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学術選書 252

原子力法の構造と専門知制御

著:友岡 史仁

紙版

内容紹介

◆原子炉再稼働における専門知制御のあり方◆
1に原子炉の安全性担保とその制御、2に放射性廃棄物の処分方法、これは、原子炉再稼働における必然的な原子力法の大きな2つの柱である。これらの基本的な専門知制御のあり方を、先端的技術(=専門知)の構造と課題から多角的かつ具体的に解明する。原子力法の観点から次世代の原子力政策を問う、研究から実務まで広く有用の書。

目次

『原子力法の構造と専門知制御』(学術選書)

  友岡史仁(日本大学大学院法学研究科教授) 著

【目  次】

はしがき

◆序章 原子力法制を論ずる現代的意義

Ⅰ 原子力政策の在り方―本書の視座
 1 科学技術の制御と二面・三面関係
 2 「多重防護」概念と福島原発事故―組織・手続的制御と実体的制御
Ⅱ 原子力に関する「専門知」の在り方
 1 特  徴
 2 現状と具体的課題
Ⅲ 法的評価の課題と限界
 1 パブリック・アクセプタンスの意義
 2 実践的課題

●第1部 原子力政策の法的課題●

◆第1章 原子力政策と行政組織

Ⅰ はじめに
Ⅱ 原子力規制組織の変遷
 1 問題の所在
 2 福島原発事故前と「ダブルチェック体制」の評価
Ⅲ 規制組織の中立性担保として
 1 原子力規制委員会について
 2 原子力規制庁(事務局)について
Ⅳ 原子力法制変革後に見えてきた課題
 1 原子力規制委員会=規制権限者として
 2 審査会活用という問題
 3 残された課題―原子力委員会の存続意義
Ⅴ おわりに

◆第2章 原子力政策と行政手続

Ⅰ はじめに
 1 原子力政策の意義
 2 行政法学から見た原子力政策の課題
Ⅱ 原子力行政をめぐる課題
 1 問題の所在
 2 原子力規制委員会に求められる専門知の在り方
 3 行政手続過程における新知見の組入れ方―「バックフィット」制度の課題
Ⅲ 原発訴訟をめぐる課題
 1 福島原発事故と司法判断批判
 2 行政法理論からのアプローチ(概要)
 3 適正手続の保障と安全審査手続―伊方原発最高裁判決を契機にして
 4 多重防護と原発訴訟の関係
Ⅳ おわりに

●第2部 原子力法における専門知制御●

◆第3章 原発「再稼働」に係る専門的知見の反映

Ⅰ はじめに
Ⅱ 安全審査に係る規制構造―原子力規制委員会設置法と炉規制法
 1 原子力規制委員会設置法について
 2 炉規制法について
 3 検  証
Ⅲ 新規制基準の内容と課題
 1 新規制基準の構造
 2 既存の新規制基準における課題
 3 残された別課題―災害対策と炉規制法
Ⅳ 新規制基準以降の原子力訴訟―「再稼働」問題への示唆
 1 訴訟の経緯(概要)
 2 新規制基準との関係性
Ⅴ おわりに

◆第4章 原子力安全審査手続―イギリスの事例

第1節 立地規制の構造―審問手続を中心に
Ⅰ はじめに
Ⅱ 審問と原発の立地手続
 1 審問の在り方(一般)
 2 原発に関する審問手続
 3 審問手続の内容
Ⅲ イギリスの原子力政策と審問手続の在り方
 1 原子力政策の転換
 2 Sizewell B審問
 3 新たな審問方法
Ⅳ おわりに
第2節 大規模基盤施設と土地利用規制―2008年計画法の審問手続
Ⅰ はじめに
Ⅱ 審問の仕組みとその手続
 1 「計画許可」と審問(1990年都市農村計画法)
 2 大規模基盤施設に関する国務大臣の強制介入における審問(2004年計画強制買収法)
Ⅲ 個別法における大規模基盤施設に関する審問手続
 1 「法令上の審問」と「裁量的審問」
 2 審問手続に関する具体的課題
Ⅳ 2008年計画法とその課題
 1 持続的な経済発展と土地利用手続―2007年白書
 2 2008年計画法と“手続の合理化”
Ⅴ おわりに
第3節 原子力法制と安全規制の構造
Ⅰ はじめに
Ⅱ 原子力政策の動向
 1 商業用原子炉の位置付け
 2 核燃料サイクルの視点から
Ⅲ 原子炉施設に係る法規制の構造
 1 沿  革
 2 1965年原子力施設法の主な内容
Ⅳ 行政組織の構造
 1 規制と推進の分離の観点から
 2 規制の一元化と新組織
 3 諮問機関
Ⅴ 安全規制の全体的構造
 1 基本的な安全審査基準
 2 最新知見の反映に係る規制構造
 3 包括的設計評価(GDA)
 4 計画許可・審問手続と安全規制
Ⅵ おわりに
第4節 革新的小型原子炉の開発と規制―イギリス包括的設計評価(GDA)手続の現況と課題
Ⅰ はじめに
Ⅱ 革新的小型原子炉の開発
 1 炉型の概念
 2 経済性について
 3 安全性の課題と法制度
 4 脱炭素化政策との関係
Ⅲ イギリスの開発現状と進展
 1 政策背景
 2 技術開発に関する政府の取組み
Ⅳ 革新的小型原子炉における安全審査の課題―イギリスの事例を念頭に
 1 制度根拠と包括的設計評価(GDA)の実務的意義
 2 GDAの概要
 3 残された課題
Ⅴ おわりに

第5章 原子力災害対策法制の課題
Ⅰ はじめに
Ⅱ JCO事故と原災法制定
 1 JCO事故(概要)と災対法
 2 事故当時の課題と原災法制定
Ⅲ 福島原発事故後の原子力災害対策の法的課題
 1 初動体制と行政組織
 2 「原子力災害対策指針」の法的課題
 3 「多重防護」論と原子力防災対策
Ⅳ おわりに

●第3部 核燃料サイクル法制の構造●

◆第6章 核燃料サイクルと原子力法体系

Ⅰ はじめに
Ⅱ 核燃料サイクルの位置付け
 1 政府計画の表明形式
 2 計画の中身
Ⅲ 核燃料サイクルと炉規制法の規制構造
 1 法令上の定義
 2 炉規制法の規制構造
Ⅳ 使用済核燃料の再処理制度をめぐる課題
 1 問題の所在
 2 再処理とフロントエンドの関係―MOX燃料・プルサーマル・高速増殖炉(FBR)
 3 再処理資金の確保制度と課題
Ⅴ おわりに

●第4部 放射性廃棄物の法規制●

◆第7章 放射性廃棄物処分の制度化

Ⅰ はじめに
Ⅱ 処分の対象と方法の決定経緯
 1 第8回原子力長計以前
 2 第8回原子力長計以後
Ⅲ 炉規制法上の規制と課題
 1 処分対象の決定と課題
 2 具体的な処分方法・計画と課題
 3 2007年炉規制法改正以降(概要)
Ⅳ 地層処分に関する課題
 1 地層処分の法的位置付け
 2 立地選定の問題
 3 安全規制の在り方
Ⅴ TRU廃棄物処分の制度化経緯
 1 TRU廃棄物の具体的内容
 2 政府の対応と特廃法改正前
 3 最終処分に関する諸問題
Ⅵ おわりに

◆第8章 地層処分事業の制度構造をめぐる課題

Ⅰ はじめに
Ⅱ 特廃法の制度構造
 1 全体構造(概要)
 2 NUMOの諸業務
Ⅲ 地層処分に係る近時の動向と課題
 1 見直しの経緯
 2 課題抽出
Ⅳ おわりに

◆第9章 地層処分事業における候補地選定手続―イギリスの事例

第1節 候補地選定のための法構造―2008年白書まで
Ⅰ はじめに
Ⅱ イギリスにおける放射性廃棄物処分の変遷
 1 中間レベル放射性廃棄物処分に関する具体的経緯
 2 高レベル放射性廃棄物に関する具体的経緯
Ⅲ 処分法制と管理主体の変遷
 1 1993年放射性物質法の概要
 2 管理主体の変遷
Ⅳ イギリス型候補地選定方式の具体的内容
 1 2008年白書
 2 具体的取組み―NDA・RWMD報告書より
 3 「共同体立地パートナーシップ」の具体的進展と意義
Ⅴ おわりに―今後の課題
第2節 「パートナーシップ型」合意形成モデルの実践と課題
Ⅰ はじめに
Ⅱ 「パートナーシップ型」合意形成モデルの変遷―2008年白書から2018年改訂文書へ
 1 2008年白書から2014年白書まで
 2 2014年白書と2018年改訂文書の関係
Ⅲ 候補地選定手続の現況と課題―2018年改訂文書の詳細スキーム
 1 詳細スキームの概要
 2 スキームの評価
Ⅳ 土地利用法制との関係―2008年計画法を中心に
 1 大規模施設立地手続の仕組み(概要)
 2 地層処分事業との関係
 3 合意形成手続と2008年計画法
Ⅴ おわりに

・事項索引
・判例索引

著者略歴

著:友岡 史仁
日本大学大学院法学研究科教授

ISBN:9784797282788
出版社:信山社出版
判型:A5変
ページ数:320ページ
定価:8800円(本体)
発行年月日:2024年04月
発売日:2024年04月26日