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木々は歌う

植物・微生物・人の関係性で解く森の生態学

著:D.G.ハスケル
訳:屋代 通子

紙版

内容紹介

ジョン・バロウズ賞受賞

アマゾンの先住民の森林への深い智慧と森の構成員としての関係性、
イスラエルとパレスチナのオリーブ農家の伝統と改革、
大都市ニューヨークの1本の街路樹から見えてくるコミュニティの姿、
400年前から命をつなぐ日本の盆栽に見る人と自然―――

1本の樹から微生物、鳥、ケモノ、森、人の暮らしへ、
歴史・政治・経済・環境・生態学・進化すべてが相互に関連している。
失われつつある自然界の複雑で創造的な生命のネットワークを、
時空を超えて、緻密で科学的な観察で描き出す。

目次

日本語版への序文―弁当箱の木の葉が象徴するもの
まえがき

Part1

セイボ Ceibo 地上50メートルの生態系
エクアドル、ティプティニ川周辺
南緯0度38分10・2 西経76度8分39・5

葉の言葉
天空の湖
森の頂の多様性
小さな強者たち
集団に生かされる
森に溶けこむ精霊たち
石油の眠る土地
アマゾンの声

バルサムモミ Balsam Fir 森は思考する
オンタリオ州北西、カカベカフォールズ
北緯48度23分45・7 西経89度37分17・2

おしゃべりなアメリカコガラたち
鳥の記憶と木が未来にかける夢
世代を超えるバルサムモミの記憶
対話する植物とバクテリア
土のたてる密やかな音
個と集団のあいまいな境界
ネットワーク―生命の根源的な性質
交易―毛皮・金属・木材
ランドサット―北の森の土を知る
針葉と根と微生物と菌、そして人間

サバルヤシ Sabal Palm 砂浜で生きる
ジョージア州、セント・キャサリンズ島
北緯31度35分40・4 西経81度09分02・2

バリア島のコミュニティ
たゆみなく変わりつづける地
砂という波に乗るサバルヤシ
幹に水を貯めて、数カ月生きる
アカウミガメの古い海岸の記憶
波の泡の筏(いかだ)―海の微生物のコミュニティ
プラスチックを分解する微生物
海面上昇が難民を生む
海辺に生きる賢者となるすべ

トネリコ Green Ash 倒木をめぐる生物たちの世界
テネシー州、カンバーランド高原、シェイクラグ・ホロー
北緯35度12分52 ・1 西経85度54分29・3

3月―キクイムシ
4月―トチノキ
5月―ミソサザイ
6月―ガラガラヘビ
8月―木の洞
10月―動物たちの通り道
11月―顕微鏡下の生き物たち
12月―ヤスデ
1月―種子のゆりかご
2月―倒木から糧を得る
最初の誕生日
二度目の誕生日

幕間 ミツマタ Mitsumata 紙と神の記憶
越前市、日本
北緯35度54分24・5 東経136度15分12・0

Part2

ハシバミ Hazel 中石器時代の人々を養う
スコットランド、サウス・クイーンズフェリー
北緯55度59分27・4 西経3度25分09・3

橋の工事が呼び覚ましたもの
ハシバミが支えた命
木の叫びが鉱夫の命を救う
ハシバミと石炭にかわる炎
関係性を再生する

セコイアとポンデロサマツ Redwood and Ponderosa Pine 木々をわたる風が太古と現代をつなぐ
コロラド州、フロリサント
北緯38度55 分06・7 西経105度17分10・1

樹皮の香り
風を梳(す)き、風を裂く針葉
樹木の苦しみの音
節水精神
火災は森林の姿を変える
噴火と化石セコイア
岩に刻まれた生命の歴史
ふたつの針葉樹の声を聞く
生命ネットワークに存する真理

幕間 カエデ Maple 二本のカエデが紡ぐ歌
[Ⅰ]―テネシー州、セワニー
北緯35度11分46・0 西経85度55分05・5
[Ⅱ]―イリノイ州、シカゴ
北緯41度52分46・6 西経87度37分35・7

カエデ[Ⅰ]―冬、かすかな変化の音を見る
カエデ[Ⅱ]―ヴァイオリンの音色
カエデ[Ⅰ]―四月、満開の花
カエデ[Ⅱ]―透明感のある塊
カエデ[Ⅰ]―若葉
カエデ[Ⅱ]―指で音を聞く
カエデ[Ⅰ]―太ったり縮んだりする小枝
カエデ[Ⅱ]―木の第二の人生
カエデ[Ⅰ]―小枝のなかのリズム
カエデ[Ⅱ]―息を吹き返す板

Part3

ヒロハハコヤナギ Cottonwood 公園の木と川と風をめぐる生命のネットワーク
コロラド州、デンバー
北緯39度45 分16・6 西経105度00分28・8

ふたつの川が合流するコンフルエンス公園
道路に撒かれる塩と川の生き物たち
排他的な自然
自然と非自然
人々と生き物が集う場所
川が人々の一部になる

マメナシ Callery Pear 街路樹はコミュニティへの入り口
マンハッタン
北緯40度47分18・6 西経73度58分35 ・7

木の一部となる街の音
都市と田舎の生物多様性
人の都合に左右される植物たち
毒を無害化する
街路樹との心の絆
木の根の空間が人々の居場所に
木々が都会を癒やす
梢の下に生まれる社会

オリーブ Olive 切り離せない木と人間の運命
エルサレム
北緯31度46分54・6 東経35度13分49・0

エルサレムの歴史とオリーブ
大災厄(なくば)の日
灌漑で「喜びに満ち、花の咲きこぼれる」土地
オリーブ林が紡ぐ物語
農村ネットワークを再構築する
コミュニケーションと協働
オリーブの花粉が語る文化の盛衰
関係性が保つ知識

ゴヨウマツ Japanese White Pine 樹木の命と人間の命は関係性のなかに築かれる
宮島、日本
北緯34度16分44・1 東経132度19分10・0
ワシントンDC
北緯38 度54分44・7 西経76度58分08・8

ある木のルーツを訪ねて
一本の木を丸ごと感じる
空気・木・森の関係性との対話

謝辞
訳者あとがき
参考文献
索引

著者略歴

著:D.G.ハスケル
デヴィッド・ジョージ・ハスケル(David G. Haskell)

アメリカ、テネシー州セワニーにあるサウス大学の生物学教授。
ジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団からフェローシップを与えられている。
オックスフォード大学で動物学の学士号、コーネル大学で生態学と進化生物学の博士号を取得。
調査や授業を通して、動物、特に野鳥と無脊椎動物の進化と保護について分析を行い、多数の論文、科学と自然に関するエッセイや詩などの著書がある。活動は、科学、文学の域を超え、自然そのものを思索するところへ広がっている。
前著『ミクロの森』(築地書館)は、ピュリッツァー賞最終候補となったほか、国際ペンクラブ・センターの選出するE. O. ウィルソン科学文学賞で次点となり、全米科学アカデミーの最優秀図書にも選ばれている。
著者のウェブサイトhttps://dghaskell.com/
訳:屋代 通子
屋代通子(やしろ・みちこ)

兵庫県西宮市生まれ。札幌在住。出版社勤務を経て翻訳業。
主な訳書に『シャーマンの弟子になった民族植物学者の話』上・下巻、『虫と文明』『馬の自然誌』『外来種のウソ・ホントを科学する』(以上、築地書館)、『ナチュラル・ナビゲーション』『日常を探検に変える』(以上、紀伊國屋書店)、『ピダハン』『マリア・シビラ・メーリアン』(以上、みすず書房)など。

ISBN:9784806715818
出版社:築地書館
判型:4-6
ページ数:368ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2019年05月
発売日:2019年05月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TVR