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ヴィニュロンの流儀

著:齋藤浩

紙版

内容紹介

シャトー・メルシャンで第6代ゼネラル・マネージャー(工場長)をつとめ、「ワインづくりは農業」という信念を貫いてきた著者が、ワインづくりの原点であるブドウ栽培、ブドウとワインの関係について、科学的視点にもとづいて語り尽くします。

著者・齋藤浩はカリフォルニア大学デイヴィス校で提唱されたばかりの最新技術・キャノピーマネージメントを現地でリアルタイムに学び、ボルドーのシャトー・レイソンで5年間の経験を積み、メルシャン初の大規模自社管理畑・椀子(まりこ)ヴィンヤードをゼロから立ち上げ、成功に導きました。
ゼネラル・マネージャーとして栽培・醸造の全体に責任を持つ立場になってからも、栽培の総責任者であるチーフ・ヴィンヤード・マネージャーを兼任し、ワイン用ブドウの品質向上に精魂を傾けてきました。
著者を支えてきたのは、上司だった浅井昭吾氏(筆名・麻井宇介)の「ワインは始めにブドウありき」という教えです。

本書は二部構成。第一部はボルドーのシャト-・レイソン駐在中に積み重ねた経験がもとになっており、優れたワインを生むために行われるブドウ畑の四季の作業やその意味を、科学的見地から詳しく紹介しています。
第二部は椀子ヴィンヤード(長野県上田市)を育て上げた15年間の経験と、日本ワインのブドウ栽培について考察したことが中心になっています。

日本におけるワイン用ブドウ栽培の技術向上に大きく貢献してきた著者の知見は、日本ワインのブドウ栽培に携わる人々にさまざまな気づきを与えてくれるでしょう。
そして、ワインを愛飲する人は、ブドウとは何かを知ることで、ワインという素晴らしい飲み物の理解を深めることができるでしょう。

目次

【CONTENTS】

[第一部] ヴィニュロンたちの四季ーメドックの畑から
 第1話 剪定
  剪定開始はメルロから
  電動鋏
  剪定は何のために行うか?
  栽培経験が剪定技術を進歩させた
  メドック式剪定、ギュイヨ・メドケン式
  剪定した切り口から感染する病害

 第2話 栽培方式の歴史とカラソナージュ
  “ビズー”で始まる朝
  資格社会フランスの給与のしくみ
  針金の発明で垣根式栽培が普及した
  支柱(カラソン)の補修作業、カラソナージュ
  それまではゴブレ方式が一般的だった
  カラソンはアカシア材が一番
  カラソンは貴重な財産
  ブドウ畑は針金で近代化した
  長い歴史の中で、垣根式はまだ新しい栽培法

 第3話 右岸と左岸の土壌と水分
  ブドウの根は深く伸びるほどいいのか?
  ブドウが数千万年も種を維持できた理由
  多すぎる水分は生殖成長を阻害する
  水分を求めて深く根を張るメドックのブドウ
  メドックは過度な水分を垂直方向に逃がす砂礫質
  ポムロールは過度な水分を水平方向に逃がす粘土質

 第4話 ヴィニュロンたちの会食
  ブドウの生育が遅いため実現した会食

 第5話 除葉
  芽かきは、いつ行う作業か?
  私が「除葉」という用語を作った理由
  カリフォルニアで生まれたキャノピー・マネージメント
  除葉は何のために行うか?
  除葉にはどういう効果があるか?
  除葉はボルドーに、世界に、広がった

 第6話 エシャルダージュ
  副梢を取る作業、エシャルダージュ
  除葉やエシャルダージュは新しい作業ではない

 第7話 八月のブドウ畑
  ヴェレゾーン中期の確認は重要な意味を持つ
  エシャルダージュの区画に異変が!

 第8話 ブドウ果が熟すということ
  食べて甘くておいしいのが「完熟」
  ワインをつくるブドウは「適熟」で
  ヴェレゾーンを境に果実は成熟の過程に入る
  ブドウが熟して柔らかくなるメカニズム
  水分と成熟の密接な関係
  「適熟」は色素も香りも最高レベル
  タンニンも適熟期に「熟す」
  黒ブドウの熟成の度合い(ステージ1~4)

 第9話 ワインという文化
  日常のなかにワインがあるボルドー
  幼児期からワインという地域産業を学ぶ

 第10話 糖度調査
  ヴィニュロンたちに緊張が走る
  広大な畑のブドウを効率よくサンプリングする方法
  ブドウの分析でわかること
  自分の感覚で収穫の判断ができるようにする

 第11話 収穫
  有名シャトーでの収穫研修
  さあ、収穫だ!
  収穫機の力を実感した年
  草生栽培のメリット

 第12話 仕込み
  病果が出たときの仕込み
  白ワインの性格は発酵前の処理で決まる
  赤ワインの性格は発酵中の作業で決める
  デュブルデュー教授のコンサルで変えた仕込み方
  かつての塩尻分場は、仕込みを体で覚える道場だった
  ブドウ畑では紅葉が始まった

 第13話 晩秋の情景
  ブドウ畑のウサギは我々のものだ
  「解禁になったら、狩猟を教えてやるよ」
  はじめての獲物
  送別会のサプライズ

 第14話 樽詰め
  MLFが終わると品質別に樽に詰める
  ワインを樽で育成する4つの目的
  オーク材にもいろいろな種類がある
  年輪の間隔が広いペドンキュラタ
  年輪の間隔が狭いセシルオーク
  同じ樹種でも産地によって特性が異なる
  実用面でメリットがある樽の形状
  樽は長い時間を手間をかけて作られる
  樽は輸送用の器として普及した
  重量の単位「トン」は樽が語源

 第15話 トロンセの森で
  驚くほど背が高いセシルオークの樹
  主要なオークの森は国が管理する

 第16話 滓引き
  樽詰め後に目次ぎを重ねる新樽
  滓引きでワインを清澄し、亜硫酸濃度を調整する
  樽栓と酸素侵入
  硫黄燻蒸の目的
  滓引きの2つの作業方法

 第17話 ミモザの花
  スタッフとの別れ
  シャトーとの別れ

 〈おわりに〉ヴィニュロンとは何か?


[第二部] 日本でワイン用ブドウをつくるということー椀子ヴィンヤードの畑から
 新たな自社管理畑を拓くビッグ・プロジェクト
  プロジェクトの責任者になる
  ブドウ畑の場所をどこに求めるか
  丸子地区と出会い、椀子ヴィンヤード開園へ

 畑の場所を決めるための調査
  地質と土壌、気象状況
  栽培に適した土壌の要素とは何か
  日本でもできる、とボルドーで確信した
  「南向き斜面」は栽培の絶対条件ではない

 椀子ヴィンヤードの設計
  最初に畝の方向を決める
  昔からの水の通り道を生かす
  低コストの垣根資材を開発
  葉面積により決まる畝の高さs

 椀子ヴィンヤードの品種を決める
  次世代を担う黒ブドウ品種、シラー
  次世代を担う白ブドウ品種、ソーヴィニヨン・ブラン
  組み合わせで複雑さを生む品種構成

 日本における醸造用ブドウの栽培と収穫
  シャトー・シュヴァルブランで受けた衝撃
  砂礫質は暖かい土壌、粘土質は冷たい土壌
  草生栽培のメリット
  収穫目標は「健全果」と「適熟果」
  「健全果」のためにできること
  「適熟果」のためにできること
  勝沼醸造のイセハラ
  収穫適期を見極める
  フィネス&エレガンス

あとがき

ISBN:9784802212342
出版社:イカロス出版
判型:A5
ページ数:280ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年03月03日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TDCT