熊野古道
みちくさひとりある記
著:細谷 昌子
紙版
内容紹介
時空を超えて訪ねる「日本の原郷」への道案内、
熊野信仰の根源を探る旅。写真他資料多数掲載
筆者は四国八十八か所めぐりを綴った前作『詩国へんろ記』とおなじ姿勢を貫き、今回もその地を決して「観光地」としては歩いていない。古代から中世、近世と夥しい数の人々が訪れたこの聖地を歩くことで、日本人の信仰の源を辿るという縦の糸と、現在の地元の人々との出会いから生まれる「熊野の今」という横の糸を紡いでゆく。
「熊野」は、昨年('02)のNHK連続テレビ小説「ほんまもん」で最近またポピュラーになった地名かもしれない。そのほか世界遺産の暫定リストへの登録、熊野を通して天地人を描き抜いた作家中上健次、古くは藤原定家の『御幸記』、名高い那智の滝、など、一度も訪れたことのない人でも何らかのイメージを抱いている土地であろう。
筆者は四国八十八か所めぐりを綴った前作『詩国へんろ記』とおなじ姿勢を貫き、今回もその地を決して「観光地」としては歩いていない。古代から中世、近世と夥しい数の人々が訪れたこの聖地を歩くことで、日本人の信仰の源を辿るという縦の糸と、現在の地元の人々との出会いから生まれる「熊野の今」という横の糸を紡いでゆく。それはさながら熊野比丘尼や念仏聖たちが熊野信仰の普及のために広めたという曼陀羅図のような、時空を超えた物語となって読む者を引き込む。いにしえの人々が浄土へ続くと信じた道を本書で夢に辿るもよし、本書をガイドに実際に歩くもよし、とにもかくにも「行ってみたくなる」。