やさか仙人物語
地域・人と協働して歩んだ「やさか共同農場」の40年
編:やさか共同農場
紙版
内容紹介
高校を卒業してすぐの一八歳のとき、縁もゆかりもなく、まったく知人もいない島根県の弥栄(やさか)村(現・浜田市弥栄町)に広島県から入村し、仲間とともに開墾をはじめた佐藤隆。「Iターン」という言葉がなかった時代に「Iターン」を成し遂げた人物である。
本書は、この佐藤が経営する「有限会社やさか共同農場」を主人公として、浜田市弥栄町で行われている有機農業の様子や、それに基づく生活風景を紹介するものである。現在、35人もの従業員を抱える「やさか共同農場」の発展が、地域の農業発展に貢献しただけでなく、「人づくり」や「モノづくり」、そして「移住の促進」など地域の活性化にも大きな影響を与えた。言うまでもなく、それを支えてくれたのが町内の農業者や消費者、流通業者、そして行政機関である。それぞれとの関係などを、本書では写真などともに臨場感豊かに紹介していきたい。
また、農業を職業として選択した多くの若者が、やさか共同農場での研修や体験を通して将来に希望をもち、自営就農や雇用就農している現状も紹介していく。読まれた読者は、農業経営体の発展や地域の活性化においては、地域との「協働」がいかに重要であるかを知ることになろう。何故なら、「協働」のあり方が、言葉の説明だけではなくこれほどリアルに描かれているものはないからである。
現在、標高550メートルの弥栄町三里笹目原に居住しているのは佐藤夫婦のみである。山深いこの地で、40年にわたって行われてきた農業活動の物語、長引く不況のなかで働いている都会の人達にはどのように映るのであろうか。「農業へのこだわり」と「仕事は都会にだけあるのではない」ということを、本書を通して訴えていきたい。(編著者)