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戦争の記憶と国家

帰還兵が見た殉教と忘却の現代イラン

著:黒田 賢治

紙版

内容紹介

1980年代に、8年に及んで続いたイラン・イラク戦争。
戦後、ある帰還兵は、
「戦争は終わった、だが、闘いは続いている。これも闘いなのだよ。今日、君とこうやって〔墓地を〕訪れ、時を過ごしたことも、闘いなのだよ。」
と語った。
戦死した兵士たちの記憶はいかに保たれ、忘れられるのか。
支配体制や「軍」を支えている原動力とは何か。
緻密な聞き取りから、現代イランの国家と人々を描く。

目次

序 章
第1章 中東の大国イランにおける「軍」
はじめに
一、中東の大国イランの誕生
二、イラン・イスラーム共和体制の軌跡
三、支配体制を存続させてきたメカニズム
四、本書の調査概要
第2章 勝者のいない戦争
はじめに
一、 揺れ動く攻勢――防衛戦から勝者のいない戦いへ
二、イラン・イラク戦争と戦没者たち
三、語られる戦争と埋め合わせられない記憶
第3章 死の社会的転換装置としての「殉教」
  はじめに
  一、言説的伝統としての「殉教」
  二、イスラーム共和制史観と「殉教者」認定
  三、「聖域防衛の殉教者」
  四、埋められない記憶に直面する二つの殉教者家族
  五、「賢者の石」の限界
第4章 忘却と記憶の政治
はじめに
一、記憶と忘却と殉教者博物館
二、殉教者博物館という地域コミュニティ空間
三、「殉教者」の記憶化――記憶をひろい集める
四、記憶と忘却の政治
第5章 消費される「殉教文化」
はじめに
一、文化的コンテンツとしての「殉教」と消費者の多層性
三、娯楽を埋め込む戦争博物館
第6章 情動の政治と修復する未来
はじめに
一、二つの抗議運動にのめりこむ
二、情動の政治と日常の畏れ
三、プラースコー・ビルディングの火災の悲劇とロハスの目覚め
終 章

著者略歴

著:黒田 賢治
奈良県出身。国立民族学博物館現代中東地域研究拠点・特任助教/人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター・研究員。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了。専門は、中東地域研究。近年の著編著に共編『大学生・社会人のためのイスラーム講座』ナカニシヤ出版、2018 年、共著『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門―ムスリムの生活・文化・歴史』星海社、2018 年、『イランにおける宗教と国家―現代シーア派の実相』ナカニシヤ出版、2015年などがある。また最近の論考に、「近代日本の中東発見―扉を開いた幕末・明治の先人たち」西尾哲夫・東長靖編『中東・イスラーム世界への30の扉』ミネルヴァ書房、2021年などがある。

ISBN:9784790717607
出版社:世界思想社
判型:4-6
ページ数:254ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2021年09月
発売日:2021年10月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH