 楽譜史料と系統的派生関係
4 誤記,異読,校訂上の判断:テクストを確定する
5 テクストの表現方法
6 結語:校訂者の姿勢
7 エピローグ
 (1)ド・シャバンヌ(989-1034) の筆跡で筆写された楽曲の校訂譜
 (2)モーツァルト《交響曲第36番ハ長調「リンツ」》 K. 425. クリフ・アイゼン編(London, 1992)
 (3)ヴェルディ《ドン・カルロ》 ウルスラ・ギュンター編 (Milan, 1980)

補遺(史料の所在,調査,記述,転写)

参考文献(手稿譜,校訂楽譜,論文と単行本)
用語集(訳者編)
索引

著者略歴

著:ジェイムズ・グリーア
カナダのウェスタン大学音楽学部教授。主な研究分野は,特にアキテーヌを中心とする中世の典礼と音楽,本文批判。11・12 世紀アキテーヌのヴェルサリウムの伝承に関する研究で1985 年にトロント大学より博士号を取得。これまでに関連分野の論文,著作多数。2021 年には『西洋における楽譜の記譜法』を出版予定。カナダ中世学会のMargaret Wade Labarge 賞を2 度受賞し,2016 年にはカナダの王立協会フェローに選出された。
訳:高久 桂
1987年生まれ。立教大学法学部政治学科卒業。青山学院大学大学院文学研究科博士前期課程修了(西洋音楽史専攻)。同課程において音楽学を那須輝彦氏に師事,16~17世紀イングランドの音楽を中心に研究し,修士論文「J. ダウランド訳『オルニトパルクス ミクロログス』について」を提出。中世ルネサンス音楽史研究会同人。同研究会の出版物にグイド・ダレッツォ『ミクロログス(音楽理論):全訳と解説』(春秋社),訳書に『ルネサンス・初期バロックの歌唱法』(道和書院)がある。日本音楽学会,The Lute Society(UK),The Lute Society of America,日本リュート協会,The Renaissance Society of America 各会員。現在,桐朋学園大学附属図書館員。

ISBN:9784810530117
出版社:道和書院
判型:A5
ページ数:368ページ
価格:3800円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年04月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AV