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震災復興と地域産業 2

産業創造に向かう「釜石モデル」

編:関 満博

紙版

内容紹介

岩手県釜石市は日本近代製鉄業の発祥の地の一つとされ、新日本製鐵釜石製鐵所の企業城下町として知られていた。六〇年代までは釜石製鐵所の従業員は約八〇〇〇人を数え、釜石は東北の代表的な工業都市として繁栄、人口も九万人を超えていた。だが、八九年に釜石製鐵所の高炉が休止され、以後、線材工場と火力発電所のみとなったために、従業員数は二五〇人前後にまで減少している。これに伴い釜石市の人口も激減し、このたびの震災直前の二〇一〇年には四万人を割ったとして注目されていた。
 そのような時期に東日本大震災による大津波が釜石のまちを襲う。そして、それからおよそ二年が経過している。瓦礫の処理は相当に進み、仮設住宅、仮設商店街も形成され、また、復旧に対して投資額の四分の三を補助するという国の「グループ補助金」により、多くの中小企業は再建に向かっていた。ただし、人口減少の中で、この先どのようなまちを作っていくのか、その支えとなる地域の産業をどのようにしていくのか、いまだ課題は多い。
 むしろ被災から二年を経て、人口減少、就業者の減少はまちの課題としていっそう強く浮上しているといえる。復旧した中小企業は人手不足、高齢化に直面している。人がいなければ産業は起きない。また、産業がなければ人は暮らしていけない。そのような中で、復旧・復興が急がれている。それは人口減少、高齢化に向かう日本の「未来」を象徴しているようにもみえる。
 このような点を意識しながら、本書は、被災後二年を経過した釜石の地域産業について、多方面の角度から検討を重ね、地域と産業、中小企業の今後のあり方を考えていく。振り返るまでもなく、今回の震災による被災は広く、深い。また、地域により被災の程度と質も異なる。いずれの地域も復旧・復興に向けて必死の取り組みを重ねている。その先行きは、日本全体の「未来」を指し示しているようにみえる。(せき・みつひろ)

著者略歴

編:関 満博
1948年生まれ。明星大学経済学部教授、一橋大学名誉教授。博士(経済学)。単著に『東日本大震災と地域産業復興』Ⅰ・Ⅱ、『地域産業の「現場」を行く』1~6集、編著に『沖縄地域産業の未来』、『道の駅/地域産業振興と交流の拠点』など。

ISBN:9784794809322
出版社:新評論
判型:B6
ページ数:264ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2013年02月
発売日:2013年02月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KN