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草思社文庫

文庫 死を悼む動物たち

単行本版

著:バーバラ・J・キング
訳:秋山 勝

紙版

内容紹介

 動物たちは家族や仲間の「死」を悲しんでいるのか。これまで科学は、人間の感情を安易に動物に投影することを禁じてきた。だがこの数年、死をめぐる動物たちの驚くべき行動が次々と報告され、自然人類学者である著者も数年にわたる実地調査によって、その考えを変えざるを得なくなったという。
 死んだ子を離そうとしないイルカ、母親の死を追いかけるように衰弱し死んだチンパンジー、仲間の遺骸のうえに木の葉や枝をかぶせるゾウ。さらに猫や犬やウサギ、馬や鳥などきわめて多くの心揺さぶられる事例が本書では紹介される。
死を悼むという行動は、人間だけのものなのだろうか――。

目次

プロローグ 動物たちの悲しみと愛について
     再会に歓喜するヤギの母娘
     仲間の救いを求めるニワトリ
     悲しみは愛の代償か
     愛の必要条件と十分条件
     動物の感情にかかわる難題

第1章 死んだ妹を探して――猫
     猫とは思えない悲痛な声で
     若い動物のセラピー効果
     死んだ妹の思い出は生きているのか
     残された猫たちの悲しみ
     深い絆が断たれるとき

第2章 最良の友だち――犬
    車に轢かれた仲間を救う犬
     仲間に向けられる深い関心
    悲しみを乗り越えられなかった犬
     犬には予知能力があるのか
     棺の前にうずくまる犬

第3章 農園の嘆き――馬・ヤギ
    馬たちの円陣が意味するもの
    仲間の遺体に対面させる
     遺体から離れていったヤギ
    希望を断たれたアヒル

第4章 悲しみがうつを引き起こす――ウサギ
   エサも食べず、巣に引きこもる
     悲しに沈むウサギと変わらないウサギ
     餓死にいたるほどのうつ状態
     激しいストレスがもたらすもの
     〝悲しみ〟が引きおこすプロセス

第5章 骨に刻み込まれた記憶――ゾウ
   エレノアの死にゾウたちが示した行動
     肉親の遺骨を探し求める
     遺体を〝埋葬〟するゾウ
     友の墓前に残した贈り物

第6章 死んだ子ザルを手放せない――サル
   視線を交わしあう母と子
     四十八日間、死んだ子ザルを抱き続ける
     母親の遺骸のそばで鳴く子ザル
     〝遺族〟に残された悲しみの証拠
     絆を引き裂かれたネズミ
     サルは仲間の死を悲しんでいるのか

第7章 チンパンジーのやさしさと残酷さ
   秘められたふたつの顔
     母のあとを追って死んだチンパンジー
     母親は子どもの死を理解していないのか
     ティナの死と残された仲間たち
    仲間の心をとらえるリーダー
     チンパンジー、そして人間の善意と暴力

第8章 愛と神秘を語る鳥たち――コウノトリ、カラス
    鳥の夫婦はほんとうに貞節か
     一夫一婦の愛が負う喪失の悲しみ
     〝羽の生えた類人猿〟
     カラスは仲間の死を悼んでいるか
     ひと筋縄ではいかない生きもの

第9章 嘆きの海に生きる――イルカ、クジラ、ウミガメ
死んだ子イルカを守る十九頭
     海岸に乗り上げるクジラたち
     殺された仲間の写真を見つめるウミガメ
     仲間を救い出したカメ
     リクガメ、ティモシーの教え

第10章 悲しみは種を超えて
   種を超えて結ばれた友情
     友情が支払うべき代償
     なぜ種を超えた友情を求めるのか
     いとおしい命の記憶

第11章 自殺する動物たち
    壁に突進して死んだ母グマ
     死んだ母グマと雄のガゼルの共通点
     ほんとうに意志をもった自殺なのか
     水槽で命を絶った〝フリッパー〟
     自殺行為と自傷行為
     動物の苦しみを知ろうとしない人間

第12章 霊長類の嘆き
     チンパンジーは仲間の死を理解しているのか
     動物園で観察された死への反応
     仲間の死を突然悟ったゴリラ
     残された動物たちへの敬意

第13章 死亡記事と死の記憶
    バイソンによる死亡事故
     遺骨を訪ねてきたバイソンの群れ
     遺骨見つめ続ける動物たち
     死亡記事に託されているもの
     訃報欄に載ったチンパンジー
     遺骨にこめられたメッセージ

第14章 文字につづられた悲しみ
    神に畏怖する生きもの
    静けさにこめられた悲しみの深さ
     悲しみを見すえる目、希望を見つめる目
     動物たちの悲しみ、人の悲しみ

第15章 先史時代の悲しみ
    人類はいつから死を悼むようになったのか
     残された埋葬の形跡
     ホモ・サピエンスとネアンデルタール人
     入念に行われた埋葬
     悲しみの波紋の行方
     太古と現代を結ぶもの

おわりに
     悲しみに沈む動物たち
     〝単なる物〟から〝生きている者〟へ
     動物たちの悲しみを知るということ

著者略歴

著:バーバラ・J・キング
ウィリアム・アンド・メアリー大学名誉教授。専門は自然人類学。ダグラス・カレッジ卒業、オクラホマ大学で博士号を取得後、ケニアでサルの研究を行い、さらにアフリカ、アメリカの各地でサルや大型類人猿の観察を進めてきた。人間と動物を結ぶ情動的関係について、その研究は従来の考察を深めたとして高い評価を得ている。ナショナル・ジオグラフィック・ラジオなどアメリカ国内をはじめさまざまなメディアに幅広く登場。主著にPersonalities on the Plate: The Lives and Minds of Animals We Eat(University of Chicago Press, 2017)、Being With Animals (Doubleday,2010)、 Evolving God (Doubleday,2007)、 The Dynamic Dance (Harvard University Press,2004)がある。バージニア州在住で、夫とともに野良猫の愛護活動に取り組んでいる。
訳:秋山 勝
立教大学卒業。出版社勤務を経て翻訳の仕事に。訳書に、ジャレド・ダイアモンド『若い読者のための第三のチンパンジー』、デヴィッド・マカルー『ライト兄弟』、曹惠虹『女たちの王国』(以上、草思社)、ジェニファー・ウェルシュ『歴史の逆襲』、マーティン・フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』(以上、朝日新聞出版)など。

ISBN:9784794223197
出版社:草思社
判型:文庫
ページ数:392ページ
定価:980円(本体)
発行年月日:2018年02月
発売日:2018年02月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PSV