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リンカンと奴隷解放

著:浜田 冨士郎

紙版

内容紹介

◆アメリカの奴隷制の実相といまに続く黒人差別問題の歴史的背景とは ― 奴隷解放に命をかけたリンカンの思想◆
アメリカは、人種・民族政策に関して深刻かつ重大な過ちを犯してきた。アメリカ先住民とアフリカ系アメリカ人・黒人に関する差別問題である。本書では黒人奴隷制のなりたちと問題点を明らかにし奴隷制撤廃のために生命をかけて悪戦苦闘したエイブラハム・リンカンの活動に焦点をあてる。アメリカの奴隷制の実相といまに続く黒人差別問題の歴史的背景を詳細に検討してアメリカ社会を考える。

目次

『リンカンと奴隷解放』

  浜田冨士郎(神戸大学名誉教授・弁護士) 著


【目 次】

◆序 章 リンカンの一八六三年一月一日

 鬱々とした日々
 歴史的決断の断行
 奴隷解放宣言の意味したもの

◆第二章 アメリカの奴隷制

 奴隷制とはどのような制度か
 だれが奴隷とされるのか
 砂糖プランテーションと奴隷制
 砂糖生産と黒人奴隷制との親和性
 新世界における奴隷制の拡大
 アメリカの奴隷制の概要
 ヴァージニア植民地と年期契約労働者
 ヴァージニア植民地における黒人奴隷制の形成
 ヴァージニア植民地の奴隷制は強いられたものであったか
 ニューイングランドその他の植民地の奴隷制
 アメリカの奴隷制の特徴
 奴隷制とアメリカ独立革命
 アメリカ独立宣言と奴隷制
 北部各植民地(邦、州)における奴隷制の廃止
 南部植民地の奴隷制
 南北植民地の選択を違えさせたものは何であったか
 自由州と奴隷州の分立
 一七八七年北西部条例
 自由州、奴隷州とミズーリの危機(Missouri Crisis, 1819―21)
 ミズーリの妥協、ミズーリ妥協線とは
 奴隷制廃止運動の勃興
 奴隷制廃止運動の卑俗化、現実政治との融合

◆第三章 政治問題としての奴隷制

 合衆国憲法と奴隷制
 憲法の奴隷制条項・その一 五分の三条項(憲法第一章二条三項)
 憲法の奴隷制条項・その二 奴隷輸入条項(憲法第一章九条一項)
 憲法の奴隷制条項・その三 逃亡奴隷条項(憲法第四章二条三項)
 反奴隷制的であるよりは親奴隷制的な合衆国憲法
 奴隷制を許容する憲法下での奴隷制反対運動のあり方
 ポーク政権の膨張主義、アメリカの領土の拡大
 大統領ポークとメキシコ戦争
 奴隷制の領土への進出を否定するウィルモット条項
 奴隷制問題への社会的関心の高まり
 連邦領土への奴隷制の進出に関する諸議論の対立
 奴隷制問題に関するテイラー政権の無為と議会の混乱
 一八五〇年の妥協
 一八五〇年の妥協の意義
 一八五〇年の妥協の不安定、動揺
 ダグラスによるネブラスカの組織化の試み
 キャンザス・ネブラスカ法案とミズーリの妥協
 キャンザス・ネブラスカ法の成立
 キャンザス・ネブラスカ法の波紋
 キャンザスに生まれたふたつの準州政府
 流血のキャンザス(Bleeding Kansas)
 ブキャナン政権とキャンザス問題
 自由州キャンザスの誕生
 合衆国憲法と政党
 第二次政党制の時代
 ホイッグ党の衰退
 民主党の変容と北部における共和党の躍進
 ドレッド・スコット事件連邦最高裁判所判決(一八五七年)
 ドレッド・スコット事件の扱う法的問題、裁判の帰趨
 ドレッド・スコット事件判決の奴隷制擁護、黒人蔑視
 ドレッド・スコット事件判決を書いた裁判官たち
 ドレッド・スコット事件判決が果たした政治的な役割

◆第四章 リンカンと奴隷制

 リンカンにとっての奴隷制
 奴隷制の問題点
 リンカンの黒人観
 リンカンの黒人経験
 リンカン、ダグラスとイリノイ州
 中西部州イリノイ
 弁護士リンカンと黒人関連事件
 イリノイ州議会議員時代のリンカン
 奴隷制と政治家リンカン
 リンカンの首都ワシントンの奴隷制廃止法案要綱
 キャンザス・ネブラスカ法による政治家リンカンの蘇生、覚醒
 リンカンの連邦上院議員選挙への挑戦と挫折
 ピオリア演説
 リンカンの共和党への加入
 一八五六年大統領選挙とブキャナン民主党政権の誕生
 リンカンの連邦上院議員選挙への再度の挑戦と敗北
 リンカン・ダグラス論争の展開
 リンカン・ダグラス論争の争点
 リンカン・ダグラス論争の意義

◆第五章 リンカンの大統領就任と南北戦争の勃発

 リンカンの全国的政治家への変貌
 大統領候補としての評判の高まり
 イリノイ州共和党によるリンカンのバックアップ
 一八六〇年共和党全国大会とリンカンの大統領候補者指名
 民主党大統領候補者の分立
 一般投票におけるリンカンの勝利
 サウスキャロライナの連邦離脱
 ブキャナン政権の事態への対応
 脱退州の南部連合への結集
 連邦議会における危機回避策の模索
 奴隷制を保障するコーウィンの憲法改正案
 ワシントン平和会議
 リンカンの大統領就任準備
 危機対応についてのリンカンの沈黙
 リンカンの本音
 リンカン政権の組閣
 リンカンのワシントン入り
 大統領就任式とリンカン政権の発足
 サウスキャロライナ、チャールズ湾口のサムター連邦要塞
 サムター要塞とブキャナン政権
 サムター要塞に関するリンカンの選択
 サムター要塞の砲撃、南北戦争のはじまり

◆第六章 戦争の中での奴隷制問題

 リンカンの臨戦対応と北部社会
 上南部州の苦しい選択
 南北両軍の最初の激突、第一次ブルラン(マナサス)の戦い
 ブルランの戦いにおける連邦軍の敗北
 マクレランのポトマク軍司令官への登用
 マクレランの半島作戦の失敗
 戦争が奴隷制に及ぼす影響
 連邦軍による逃亡奴隷の受け入れとコントラバンド論
 地区司令官による奴隷解放措置・その一 フリーモント少将の場合
 地区司令官による奴隷解放措置・その二 ハンター少将の場合
 奴隷解放に対するリンカンの消極性の真意
 リンカンの奴隷制廃止へのアプローチ――デラウエア州への働きかけ
 リンカンの連邦議会への働きかけ
 リンカンの自由黒人植民論
 リンカンの植民計画の実践・その一 チリキ植民計画
 リンカンの植民計画の実践・その二 バッシュ島植民計画
 リンカンと連邦議会特別会期
 特別会期における奴隷制の検討
 奴隷制に対する連邦議会の積極的関与
 首都ワシントンの奴隷制廃止法、連邦領土の奴隷制廃止法
 その他の反奴隷制立法 第二次没収法、民兵法

◆第七章 奴隷解放宣言とその波紋

 戦況の行き詰まりと抜本的打開策の模索
 予備的奴隷解放宣言の発出
 予備的奴隷解放宣言の内容
 予備的奴隷解放宣言に対する社会の反応
 奴隷解放宣言発出前夜の政治社会状況
 本宣言としての奴隷解放宣言
 奴隷解放宣言とゲティズバーグ演説との関係
 奴隷解放宣言の意義の確認
 奴隷解放宣言が果たした機能
 奴隷解放宣言と民主党の反対
 ヴァランディガムの政権批判とリンカンの対応
 六四年大統領選挙における民主党綱領とヴァランディガム
 ニューヨーク市の反徴兵制暴動
 暴動とアイルランド系市民
 黒人の戦争参加、黒人兵士の意義
 黒人の戦争参加の進展
 軍内における黒人差別問題
 捕虜となった黒人兵士の取り扱い

◆終 章 リンカンと憲法修正一三条

 終戦のきざしと戦後社会の展望
 リンカンの大統領再選作戦
 大統領選挙の行方の不透明化
 アトランタの陥落とリンカンの再選
 連邦議会における憲法改正(修正一三条の制定)の動き
 修正一三条の実現に向けたリンカンの側面協力
 リンカンの突然の死
 憲法修正一三条
 修正一三条の射程範囲、その差別規制の効力いかん


・エピローグ

著者略歴

著:浜田 冨士郎
神戸大学名誉教授・弁護士

ISBN:9784797228151
出版社:信山社出版
判型:4-6
ページ数:316ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2022年11月
発売日:2022年12月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JBF