風俗絵師・光琳
国宝『松浦屏風』の作者像を探る
著:小田 茂一
内容紹介
「風俗図」「美人図」の絵師としての視座から光琳に新しいアプローチを試み、光琳絵画の根幹を明らかにする。同時に、近世の主要作品としてはその由来の解明が進んでいない『松浦屏風』をめぐる未確定事項、とりわけ作者像について一つの推論を加える労作。
目次
はじめに
第1章 多様な図像表現を生んだ江戸文化
1 描画媒体の変遷と内容の進展
2 絵画の隆盛に至る文化の変遷
第2章 『松浦屏風』の画面構成と絵画としての特質
1 『松浦屏風』の制作意図
2 『松浦屏風』に凝縮されたさまざまな意匠
第3章 風俗図としての『松浦屏風』
1 カルタ図柄の『松浦屏風』への反映
2 『松浦屏風』の衣裳図柄と文物
第4章 『松浦屏風』と元禄様式
1 遊楽図、風俗図の変遷と『松浦屏風』
2 『松浦屏風』の小袖図柄と時代背景
第5章 『松浦屏風』と光琳芸術の意匠の特徴
1 光琳の美意識と小袖の光琳模様
2 『松浦屏風』にみられる光琳風の図案描写
3 「小西家旧蔵資料」画稿にみる光琳風面立ちの生成プロセス
第6章 『松浦屏風』と『燕子花図屏風』の近似性
1 同じ発想から生まれた『松浦屏風』と『燕子花図屏風』
2 『燕子花図屏風』から『松浦屏風』が派生した脈絡
第7章 光琳作品と『松浦屏風』とのさまざまな共通点
1 光琳風の面立ちに近似する『松浦屏風』の遊女たち
2 光琳作品における複数の視座と西洋絵画
第8章 繊細な動勢によって拡張する光琳風空間
1 『松浦屏風』と『佐野渡図』との多様な類似点
2 光琳美学を構成する色彩と描線
第9章 『松浦屏風』の構成美と革新性
1 光琳絵画にみられる近代的構成美
2 光琳芸術の構図上の意匠
第10章 『松浦屏風』と『誰が袖図屏風』との関連
1 琴棋書画図からの多様な展開
2 『誰が袖美人図屏風』は「誰が袖図」なのか
第11章 「小西家旧蔵資料」画稿から『誰が袖美人図屏風』の世界へ
1 『誰が袖美人図屏風』にみる光琳風表現スタイル
2 光琳の特質を反映する二つの特異な作品
終 章 京の伝統と光琳
1 妍を競うことと『松浦屏風』
2 「人体の人工化」と『松浦屏風』
注
参考文献
あとがき