草思社文庫
文庫 外来種は本当に悪者か?
単行本版
新しい野生 THE NEW WILD
著:フレッド・ピアス
訳:藤井 留美
内容紹介
「この本は、21世紀の環境保護はどうあるべきかという問いに、私なりに答えを探す旅でもあった。
自然を樹脂で固めて保存することはできないし、ましてや過去の自然をふたたび創造することも無理な話だ。
どちらも地球を巨大な動物園にするようなもので、不可能であるばかりか自然に対する冒瀆でもある。
想像の産物に過ぎない『手つかずの自然』を守ろうとしても負け戦に終わる。
むしろ、外来種の活力と『侵略本能』を活かして自然の再生をめざすべきだろう」
(「はじめに」より)
外来種は駆除すべきだという人間の勝手な生命観に警鐘を鳴らし、
今後の環境保護の指針となる必読書。
目次
はじめに 人間界の自然
第1部 異邦人の帝国
第1章 グリーンマウンテンにて
世界中から持ち込まれた動植物/外来種が高めたアセンション島の生物多様性/在来種vs外来種、仁義なき戦い/アリたちのスーパーコロニーと消滅/外来種は本当に悪者か?
第2章 新しい世界
外来種も病原菌も人類の旅のお供/動植物の順化と「脱走」/ホテイアオイとナイルパーチが増えた真の理由/驚異の木「メスキート」の悲劇
第3章 クラゲの海
船のバラスト水、海洋博物館からキラー生物/ほんとうの原因は人間による環境破壊/長い時間軸でとらえると在来種などいない
第4章 ようこそアメリカへ
タマリクス、熱狂的な期待のあとの転落/よそ者の貝が水質を浄化してくれたエリー湖/外来種にさらされても多様性あふれるサンフランシスコ湾/ペット出身の外来種たち/外来種排斥という陰謀の不都合な真実
第5章 イギリス──イタドリにしばられた国
ヴィクトリア朝ワイルド・ガーデンの末裔/かわいらしい外来種は許される?
第2部 神話とドラゴン
第6章 生態学的浄化
イタチごっこのネズミ捕り/袋小路に入る外来種駆除の取り組み/ワニも食べつくすオオヒキガエルが市民権を得るまで/民族浄化ならぬ生態系浄化の狂信ぶり
第7章 よそ者神話
偏見と詭弁がはびこる侵入生物学/外来種被害のずさんな算出方法/経済効果の高い外来種には触れていない
第8章 〝手つかずの自然〟という神話
森林の奥地に栄えた文明は無数にあった/牛疫ウイルスとツェツェバエが起こした生態学的革命
第9章 エデンの園の排外主義
ダーウィニズムと完璧なる自然/エコロジカル・フィッティングという手がかり/外来種悪玉論からの改宗と周回遅れの環境保護運動
第3部 ニュー・ワイルド
第10章 新しい生態系
/自然回復のきっかけをつくるコロナイザー/新しい生態系の復元力を認める/ほとんどの荒れた生態系は回復している
第11章 都市の荒廃地で自然保護を再起動する
都市の荒廃地にあらわれた楽園/驚くほど都会暮らしを楽しむ野生生物たち/野生生物の天国、チェルノブイリ/旧来型の環境保護は自分の首を絞めている
第12章 ニュー・ワイルドの呼び声
スーパー・スピーシーズ/それでも古い時代に自然を戻そうとする人びと/管理なき自然を求めて
解説──岸由二(慶應義塾大学名誉教授)