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子育て支援後進国からの脱却Ⅱ 幼児教育・保育の真の「無償化」と「公定価格」改善課題 安全な保育・増える重大事故根絶を目指して

著:村山祐一

紙版

内容紹介

現代日本の保育・幼児教育政策で最も重要な幼児教育「保育の無償化」と「公定価格」改善問題について検討。この2つの課題は、後の日本の保育・幼児教育の在り方を大きく左右し、「子育て支援後進国からの脱却」への歩みを踏み出すかどうかということに大きな関係を持つ。この2つの課題について歴史的経過や保育の現状をふまえて、どのような改善が必要かを具体的な数字をあげて検討・提言。

目次

◆もくじ
序文 本書の刊行にあたって
(1)保育・教育は共通だが 幼稚園と保育所の制度の異なり
(2)1970年後半~1980年代の保育所・幼稚園
(3)国の保育政策の転換と保育制度改変の第一波
(4)規制緩和政策の推進と保育制度改変第二波の動向
(5)幼稚園児の減少下での幼稚園条件整備の改善の推進
(6)幼児教育・保育の無償化政策について
(7)保育所運営費抑制政策4半世紀の歩みが生み出した深刻な状況
(8)幼稚園は1クラス2名配置可能な基準に改善、保育所は1名のままという基準
(9)保育所等の重大事故急増、幼稚園の約9~12 倍─第2 部の検討課題について
(10)刊行に際しての留意した事項について
(11)こども家庭庁創設及び「幼保一元化」に関連して
第1部 「幼児教育・保育の無償化」政策の動向と課題 真の幼保無償化をめざして
幼児教育・保育の無償化及び関連政策の変せんを検証
第1章 幼児教育・保育の無償化の検討開始と規制緩和政策
1.私立幼稚園団体は「幼児教育の無償化」を要望
2.文科省審議会は「幼児教育の無償化」中間報告公表
3.厚労省・社会保障審議会少子化対策部会等ではほとんど論議されない
第2章 無償化の検討から段階的取り組みへ
1.政権交代で無償化問題陰を潜め、子育て支援新制度法案が成立
2.政府と与党の無償化関係閣僚・与党実務者会議の設置
3.新制度スタートまでの子ども子育て会議の論議と無償化関連施策について
(1)子ども・子育て会議での幼児教育無償化の議論
(2)小規模保育事業B 型─保育士配置は最低基準の1/2、基準の緩和へ─
(3)官邸主導・国主導で突然の認可外保育事業の創設
第3章 子ども・子育て新制度のスタートと無償化の推進
1.少子化社会対策大綱と教育再生会議提言で「段階的に進める」と明記
2.無償化の取組は「段階的推進」から「可及的速やかに」に変化
3.待機児童解消と保育士処遇改善が少子化対策の重要な課題に
4.官邸の指示? 強引にすすめられた「幼児教育の無償化」
(1)「新しい経済政策パッケージ」で「幼児教育の無償化」の全面実施示す
(2)約束されていた「保育の質の改善」は置き去りに
(3)拙速な検討会の設置とわずか5ヶ月で基本方針決定
(4)自民党の政権公約「質の高い幼児教育」も無視した拙速手法
5.子ども・子育て会議と無償化問題の審議─副食費問題を中心に
(1)子ども・子育て会議事務局は「報告」に終始
(2)食は教育・保育の一環であり無償化の対象ではないか?
(3)食材料費(給食費)と保護者の応能負担
(4)食材料費4,500円だけでなく、追加の680円問題で突然不可解な説明
(5)自治太関係書等の異議で、食材料費4,500円に、不透明な一般生活費の減額
(6)不透明な一般生活費の内訳、ほんとうに積み上げ方式なのか
第4章 子育て支援法改正と無償化政策の特徴と改善課題
1.「保育の質向上」を無視し子どもを置き去りにした無償化政策
2.新聞社説の論調にみる「無償化」政策への評価
3.「真の無償化政策」の実現に向けての6つの課題
第2部 保育の公定価格と保育士等職員処遇改善課題安定した運営と保育士等職員増・処遇改善に関する緊急提言 なぜ、保育所の公定価格の改善が必要なのか
第1章 国が決める保育費用のシステム
1.公定価格とは
2.公定価格の種類
3.公定価格と給付費について
第2章 公定価格の基本構造と課題─幼稚園と保育所を中心に
1.幼稚園と保育所の基準の違いと特徴について
(1)保育対象年齢と保育時間・保育日数の違いと園児の生活や教諭・保育士の仕事
2.公定価格の基本的枠組みについて
(1)公定価格の基本的特徴
(2)基本分単価の人件費に含まれる費用について
(3)加算部分の人件費─処遇改善等加算の基準について
(4)事業費と管理費について
3.公定価格の保育者配置基準で幼稚園、保育所の保育者配置はどうなるか
(1)幼稚園等の配置基準は大きく改善、1クラスに2名配置も可能
(2)保育所の配置基準は改善されず、条件悪化が進行
4.保育時間の長さと公定価格等補助制度について
(1)保育短時間認定と保育標準時間認定の保育保障について
(2)幼稚園「預かり保育」と8時間保育について
5.土曜保育問題と公定価格─土曜保育と不条理な減算システムの導入
(1)幼稚園の長期休暇は公定価格で保障、保育所の土曜保育閉所は減算
(2)理由にならない土曜保育費用の減算
(3)保育所の土曜保育の現状と経費について
6.法令で定められていない保育所の開所日数について
(1)保育所の一般生活費は1ヶ月22日と厚生省家庭局長国会質疑で明言
(2)月途中入所の日割り方式導入で「国との精算は1ヶ月25日で計算」
(3)厚生省課長通知でお盆休み等自主的休所日は「開所日」扱いと明記
(4)子ども・子育て新システム検討会議での事務局提案も無視して「年間300日」
第3章 公定価格の単価額基準とその運用について
1.公定価格の人件費基準単価額の設定について
(1)国家公務員給与表の格付けとその歩み
(2)国家公務員格付けの問題点と新制度でも進まない改善
2.公定価格の基本分単価額と人件費単価額について
(1)幼稚園(4時間標準保育)と保育所短時間認定(8時間保育)との単価額の比較
(2)保育所の保育標準時間(8~11 時間)の単価額について
3.事業費と管理費の単価額について─内訳が不透明
(2)保育所の事業費・管理費について
(3)公定価格の事業費・管理費と内閣府・厚労省課長連名通知の単価額に大きな食い違い
4.幼稚園、保育所の処遇改善等加算Ⅰ及び加算Ⅱの単価額比較について
(1)新制度・処遇改善等加算Ⅰについて
(2)処遇改善加算Ⅱにみる幼稚園と保育所の格差
(3)処遇改善等加算Ⅱの具体的事例での検討
5.幼稚園と保育所の公定価格総額(4歳以上児、3歳児)の比較─保育所(8時間保育)の公定価格は幼稚園(4時間標準保育)より約20%弱~30%強少ない
(1)幼稚園定員100名と保育所100名の4歳以上児の単価の比較について
(2)基本分単価と処遇改善等加算について─保育所8時間保育認定の単価額は幼稚園より安いのはなぜ
(3)主な加算額について─保育所は幼稚園の30%弱~50%弱少ない単価額
(4)保育所8時間保育認定の合計額は幼稚園より約20~30%程度少ない
(5)幼稚園の8時間保育の公費補助(一時預り事業)─幼稚園は保育所の約3割増
(6)幼稚園の8~11時間保育の補助金基準と保育所公定価格単価額基準との格差
6.公定価格とその運用及び保育所・幼稚園の経営実態
(1)私立保育所の委託費(公定価格に基づく運営費)の構造と運用について
(2)私立保育所の運営費のやりくりの構造
(3)公定価格の基本分単価等の主な経費の内容
7.負のスパイラルを断ち切るには保育士等職員増・処遇改善が必要
第4章 保育士等職員増・処遇改善施策を考えるうえでいくつかの課題について
1.保育所等の重大事故件数の急増をどう見るか
(1)保育所・認定子ども園の重大事故発生率は幼稚園の約9~13倍と異常な高さ
(2)幼保連携型・保育所型認定こども園の重大事故発生率は保育所と同様に高い
(3)事故発生の要因について─「~しながら保育」等の常態化
(4)「~しながら保育」等の解消には保育士の配置や働き方の改善が必要
2.保育所の設備・運営基準(最低基準)の問題点と改善の視点について
(1)最低基準の2つの基本理念と運用・改善の歩みについて
(2)第1の理念 最低基準は「日新月歩」したと言えるのか
(3)第2の理念「最低基準を超えて向上させる」という視点はどうか
3.公定価格にみる幼稚園と保育所の格差について
(1)公定価格に見る保育者配置基準の格差
(2)保育時間や保育日数の長さが考慮されてない基準に問題
4.新制度施行と保育士処遇改善施策の推移
(1)保育士確保プランと保育士確保対策検討会─規制緩和策の推進で進まない保育士処遇改善
(2)「保育所等における保育の質・向上に関する検討会」の「とりまとめ」─ノンコンタクトタイム、研修時間の確保を指摘、改善の視点は示されず
(3)「保育の現場・職場の魅力向上検討会」報告書公表─勤務環境の改善が指摘されても、改善の糸口見えず、叫びだけの保育の魅力向上なのか
第5章 子どもの命と安全を守り、保育の質の向上をすすめるために保育所等の安定した運営と保育士等処遇改善等の緊急改善策の提案
1.保育士等処遇改善の基本的視点について
(1)保育士等職員給与基準の改善─給与加算制度の創設等
(2)保育士等職員配置・加算改善策の視点と事業費・管理費の改善課題
2.保育士配置基準等緊急改善策6つの提案
(1)平均的保育所の状況と改善の視点
(2)改善策Ⅰ 幼稚園の職員加配配置基準を保育所にも適応
(3)改善策Ⅱ 重大事故防止のために等
(4)改善策Ⅲ 保育時間の長さに応じた保育士配置、休憩、有給休暇の保障を
(5)改善策Ⅳ 調理職員増員、看護師、主任保育士増員、事務職員等の加算拡充を
(6)改善策Ⅴ 土曜保育の再検討とシェア保育の拡充
(7)改善策Ⅵ 保育所の開所日数規定の明確化と保育ニーズを地域全体で支える仕組みの確立を─公定価格基準の開所日数「月25日、年間300日程度」の抜本的改善
付録 保育政策・制度問題関連年表Ⅱ(2008 年~2021 年、村山祐一作成)

著者略歴

著:村山祐一
1942年生まれ。1969年法政大学大学院社会科学研究科修士課程修了、社会福祉法人加須福祉会三俣保育園園長、保育研究所所員などを経て、1998年10月から鳥取大学教育学部教授に就任。2006年4月から帝京大学文学部(現在教育学部)教授、2008年4月同大学教職大学院教授兼務、2013年3月定年退職。
現在 保育学研究者・保育問題アナリスト、保育研究所所長、社会福祉法人加須福祉会理事長、同福祉会みつまたエコ・エデュケアーセンター代表

ISBN:9784788021839
出版社:新読書社
判型:A5
ページ数:382ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2023年01月
発売日:2023年01月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JNG