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重要証人

ウイグルの強制収容所を逃れて

著:サイラグル・サウトバイ
著:アレクサンドラ・カヴェーリウス
訳:秋山 勝

紙版

内容紹介

いま、中国の新疆ウイグル自治区では何が行われているのか?
命がけで強制収容所から逃れた女性が証言する衝撃的な実態!

著者は新疆ウイグル自治区で生まれ育ったカザフ人女性。
医師であり教師であり、二人の子供をもつ母親。
日に日に住民に対する監視態勢が激化するなか、ある日突然、拘束されて
再教育施設と呼ばれる強制収容所に連行される。
そこで行われていたのはウイグルに生きる少数民族への想像を絶する弾圧だった。
自分たちの言葉を禁じられ、伝統も文化も宗教も奪われて中国共産党への忠誠を誓わされる。
繰り返される拷問、洗脳、レイプ。そしてその先に待ち受ける死。
命がけで隣国カザフスタンに脱出した著者は、2018年、法廷に立って
ウイグルで現在進行中の地獄のような実態を証言した。
その衝撃的な事実は各国の主要メディアによって次々と報道され世界中に激震が走った――。

繰り返される脅迫にもひるむことなく勇気ある証言を行った著者に対して、
2020年には米国務省から国際勇気ある女性賞(IWOC)、
2021年にはニュルンベルク国際人権賞が授与されている。

解説=櫻井よしこ

目次

■第1章 過去の亡霊
助けを請う娘たち/ドイツに向かう夜/ドイツにて/脅迫と希望
■第2章 中国の侵攻と破壊――輝く未来と生活の安定を夢見て
幸運を授ける娘/九死に一生/ヘビの穴/定住を始めた遊牧民/決して噓をついてはならない/苛酷な環境のもとで/お祭りのとき/心に暗い影を落とした文化大革命/恐怖政治の生きている亡霊/「中国人がやって来る」/最初の入植者――「中国人を恐れるな」/つかの間の幻影/私の大学生時代――1993~97年/蘇った毛沢東/商才ひとつで大儲け/1997年――泉がかれた/患者への治療差別/祖父の死/はじめてのキャッシュカード/困難な時代に備えて/再出発/故郷に帰る/蹂躙されていく母なる大地/独身を貫く決意/恋のつばぜりあい/小さなメッセンジャー/婚儀のしきたり/両親との別れ/結婚式の日/奇妙な偶然/尽きせぬ不安/不思議な出会い/黄金の未来を夢見て
■第3章 口をテープでふさがれて
厳しくなっていく締めつけ/泣きやまない子供たち/二度目の再教育/「この子はどうしても産む」/心に空いた大きな穴/心のよりどころ/自己批判の三つの段階/恥辱にまみれて/路上の流血/誰も望んでいなかった祝典/赤ん坊をつねる奇妙な母親/中国人であればすべて無料/厳しくなる締めつけ/口をテープでふさがれて/中国で三番目に汚れた町/汚された聖なる秘境/三悪/パスポートを取りあげられる/別れの時
■第4章 精神病院よりも劣悪な環境――世界最大の監視国家
東トルキスタンに来たチベットの暴君/秘密の会合/抜き打ち検査/閉ざされた回線/政治的再教育/世界中から見放されて
■第5章 完全なる支配――尋問とレイプ
2017年1月――はじめての取り調べ/精神的拷問の一年/2017年6月の秘密の会合/精神病棟よりも苛酷な環境/とどめの一撃/憎悪を生んだ〝友情〟のキャンペーン/「いっしょに考えてもらえませんか……」/深夜の秘密の訪問
■第6章 収容所――地獄を生き延びる
2017年後半――収容所に到着/初日の夜/日課/教育計画/午前七時から午前九時:生きる屍たちへの授業/午前9時から午前11時:検査/午前11時から正午:「中国人であることは私の誇りだ!」/正午から午後2時:薄いスープと新たな指示/午後2時から午後4時:党を称える歌/午後4時から午後6時:反省の時間/午後6時から午後8時:休憩と夜食/取り返しのつかない失敗/午後8時から午後10時:「私は犯罪者だ」/午後10時から午前0時:告白文の作成/午前0時から午前1時:見張り番/午前1時から午前6時:睡眠/国家機密――「三段階計画」/同化教育――「いつまでこの施設にいなければならないのか」/死者を消し去る/シャワー室/世界で最も危険な国――26カ国のリスト/秘密の暗号――「最初に藁の靴、次に革の靴」/「黒い部屋」/共同謀議――羊飼いの老婆との出会い/悪が棲む場所/忍耐/謎の予防接種/薬を飲ませる理由/女にとって最もつらいこと/最終テスト
■第7章 「収容所で死ぬくらいなら、命がけで逃げよう」
2018年3月――釈放/「どうしてそんなに痩せてしまったの?」/「収容所で死ぬくらいなら、命がけで逃げよう」/脱出/最後の遮断機/2018年4月5日――再会/緊張/誰が信じられるのか/カザフスタンの秘密警察/無力感/拘置/2018年6月3日――タルディコルガンでの拘留、小鳥と幽霊/覚醒
■第8章 カザフスタン――北京政府に介入される国
2018年7月9日――裁判初日/家族との面会/2018年7月13日――裁判2日目/7月23日――裁判3日目、判決の日/中断された祝賀会/軟禁生活――荒らされた家/祖国で逃げまどう日々/尾行者たち/地下収容所と水中監獄/脅迫――「弁護士を替えることはできない」/北京に迎合する政治家の犠牲者
■第9章 ウイルス――世界への警告
2019年6月3日――新しい世界へ/私たちはどこで暮らすのですか?/幸せを嚙みしめて/憂鬱な日々/スウェーデンで描くカザフスタンの国旗/それでも真実を訴えつつ

著者略歴

著:サイラグル・サウトバイ
サイラグル・サウトバイ
新疆ウイグル自治区出身のカザフ人。1976年、イリ・カザフ自治州に生まれる。元医師・幼稚園園長。2017年11月から翌年3月まで新疆の少数民族を対象とした強制収容所に連行され中国語教師として働かされる。収容所から解放された直後、今度は自身が収容者として収監されることを知って故国の隣国カザフスタンに逃れるが、不法入国の罪に問われ同国で裁判を受ける。この裁判で中国政府が「職業技能教育訓練センター」と称する再教育施設の実態と機密情報について証言、裁判は一躍世界的な関心を呼び、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングなどの主要メディアで報じられる。カザフスタン政府は亡命申請を却下、滞在許可が切れる直前の2019年6月に国連のとりなしでスウェーデンに政治亡命。現在、安住の地となったスウェーデンで夫、娘、息子の四人で暮らしている。中国の強制収容所の実態については現在も積極的に発言を行い、その活動に対して2020年にアメリカ国務省から国際勇気ある女性賞(IWOC)、2021年にはニュルンベルク国際人権賞が授けられた。
著:アレクサンドラ・カヴェーリウス
アレクサンドラ・カヴェーリウス
ドイツのフリージャーナリスト。多数の有力誌に寄稿するほか、政治問題に関するノンフィクションを刊行して高い評価を得ている。主な著書に、ノーベル平和賞の候補者に繰り返し選ばれているラビア・カーディルの半生を描いた『ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝――中国に一番憎まれている女性』(武田ランダムハウスジャパン)がある。本書はサイラグル・サウトバイとの何度にもわたるインタビューに基づいたものである。
訳:秋山 勝
秋山 勝(あきやま・まさる)
立教大学卒。日本文藝家協会会員。出版社勤務を経て翻訳の仕事に。訳書に、ミシュラ『怒りの時代』、ローズ『エネルギー400年史』、ダイアモンド『若い読者のための第三のチンパンジー』、バートレット『操られる民主主義』、マカルー『ライト兄弟』(以上、草思社)、ウー『巨大企業の呪い』、ウェルシュ『歴史の逆襲』、フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』(以上、朝日新聞出版)など。

ISBN:9784794225269
出版社:草思社
判型:4-6
ページ数:352ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2021年08月
発売日:2021年08月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JBF