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日本語教育と戦争

「国際文化事業」の理想と変容

著:河路 由佳

紙版

内容紹介

◆世界平和のための日本語教育の面白さと難しさ◆

「国際文化事業としての日本語教育」というと、戦後に始まったと思われがちですが、国際文化振興会による日本語普及事業、国際学友会による留学生教育というかたちで、戦前から行なわれていました。外国人向けの日本語教育の先駆者・松宮弥平、息子の一也、長沼直兄などの足跡をたどりながら、太平洋戦争に突入するなかで、当事者たちの理想(世界平和に役立つ)がどのように維持され、どのように変形せざるを得なかったかを、一次資料やインタビューによりながら克明にさぐります。戦時中の「紀元二千六百年記念国際懸賞論文」では予想外に多くの質の高い論文が欧米を含む海外から寄せられたこと、東南アジア留学生のための学友会日本語学校の自由な空気など、意外な事実が明らかになります。と同時に、言語帝国主義に陥らない日本語教育の難しさも思い知らされます。新発見に満ちた労作です。著者は東京外国語大学教授です。

目次

戦争と日本語教育―目次

序章 「国際文化事業」以前の日本語教育

第一章 「国際文化事業」の幕開け―国際文化振興会と国際学友会の創立
1 幕末から一九三〇年代にいたる日本の「国際文化交流」
2 一九三〇年代の国定教科書に見る国際交流観
3 「国際文化事業」としての日本語普及論
三枝茂智の「民族的対外文化事業」における言語普及論
柳澤健の「国際文化事業」構想における日本語普及論
4 一九三〇年代にいたる日本語学習の需要と日本語教育
5 国際文化振興会の草創期における事業内容と「日本語普及」
出版助成と海外への資料提供
対外文化事業としての日本語学習支援
6 国際学友会の草創期における事業内容と日本語教育
国際学友会に期待された「国際教育」
草創期の国際学友会における英語・日本語

第二章 国際文化振興会における日本語普及事業の展開
1 「国際文化事業」としての日本語普及へ
日本語普及事業の前夜
「日本語海外普及に関する協議会」
2 積極的な日本語普及事業への着手
外務省文化事業部『世界に伸び行く日本語』
国際文化振興会の方針転換
「日本語普及編纂事業」七カ年計画
3 紀元二千六百年記念国際懸賞論文
4 同時期のアジア地域を対象とする日本語普及政策
興亜院による「日本語普及方策要領」
文部省による「国語対策協議会」
日本語教育振興会の設立
5 「国際文化事業」から「対南方文化工作」へ
6 戦争中の「日本語の世界化」論
石黒修の『日本語の世界化』
松宮一也の『日本語進出の現段階』『日本語の世界的進出』
釘本久春の『戦争と日本語』
7 戦争中の日本語普及事業によって生まれた出版物
国際文化振興会「日本語普及編纂事業」七カ年計画の結果
日本語教育振興会によって出版された日本語教材

第三章 国際学友会における日本語教育事業の展開
1 岡本千万太郎の日本語教育観
「国際教育」における日本語観
日本語予備教育における「日本文化」観
日本語による「国際教育」観
2 国際学友会の日本語教育課程の本格化
日本語教育課程の整備
日本語教室から「日本語教育部」へ
「日本語教育部」時代の学習者と日本語教育
日本語教科書の編纂・出版
校舎の移転・設備の充実
国際学友会日本語学校の開校
3 開校当初の国際学友会日本語学校
4 「南方文化工作」と国際学友会
南方特別留学生の受け入れ
大東亜省による指導の強化
教員体制の強化、職員の異動
国際学友会の目的・名称変更案
5 国際学友会日本語学校のカリキュラム・教授法
学習者とクラス編成
時間割とカリキュラム
教材とその教授法
指導の強化
6 戦争末期の国際学友会日本語学校

第四章 日本語普及(教育)事業と敗戦
1 国際文化振興会
日本語普及事業からの撤退
国際文化振興会の日本語普及事業が戦後に遺したもの
2 国際学友会
国際学友会日本語学校の閉校
国際学友会日本語学校が戦後に遺したもの
3 日本語教育振興会
戦後直後の教員養成
戦後直後の調査研究
4 なぜ、日本語教育振興会だけが新規事業にとりくんだのか
長沼直兄の活躍
日語文化協会の終焉

終章 新しい理念の構築に向けて

あとがき
参考文献一覧
関連年表
索引

   装幀―難波園子

ISBN:9784788512627
出版社:新曜社
判型:4-6
ページ数:388ページ
定価:4300円(本体)
発行年月日:2011年11月
発売日:2011年11月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:CF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:CJ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 4:2GJ