増補改訂 玄奘三蔵訳『唯識三十頌』要講
著:太田 久紀
内容紹介
「唯識は難しいとか、専門家のための佛教だという固定概念が、意外と深く拡がっていたように思う。しかし、私はそう思わない。もちろん、易しいとはいえないかもしれないし、多少の忍耐力も必要かもしれないが、現代のわれわれには、入りやすく、解りやすい佛教だと思う。それは、論理的に組織的に仏教が説き進められているからである。いきなり、「信仰」とか「信心」とか真っ正面にすえられると当惑するが、唯識は、まず、その説くところを理解しようという角度から論述されているのである。むろん、「信」は、宗教に限らず、われわれの人生全体にとって、最も重要な意味をもつ心作用だが、現代のわれわれにとって、知的理解からの道は、いいしれぬ魅力をもっているように思う。仏教理解への道、つまりそれは、真実の人生への一つの入口といってよいであろうが、その手がかりが与えられているようにも思う」『唯識三十頌要講』はじめにより
目次
はじめに
玄奘三蔵訳『唯識三十頌』原文
一、『唯識三十頌』とは
1、『唯識三十頌』について
2、世親菩薩について
3、玄奘三蔵について
二、稽首帰依す(帰敬頌)
1、その作者
2、五体投地して 唯識性
3、満に分に清浄なる者
4、仏道より与えられるもの 利楽
三、我・法の種々相 (第一頌前三句)
1、仮に由りて 2、我について 3、法について 4、三つのこころ
(Ⅰ) (第一頌第四句) 5、三つの〈こころ〉 (Ⅱ)(第二頌第一・二句)
四、奥深い人格の底 阿頼耶識(第二頌第三句-第四頌)
1、初能変の三の角度 阿頼耶識・異熟識・一切種子識(第二頌第三・第四句)
2、藏の三義 能蔵・所蔵・執藏(第二頌第三句)
3、過去を背負える自己 異熟(第二頌第四句)
4、未来へ向けて 一切種子識
5、種子とは
6、薫習とは
7、聞薫習について
8、無性有情について
9、所縁について(第三頌第一・二句)
10、認識の構造 四分義(第三頌第二句)
11、三つの境 三類境
12、知りえぬ自己、知りえぬ世界不可知(第三頌第一句)
13、阿頼耶識の動き 五遍行の心所(第三頌第二・三句)
14、生存は非苦非楽 捨受(第三頌第四句)
15、透明な自己 無覆無記(第四頌第一句)
16、〈こころ〉の動きもまた(第四頌第二句)
17、激流のように 恒転如暴流(第四頌第三句)
18、阿頼耶識の消えるとき(第四頌第四句)
19、第八識の三位
20、第八識の二位
21、第八識の存在論証
五、深い利己性 末那識(第五頌-第七頌)
1、自分にこだわり続ける自我(第五頌第一・二句)
2、彼に依りて彼を縁ず 所依・所縁(第五頌第三句)
3、四の根本煩悩(第六頌第一・二・三句)
4、他の〈こころ〉もともに(第六頌第四句)
5、汚れた〈こころ〉(第七頌第一句)
6、己の生を愛す(第七頌第二句)
7、受
8、末那識のない世界(第七頌第三・四句)
9、末那識の存在論証
六、第三能変(第八・第九・第十五・第十六頌)
1、六の〈こころ〉
2、三性に働く
3、相応の心所 広縁の意識
4、受
5、前六識の起滅 随縁現(第十五頌)
6、無心のとき 五位無心(第十六頌)
七、心所(第十頌-第十四頌)
1、いつも動く心所 遍行
2、別々の境に向かって 別境(第十頌第二・三・四句)
3、善の〈こころ〉(第十一頌)
4、煩擾悩乱の〈こころ〉(Ⅰ)煩悩(第十二頌第一・二句)
5、煩擾悩乱の〈こころ〉(Ⅱ)随煩悩(第十二頌第二句-第十四頌第二句)
6、善悪いずれへも 不定(第十四頌第三・四句)
八、諸識の動き(Ⅰ)(第十七頌)
九、諸識の動き(Ⅱ)(第十八頌)
十、時間の流れのなかで(第十九頌)
十一、三性とは(第二十頌-第二十二頌)
1、はからい 遍計所執性(第二十頌)
2、現実存在と真理「依他起性」と「円成実性」(第二十一頌)
3、「依他起性」と「円成実性」との証見前後(第二十二頌)
十二、三無性とは(第二十三頌-第二十五頌)
1、無の角度から(Ⅰ)(第二十三頌)
2、無の角度から(Ⅱ)相無性・生無性・勝義無性(第二十四頌)
3、唯識の真理 唯識性(第二十五頌)
十三、修行論(第二十六頌-第二十九頌)
1、唯識の修行の特徴
2、深固発心 資糧位(第二十六頌)
3、ぬぐいきれぬ客体化 加行位(第二十七頌)
4、真理との出会い 通達位(第二十八頌)
5、はてしなき修行 修習位(第二十九頌)
十四、仏の境界 究竟位(第三十頌)
十五、誓い すべての群生とともに(釈結施願文)
索引