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乳幼児の発達

運動・知覚・認知

著:ジャック・ヴォークレール
監訳:明和 政子
訳:鈴木 光太郎

紙版

内容紹介

◆斬新な視点のテキスト◆

本書は、心理学の巨人ピアジェから直接教えを受けた最後の弟子である著者が、ピアジェ以降今日までめざましい進展のあった乳幼児の発達研究の成果を、ピアジェの再評価やその理論の再構成を試みつつ若い学徒に向けてまとめた概論書です。人は特別な存在として突然進化してきたわけではなく、人の認知能力の最高傑作ともいえる言語でさえ、人以外の霊長類にその萌芽を見出せるという、大きな視点に立って書かれているところに特色があります。大勢の執筆者によって書かれた発達心理学のテキストが多い中、一貫した立場で、初学者にも理解しやすく書かれていることも本書の大きな魅力です。

目次

乳幼児の発達―目次



ヴォークレール先生について   明和政子
はじめに
Ⅰ 本書の目的と章立て
Ⅱ 知覚・運動・認知の発達心理学とフランスの研究者
 
1章 発達心理学における疑問と考え方
Ⅰ 発達をどう考えるか? ― 疑問と論争
1 発達は連続か不連続か?
Ⅱ 発達の2つの要因
1 成熟を重視する立場
2 環境を重視する立場
3 相互作用を重視する立場
4 文化の影響を重視する立場
Ⅲ 子どもの年齢に関係する概念
 【1章のまとめ】
 
2章 認知発達を研究する方法
Ⅰ 行動を心理学的に研究するための科学的基準
Ⅱ データ収集の方法
1 観察記録と自然観察
2 観察法の限界とバイアス
Ⅲ 実験的アプローチ
1 選好注視法
2 新奇選好法
3 馴化―脱馴化法
4 吸啜法
5 生理反応の測定
6 条件づけ法
7 縦断的アプローチと横断的アプローチ
 【2章のまとめ】
 
3章 出生前の発達
Ⅰ 胎児の発達段階
1 胎児の発達と脳
2 感覚系の発達
Ⅱ 出生前の聴覚的学習
1 心音の効果と学習
2 出生前の母親の声の認知
Ⅲ 胎児への母親の行動の影響
1 飲酒の影響
2 喫煙の影響
 【3章のまとめ】
 
4章 運動の発達
Ⅰ 新生児の反射
1 その後の発達にとっての反射の機能
Ⅱ 運動能力の発達
1 頭尾法則と近遠法則
2 運動発達のおもな段階
3 姿勢の制御の発達
4 移動運動の発達
5 手の制御の発達
Ⅲ 利き手の発達
1 利き手の発達カレンダー
2 胎児の運動の非対称性
3 反射の非対称性 ― 非対称的緊張性首反射と把握
 【4章のまとめ】
 
5章 知覚の発達
Ⅰ 視覚能力
1 視力
2 レンズ調節(焦点合わせ)
3 両眼視
4 大きさと形の恒常性
5 ほかの視覚能力
6 顔の知覚
Ⅱ 身体運動と視覚の協応 ― 奥行き知覚
Ⅲ 聴覚能力
1 音の定位能力
2 言語音の知覚
Ⅳ 味覚と嗅覚の発達
Ⅴ 皮膚感覚の発達
Ⅵ 複数の感覚モダリティの対応関係
1 感覚モダリティ間知覚と感覚モダリティ間転移
2 視覚と口による触探索の間の転移
3 触覚と視覚の間の転移
4 視覚と聴覚の間の対応
 【5章のまとめ】
 
6章 認知発達の理論
Ⅰ ピアジェの知能の発達理論
1 ピアジェの知能理論の原理
2 生物学的なものから心理学的なものへ ― 発達のプロセス
3 発達段階の記述
4 感覚運動の発達
Ⅱ 情報処理的理論
1 情報処理システムの基本構造
2 はたらいているプロセス
3 情報処理アプローチとピアジェのアプローチ
4 新ピアジェ派の理論、情報処理理論と発達
Ⅲ コア知識理論
Ⅳ 表象書き換え理論
 【6章のまとめ】
 
7章 モノの知識と因果関係
Ⅰ モノの永続性の再検討
1 モノの永続性とありえない出来事法
2 モノの永続性(あるいはAノットBエラー)
  に関係するいくつかの要因
Ⅱ 因果
1 因果関係の知覚
2 作用因と被作用因の違い
 【7章のまとめ】
 
8章 カテゴリー化
Ⅰ 乳幼児のカテゴリー化の研究
1 カテゴリー化を研究する方法
Ⅱ カテゴリー表象の性質とプロセス
1 カテゴリー化のレベルと発達
2 カテゴリー表象ではたらいているプロセス
 【8章のまとめ】
 
9章 空間の認知
Ⅰ 空間の自己中心的符号化
1 ピアジェの考え方
2 自己中心的符号化の脱中心化に関係する要因
Ⅱ 空間の客観的符号化の研究
Ⅲ 幾何学的手がかりと非幾何学的手がかりに対する乳幼児の感受性
1 ハーマーとスペルキの研究
2 空間認知の発達と手がかりを組み合わせるための条件
 【9章のまとめ】
 
10章 数の認知
Ⅰ 数の弁別
1 点の弁別
2 集合の弁別
3 大きな数量の弁別
4 集合の大きさと見積もりのメカニズム
Ⅱ 乳幼児と計算
1 乳児も計算できる?
2 ほかの仮説と論争
3 乳児の数的能力についての数によらない説明
 【10章のまとめ】
 
11章 記憶
Ⅰ 乳幼児の記憶研究の方法
1 馴化パラダイムと新奇選好パラダイム
2 随伴強化パラダイム
3 模倣パラダイム
4 出来事の記憶
Ⅱ 乳幼児の記憶の性質
Ⅲ 記憶の発達と幼児期健忘
1 成熟の要因の役割
2 認知的自己仮説
3 言語と心の理論の仮説
4 社会認知的仮説
 【11章のまとめ】
 
12章 音声知覚から最初のことばへ
Ⅰ 言語と言語習得の一般性
1 言語と系統発生
2 言語発達理論の概観
3 ことばはいつ始まるか?
Ⅱ 音声カテゴリーの知覚とプロソディの知覚
1 音素の知覚
2 プロソディの知覚
3 単語音の学習
Ⅲ 喃語から語彙の獲得へ
1 1歳から2歳にかけての語彙の発達
2 単語の意味の獲得
 【12章のまとめ】
 
13章 終わりに
Ⅰ 早期発達の研究法とその限界
Ⅱ 現在の認知発達の理論
1 生得説再考
2 知覚表象と感覚運動表象
 
訳者あとがき   鈴木光太郎
引用文献 (7)
事項索引 (4)
人名索引 (1)


装釘=臼井新太郎
日本版イラスト=畠山絵美

ISBN:9784788512825
出版社:新曜社
判型:A5
ページ数:322ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2012年03月
発売日:2012年03月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JNG