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文化表象としての村上春樹

世界のハルキの読み方

編著:石田 仁志
編著:アントナン・ベシュレール

紙版

内容紹介

フランスやイギリス、イタリア、アメリカ、台湾、日本の研究者が、それぞれの社会的・文化的な背景をもとに主要な村上作品の新たな読み方やアダプテーションの諸相を照らし出す。「ムラカミハルキ」という文化現象に多角的に迫る国際シンポジウムの成果。

目次

はじめに 石田仁志

第1部 翻訳・比較文学から見る村上春樹

第1章 「影」の不変的な重要性――永井荷風『すみだ川』から村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』まで スティーブン・ドッド[大村梓訳]

第2章 翻訳に内包される異国性――村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』 大村 梓
 1 初期村上春樹作品の異国表象
 2 表層的な異国性――一人目と三人目の中国人
 3 異国性を超えて/異国性の付与――二人目の中国人

第3章 村上春樹における図書館――異界、自己形成、手仕事としての創作 朝比奈美知子
 1 図書館が喚起する想像世界の多様性
 2 『図書館奇譚』――異界と自己探求
 3 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』――境界線上の場
 4 『海辺のカフカ』――休息、夢想、母性
 5 文学創作の手仕事の象徴としての図書館

第4章 村上春樹、旅に出る(そのⅡ) アンヌ・バヤール=坂井
 1 村上春樹の紀行文集
 2 十五年ぶりの紀行文集、その構成
 3 アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジア
 4 越境文学ではない紀行文集
 5 紀行文の過去と現在

第5章 夢はどこへ向かうのか?――村上春樹とイスマイル・カダレ 石田仁志
 1 村上春樹の夢の行方
 2 イスマイル・カダレの夢の行方

第2部 村上春樹における表象――現実・社会・物語

第6章 グローバル時代のトラベルライティング――村上春樹の紀行文 ジェラルド・プルー
 1 日常性を求める旅行観
 2 旅行ガイドの文学化、そして文学性

第7章 教材としての『鏡』――語ることによる再生 早川香世
 1 「僕」の恐怖体験
 2 語りにくいことを語ること
 3 教材としての『鏡』

第8章 村上春樹文学に漂う「死」のにおい――夏目漱石文学の継承 范淑文
 1 「女のいない男たち」のエムの「死」
 2 「女のいない男たち」と『こころ』の類似点
 3 『こころ』の「先生」の「遺書」

第9章 震災の内側と外部をつなぐもの――「白樺」派から村上春樹へ 杉淵洋一
 1 関東大震災は「白樺」派の同人たちによってどのように描かれたのか
 2 阪神・淡路大震災は村上春樹によってどのように描かれたか
 3 現代の日本の流行作家たちは震災をどのように描いているのか

第10章 村上春樹の森 ブリジット・ルフェーブル
 1 「ノルウェーの森」と『ノルウェイの森』
 2 森の物語、あるいは森という舞台
 3 物語の森、あるいは物語という森
 4 象徴の森と読者、あるいは逆転した世界

第11章 古川日出男による村上春樹リミックス 杉江扶美子
 1 二つの『スロウ・ボート』の間テクスト性
 2 リミックス操作による変形
 3 倍音のある文体

第12章 『神の子どもたちはみな踊る』再読――「あなたは誰?」意識の転換 石川隆男
 1 構造へのマクロ的眼差し
 2 構造へのミクロ的眼差し
 3 見え隠れする二つの装置

第13章 サバイバーズ・ギルトとパラレルワールド――国語教科書と村上春樹 野中 潤
 1 サバイバーズ・ギルトとは何か
 2 国語教科書とサバイバーズ・ギルト
 3 サバイバーズ・ギルトとパラレルワールド

第3部 映像との親和性と乖離

第14章 村上春樹は、なぜ映画脚本家にならなかったか 助川幸逸郎
 1 父との葛藤と日本文学ぎらい
 2 少年期の春樹と映画
 3 若き村上の「文化的階級」
 4 「スリップストリーム」の作家として

第15章 〈見果てぬ〉『ノルウェイの森』 中村三春
 1 輻輳する過去
 2 愛されない人物たち
 3 〈正しい恋愛〉のコード
 4 移動、遮蔽、自己拘束

第16章 短篇という時間性――村上春樹と映画 アーロン・ジェロー
 1 村上と映画の謎
 2 「映画」の定義の前提
 3 稲垣とある種の映画
 4 儀式としての映画の時間
 5 オルタナティブとしての短篇

第17章 本のなかのスクリーン――村上春樹作品における映画に関する言及の考察 ジョルジョ・アミトラーノ
 1 村上作品におけるインターテクスチュアリティー
 2 佐々木マキとゴダール――スタイルの発見
 3 青豆vsフェイ・ダナウェイ
 4 高松でトリュフォーに出会う
 5 『ミス・ブロディの青春』とある歌の記憶

第18章 「やみくろ」はどのように表象されるのか――『神の子どもたちはみな踊る』におけるフィルム・アダプテーション 米村みゆき
 1 小説から映画へのアダプテーション
 2 地震の表象
 3 主人公の subjectivity――主人公はどのように救われうるのか

第4部 文化コミュニケーションのなかの村上春樹

第19章 村上春樹と「小説家のコミットメント」 アントナン・ベシュレール
 1 「日本人」の再発見
 2 「構造しかない」物語?

第20章 一九七九年の村上春樹 横路明夫
 1 初期の村上春樹のサブカルチャー性について
 2 AIによるゴースト獲得物語①――『攻殻機動隊』のタチコマについて
 3 AIによるゴースト獲得物語②――『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

第21章 村上春樹は台湾でどのように受け入れられたのか 横路啓子
 1 文化現象としての村上春樹――建築物から流行語まで
 2 村上春樹の台湾への移動
 3 村上に影響を受けた文化人や作家

第22章 情報・宗教・歴史のif――村上春樹『1Q84 BOOK3』論 木村政樹
 1 牛河の情報戦
 2 「決定的な二十五分間」と歴史の「もし」

著者略歴

編著:石田 仁志
東洋大学文学部教授。専攻は日本近現代文学。共編著に『戦間期東アジアの日本語文学』(勉誠出版)、論文に「村上春樹『1Q84』における〈家族〉表象」(「文学論藻」第91号)、「ノスタルジーの表象――横光利一『旅愁』」(「国際文化コミュニケーション研究」第1号)など。
編著:アントナン・ベシュレール
ストラスブール大学日本学科准教授。専攻は日本現代文学、日本現代サブカルチャー。著書に『大江健三郎あるいは暴力の経済』(ストラスブール大学出版会)、編著書に『大江健三郎選集』(ガリマール社)、論文に「大江健三郎 アルカイック・ノスタルジーと暴力の系譜」(『大江健三郎全小説』第6巻、講談社)など。

ISBN:9784787292513
出版社:青弓社
判型:A5
ページ数:330ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2020年02月
発売日:2020年01月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ