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「うつ」は炎症で起きる

著:エドワード・ブルモア
訳:藤井 良江

紙版

内容紹介

うつ病になるのは「心」のせいだけじゃなかった。
精神医学の世界的権威が最新理論をわかりやすく解説。

数十年にわたり進展がほとんどなかったうつ病研究に、いま、革命が起きている。
もっぱら「心」と「脳」の病気と考えられていたうつ病が、実は身体の炎症に原因があるという証拠が次々と挙がっているのだ。
社会的ストレスから発症するうつ病も、ストレスによって炎症が起こることが原因と考えられる。
近い将来、精神科医はうつ病の診断に炎症を調べる血液検査が使うようになり、
検査結果からその患者に最適の抗炎症薬や免疫療法を選択して処方するようになるかもしれない。
既存の抗うつ薬で効果がなかった患者に、救いがもたらされる可能性は大きい。
数多くの人々を苦しめる病気の治療に見えてきた、革命的進展の兆しと将来への展望を、世界的権威がわかりやすく解説する。

<内容より>
●幼少期に炎症マーカーが高いと成人後うつになりやすい
●肝炎の免疫療法で人工的に炎症を起こすと3分の1の人がうつになる
●ストレスが高まると炎症が起きて、うつになりやすくなる
●肥満・歯周病・免疫疾患などによる炎症はうつのリスクを高める
●慢性炎症を治療すると併発していたうつ症状も消える例が多い

目次

はじめに

第1章 うつ病に関するまったく新しい考え方
歯科医に行ってうつ状態になったのはなぜか
神経免疫学は当初うさん臭く思われていた
本当に炎症はうつの原因になるのか
精神医療の革命はテレビ中継されない

第2章 免疫系とは何か、何をしているのか
炎症と感染の基礎
とにもかくにも免疫系は配置が大事
免疫細胞は情報交換で連携する
免疫細胞がすばやく外敵に反応できる理由
免疫は自己を傷つけることもある

第3章 炎症とうつの関係が無視された理由
炎症性疾患の患者のうつは実は珍しくない
身体は機械だが心は違うと考えたデカルト
デカルトの二元論は現代医療に影を落とす
炎症とうつのつながり示す数々の病気
サイトカインに作用する薬剤の大成功
抗サイトカイン薬投与で患者はハイになった

第4章 医学はうつ病をどう扱ってきたか
うつ病の医学における位置づけの遍歴
二元論がうつ病のスティグマを悪化させる
心理学的治療の創始者フロイト
薬草療法の時代から化学製薬の時代へ
抗うつ薬黄金時代の始まりと終わり
セロトニン不足説は茶番にすぎない
うつ病にはバイオマーカーがない

第5章 どのようにうつは炎症で起きるか
デカルト的世界の常識を覆すには証拠が必要
うつ症状が強い人ほど炎症も強い傾向
炎症とうつのあいだに因果関係はあるか
脳と免疫系はさまざまな方法で連絡している
炎症はどのように脳に変化をもたらすか

第6章 なぜ免疫系はうつ病を起こさせるのか
炎症とうつ病に共通するリスク要因を探す
ストレスでサイトカインが放出され炎症が起きる
炎症とストレスの循環がうつ病を悪化させる?
なぜ人はうつ病になるかを自然選択で説明できるか
サバンナでは抑うつ症状が役立った?

第7章 これでうつ病治療は変わるのか
メディカル・アパルトヘイトに苦しむ患者たち
この知見を現在の治療に生かす道はあるのか
抗うつ薬開発の古いビジネスモデルが崩壊した理由
炎症バイオマーカーを組み合わせた個別療法へ
アルツハイマー病にも免疫療法開発の可能性が
統合失調症にも免疫が関係しているか

謝辞
図版出典
参考文献

著者略歴

著:エドワード・ブルモア
エドワード・ブルモア(Edward Bullmore)
ケンブリッジ大学の精神医学科長および臨床神経科学学科のウルフソン脳イメージングセンター長。ケンブリッジシャー&ピーターバラNHSファウンデーション・トラストの精神科の名誉専門医、および研究開発部部長でもある。文学士、医学士、博士、王立内科医協会員、王立精神医学会員、イギリス医学院会員。
オックスフォード大学を経て、ロンドンの聖バーソロミュー病院で医学を学ぶ。香港大学で内科医として勤務した後、ロンドンのセントジョージ病院、王立ベスレム病院、モーズレイ病院で精神科医としての教育を受け、キングス・カレッジ・ロンドンの精神医学研究所で臨床科学者としての教育を受ける。1999年より、ケンブリッジ大学精神学科教授。2005年から、グラクソ・スミスクラインで非常勤勤務をしており、現在、うつ病のための新たな抗炎症薬の開発のために産学協同体を率いている。神経科学およびメンタルヘルス分野の世界的エキスパートである。
訳:藤井 良江
藤井 良江(ふじい・よしえ)
神戸女学院大学文学部卒業。訳書に『変わり者でいこう あるアスペルガー者の冒険』(東京書籍)、『世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?』(日本実業出版社)、『ネイティブ・アメリカン 幸せを呼ぶ魔法の言葉』(日本文芸社)、共訳書に『3.11震災は日本を変えたのか』(英治出版)がある。

ISBN:9784794223944
出版社:草思社
判型:4-6
ページ数:240ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2019年05月
発売日:2019年05月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MJ