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韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか

北朝鮮対南工作の深い闇

著:西岡 力

紙版

内容紹介

 韓国の大統領選が2022年3月、5年ぶりに行われ、その結果を受けて5月10日、尹錫悦(ユンソギョル)が新大統領に就任した。与党候補・李在明を0・7%という僅差で破って5年間の文在寅政権に終止符を打った。極左ともいえる文在寅時代の政権運営によって韓国は北朝鮮による地下工作が進み今、危うい親北反日国家となっている。新大統領はこれを正常化できるのか。韓国の大統領は政権交代すると前大統領は必ずと言っていいほど逮捕されてきた。文の前の朴槿恵は弾劾・逮捕され、禁固22年の刑を受けていたが、作2021年末、仮釈放されて出獄してきた。その前の李明博はいまだ収監中である。その前の盧武鉉は親族の汚職追及から自殺した。文在寅と李在明は逮捕訴追されるのか、あるいは、尹錫悦にそれができるのか。

 本書は日韓問題、韓国研究で第一人者の著者が、独自情報をふんだんに盛り込んで韓国の今の政治状況の危機の構図を描いた最新韓国論である。尹錫悦は今では文在寅の対立者、急先峯の糾弾者だが、ついこの前までは文が抜擢した検事総長で、文の指示のもとに理不尽ともいえる朴槿恵弾劾・逮捕を強行した当事者である。そんな彼に文在寅逮捕や文政権要職者の不正捜査が実行できるのか、はなはだ懐疑的だと著者は予測している。2012年の朴槿恵政権時代から始まる北朝鮮の対南工作と、その意を呈した文在寅政権の間に起きたことを本書ではつぶさに追いかけているが、日本から見ると信じられないような社会変革が進行していることに著者は激しい警鐘を鳴らしている。朴槿恵は日本では「つげ口外交」と言われて評判が悪いが、実は保守主義者として最後の砦を守った政治家だった。危険な親北勢力の一掃を試み、金正恩暗殺に陰ながら協力したことで、北の激しい怒りを買い、狙い撃ちされたのだ。その訴追の内容のあまりにもお粗末で、恣意的な裁判にはあきれるばかりだ。それを実行したのが尹である。

 北朝鮮で起きていた反体制運動の実態(どうやって秘密裏にUSBメモリを持ちこむのか)、韓国内に浸透していた大物スパイの脱北後の告白(十分に韓国内スパイの数は足りているので、北はもういらないと言っている)、韓国破壊工作活動家の口述(通信施設ほか拠点の占拠法)など、珍しい事実やエピソード、記事などを豊富に引用しつつ、もはや早晩、釜山まで赤旗が翻るのは時間の問題と言われ、対馬海峡をはさんで60万人韓国軍が日本に対峙することになるやもしれないという悪夢。今、必読の力作評論である。

目次

はじめに

第1章 新大統領に左派と戦う覚悟なし――韓国新政権の真実
歴史上類を見ない大接戦
米韓同盟の危機は当面回避
尹錫悦勝利の結果に評価が分かれる
インターネットによる大統領選介入疑惑
保守派を敵視した「反権力のヒーロー」
権力者による利益分配は根強い文化伝統
反日反韓史観の流れは止まるのか

第2章 新政権は韓国を正常化できるのかーー尹錫悦の可能性
対南作戦部幹部の驚くべき証言
北のスパイが暗躍を許す環境
元凶の「反日反韓史観」を野放し
反韓史観が韓国社会に浸透
地下組織「人民革命党」の誕生
暴力革命家を称賛する文在寅
新政権後の慰安婦問題に進展は?
戦時労働者をめぐる日韓の駆け引き
世界文化遺産・佐渡の今後は?
最悪のシナリオは「韓国軍が敵軍になる」

第3章 従北勢力が仕組んだ人民裁判――朴槿恵弾劾の本質
親睦左派による人民裁判
デモを主導した勢力の正体
親北政治団体がデモに参加
韓国の地下左翼運動
デモが掲げた12の目標
デモ主題歌「これが国か」の内容
100万人デモという誤報
弾劾訴追が国会をなぜか通過
デモに恐れをなした議員たち
訴追こそが憲法違反

第4章 北朝鮮と朴槿恵の隠れた戦いーー朴槿恵弾劾の真実
「北」と戦おうとした朴政権
国家情報院が従北議員を逮捕
恐るべき暴動計画
職業革命家・李石基の正体
反国家的政党を解散に追い込む
金正恩打倒を画策
左傾化教科書に国防部が危機感
朴槿恵による教科書改善の限界

第5章 危険な首脳・文在寅の5年間――従北反米と反日反韓史観
左傾民族主義と反日反韓史観
文在寅が目指した左翼革命
政権中枢を左翼で固める
北との対話で「南の大統領」と自称
韓国を危険にさらす武装解除
北朝鮮の回答はミサイルと核実験

第6章 反日反韓史観による執拗な攻撃――学問の自由の危機
『反日種族主義』著者らへの圧力
「歴史歪曲処罰法」制定への危険な動き
講義内容を理由に柳錫春教授を刑事訴追
3つの争点・その1「自発的に慰安婦になった」
3つの争点・その2「「挺対協が教育した」
3つの争点・その3「挺対協役員は統合進歩党幹部」
柳錫春教授のバランスとれた講義
柳錫春事件の本質は学問の自由の危機
第7章 積弊清算という名の不当判決――検事総長と大法院長官の結託
革命政権を目指した文在寅
尹錫悦が文政権に反旗
証拠不十分なまま賄賂と認定
機密費をめぐる国情院トップの逮捕
国情院職員が赦免要求
安全保障を揺るがす不当逮捕
暴徒対策の秘密文書が明るみに
司法機関が左派だらけの人事に
徴用工問題にも大きな影響

第8章 文在寅逮捕の鍵を握る検察――前政権の不正と不始末
文在寅前大統領は逮捕されるのか
地方選挙に世間ぐるみの不正介入
不動産で私利を得る政権中枢
左翼運動家は偽善者だらけ
知事秘書への度重なるセクハラ
釜山市長辞任で捜査は進まず
「女性の味方」を自認するソウル市長がセクハラ
検察掌握が鍵と見た文在寅
選挙に負けたとたん検察の捜査権剝奪に動く

あとがき

著者略歴

著:西岡 力
西岡 力(にしおか・つとむ)
1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院修士課程修了。外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務、『現代コリア』編集長、東京基督教大学教授などを経て、現在(公財)モラロジー道徳教育財団教授・歴史研究室室長。麗澤大学客員教授。「救う会」会長。歴史認識問題研究会会長。著書に『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『増補新版・よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『でっちあげの徴用工問題』『日韓「歴史認識問題」の40年』(草思社)『わが体験的コリア論』(モラロジー道徳教育財団)など。

ISBN:9784794225795
出版社:草思社
判型:4-6
ページ数:248ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2022年06月
発売日:2022年06月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH