草思社文庫
文庫 生と死を分ける数学
単行本版
人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ
著:キット・イェーツ
訳:冨永 星
内容紹介
数学は、あなたの人生のそこかしこに入り込んで、生殺与奪の権利を握っている。
生きるも死ぬも、数学次第なのだ。実際、数学を知らないために、あるいは数学を誤用したために、
命を落としたり、財産を失ったり、無実の罪を着せられたりした例が、どれほど多いことか。
逆に、簡単な数学を少し使えるだけで、マスコミや政治家の嘘を見破ったり、
詐欺に巻き込まれるのを防いだり、健康診断の結果を正しく理解したりできるようになる。
さらには、理想の結婚相手を選ぶのにも役立つかも……。
数理生物学者でもある気鋭の数学ライターが、数々の事例を紹介しながら、
あなたの人生と数学の関係を解説する。
<内容より>
・年を取るほど時間が速く過ぎる理由
・「病気のオッズ」の求め方
・誤った「数学」で流刑の憂き目に――ドレフュス事件
・検察の誤謬――有罪の確率が見た目より低い場合
・弱い証拠を2つ集めると強力な証拠になる?
・医療研究でも使われる、数字の印象をよくする手法
・統計の噓に騙されないために
・桁違いのミスの致命的影響
・12進法は10進法より優れていると主張する人たち
・ヤード・ポンド法とメートル法のあいだのトラブル
・アルゴリズム取引の裏をかいて市場を操作し大儲け
・SNSのトレンドをフェイク・ニュースが占拠
・根拠のない反ワクチン運動が蔓延の危険を高めた
目次
はじめに ほぼすべての裏に数学が
1 指数的な変化を考える
指数的な振る舞いの恐ろしいまでの威力を活用し、その限界を冷静に見定める
1万人を倍々に15回増やしたら……
バクテリアは48時間で何倍になる?
銀行の利子と「持ちつ持たれつ」詐欺の仕組み
細胞数が指数的に増える受精卵
指数的増加を利用した核爆弾
指数的増加の制御とその失敗――原子力発電
放射性年代測定には指数的減少が使われている
バイラル・マーケティングも指数的
科学技術の進歩も指数的か
人口も指数的に増加するのか
年を取るほど時間が速く過ぎる理由
2 感度と特異度とセカンド・オピニオン
なぜ数学が医療に大きな違いをもたらすのか
健康診断や遺伝子検査の裏にも数学がある
「病気のオッズ」の求め方
BMIは健康リスク評価に役立たない?
新薬が価格に見合うか否かを判定する「神の方程式」
誤った警報を減らす数学的解決法
乳がん検診で「再検査」になったら心配すべきか
医療検査につきまとう「確かさという幻想」
検査は1つより2つ受けたほうがよい
3 法廷の数学
刑事裁判における数学の役割を吟味する
1人なら事故で、2人なら殺人なのか
誤った「数学」で流刑の憂き目に――ドレフュス事件
「推定有罪」がまかり通る日本の司法
サリー・クラーク事件の裁判のなりゆき
その2つの出来事は独立か、独立でないか
生態学的誤謬――平均寿命より長寿な人が多い?
検察の誤謬――有罪の確率が見た目より低い場合
弱い証拠を2つ集めると強力な証拠になる?
それはほんとうに数学の問題なのか、疑うべし
4 真実を信じるな
メディアの統計の噓を曝く
鵜吞みにできない「真実」が声高に語られている
誕生日問題――頻繁に起きる「あり得ない一致」
数字で示されていても信用できるとはかぎらない
標本抽出の偏りで大統領選の予測が大ハズレ
「黒人の命は軽くない」への反論の数学的噓
「加工肉でがんリスク上昇」報道の数学的からくり
医療研究でも使われる、数字の印象をよくする手法
多くの人を惑わせる「平均への回帰」の正体
統計の噓に騙されないために
5 小数点や単位が引き起こす災難
わたしたちが使っている記数法、その進化と期待外れな点と
桁違いのミスの致命的影響
位取り表記のありがたみを再確認
時間の表記と分割を巡る混乱の歴史
12進法は10進法より優れていると主張する人たち
ヤード・ポンド法とメートル法のあいだのトラブル
ミレニアム・バグのせいで発生した偽陰性の悲劇
2進法から10進法への変換誤差のせいで戦死
6 飽くなき最適化
アルゴリズムのとどまる所を知らない威力、進化から電子商取引まで
アルゴリズムが危険な失敗を起こす理由
100万ドルの賞金がかかった数学の未解決問題
PvsNP――解けそうにない問題はじつは解ける問題か
場合によっては簡単に最適解が得られる「貪欲法」
生物の生存戦略を最適化アルゴリズムに取り込む
結婚相手選びや雇用面接に有効?――最適停止問題
監督者がいないアルゴリズムに起こりうること
アルゴリズム取引の裏をかいて市場を操作し大儲け
SNSのトレンドをフェイク・ニュースが占拠
7 感受性保持者、感染者、隔離者
感染拡大を阻止できるか否かはわたしたちの行動次第
人々を感染症から守るのに数学が役立っている
天然痘という疫病と初期の数理疫学
感染症の流行を記述する数学――SIRモデル
SIRモデルを流行の将来予測にも利用する
前提が誤っていると疫学モデルも誤る
症状がないまま病原体を他人にうつす人々
対策が有効か否かを疫学モデルで判別できる
基本再生産数と指数的爆発
モデルを利用して病の広がりをコントロールする
「集団免疫」を獲得するための数学的条件
根拠のない反ワクチン運動が蔓延の危険を高めた
おわりに数学による解放
謝辞
訳者あとがき
文庫版のための訳者あとがき
原注