睡蓮
長屋のり子詩集
著:長屋 のり子
紙版
内容紹介
もうすぐ死んでしまう兄が、
火を焚いてくれている。
この世での兄弟の最後の愛の証のように一心に
火を焚いてくれている。
――本書より
「詩は愛しい死者達との融通無碍の通路になった」。詩人・山尾三省の妹による追憶の歌。
家族の時間、日々の情景をみずみずしい筆致で描いた著者の代表作を、増補新版として復刊。
花崎皋平(哲学者)、嵩文彦(詩人)、宮内勝典(作家)の解説を付す。(発行=野草社)
「宮沢賢治の「永訣の朝」は、死にゆく妹への慟哭であった。そして、この『睡蓮』に鳴りひびいているのは、死にゆく兄への慟哭である」(解説・宮内勝典「おなり神の歌」より)。
目次
I
睡蓮
緑の石
ラスコーリニコフ
十三月
雲の接吻
海
蜥蜴
エメラルド色のそよ風族
さあ 火を焚こう
繭
憧憬の蝶
蝶
II
栗
カナリア
母の幽霊
母の死
応答せよ
ブルース・ハープ
五右衛門風呂
あーんしてごらん
III
洗面器の水になった夢は
七段目の階段
カイルの四角形
赤い馬
幸福銀行
IV
池田郁子の弟ヒロシの考察 by B・B phone
SAMUSA
上に堕ちる夢
歯ブラシを失くして
ごっこ汁
ハラホロハラヒレとその時 百合子ちゃんは云った
日本国憲法第九条は雨に咲く白い薔薇
V
帰郷(I)
帰郷(II) ――神田淡路町――
春氷柱 光の指
VI 叙事詩
モーツアルトを聴くと
魂の原郷 屋久島にて
*
長屋のり子詩集『睡蓮』を愉しむ 花崎皋平
長屋のり子さんへの手紙 嵩 文彦
おなり神の歌 宮内勝典
*
ぽえとりくす舎版へのあとがき
野草社版へのあとがき
青鳩が石狩湾の薄い青色の海水を啜る日に