さらば、政治よ
旅の仲間へ
著:渡辺京二
内容紹介
憂国の議論が日本を覆っている。しかし、85歳になって自分の一生を得心するにあたって、国の行方など、自分の幸福にはなんの関係もないことがわかってきた。もちろん国家という枠組みから自分が逃れえないことは百も承知である。が、なんでも国にやってもらおうという発想はすて、民間の共生の工夫をこらしたい、自律した生活を送りたい――。少年時代から学校も嫌い、裁判システムも大嫌い。とにかくできるかぎり管理されることから離れて、まわりの人との生活を楽しみ、町を楽しみ、人生を終えたいという。日本という社会で、個人が充足し落ち着いて暮らしていくために何をしたらいいのか? 名著『逝きし世の面影』の著者の最新の評論集。
目次
Ⅰ 時論
さらば、政治よ―旅の仲間へ
「提言」する人々
物書きは地方に住め
徴兵制は悪か
変わる保革の意味
質のよい生活
Ⅱ インタビュー
近代のめぐみ
二つに割かれる日本人
Ⅲ 読書日記
革命前のロシアの農村を描いた―『ブーニン作品集』
ソ連をひとつの「文明」と捉える―シニャフスキー『ソヴィエト文明の基礎』
近代科学の外で「自然の意味」を問うた思想家―斎藤清明『今西錦司伝』
荒凡夫の柄を引き出す―黒田杏子『語る兜太』
根本へ向かって考える―宇根豊『農本主義が未来を耕す』
石牟礼道子の文学的本質を開示―臼井隆一郎『「苦海浄土」論』
文明に〝孤島"を作る異能者、そして聖者―坂口恭平『独立国家のつくりかた』
奥行きのある言葉が人間の姿を造型する―伊藤比呂美『父の生きる』
人の世になじまぬもどかしさを出発点として―石牟礼道子『不知火おとめ』
「イスラム国」を正視する眼―池内恵『イスラーム国の衝撃』
家族を超えた家族への夢―坂口恭平『家族の哲学』
平凡ゆえの非凡、笹川良一の息子・良平が貫いたもの―高山文彦『宿命の子』
Ⅳ 講義
ポランニーをどう読むか―共同主義の人類史的根拠