出版社を探す

日本学叢書 5

戦後日本の〈帝国〉経験

断裂し重なり合う歴史と対峙する

編著:杉原 達

紙版

内容紹介

兵役を忌避した沖縄の人々、上海で慰安所に関与した日本人・朝鮮人、ブラジルで俳句に自らを表現した日系移民、タイから日本に密航した労働者――。「個人と戦争との軋轢」や「人々の内にある帝国の痕跡」から現代史を逆照射する歴史への挑発。

目次

“世界のどこかで私を待っている人”へ――「日本学叢書」刊行にあたって 川村邦光

まえがき 杉原 達

第1部 「内地」と「外地」のはざま

第1章 内地と外地の間で――戦前沖縄の軍事的特色 荒川章二
 1 日本(ルビ:ヤマト)の「国民軍」と沖縄
 2 日清戦争から徴兵制の施行へ
 3 日露戦争・戦後軍拡と本部(ルビ:もとぶ)事件
 4 本土との制度的一体化時期の沖縄在郷兵と勤務演習事件

第2章 漢詩人の越境と帝国への「協力」――籾山衣洲の台湾体験を例として 許時嘉  
 1 「無用」というレトリックの多義性と批判性――寺門静軒と成島柳北の場合
 2 籾山衣洲の無用論の射程――「台北夢華録」を例として
 3 「戯れ」の可能と限界――「台湾風俗詩」の「台北竹枝詞(ルビ:ちくしし)」を例として

第3章 上海に見る遊郭と慰安所の関係性 宋連玉
 1 東洋茶館と領事館の性管理政策
 2 日清戦争・日露戦争と料理店の発展
 3 上海事変以降の慰安所と性風俗業の変容

第2部 「帝国」と「戦後」のはざま

第4章 『琉僑管理案』に見る沖縄出身者の歴史経験――経験のゆくえと場の関係性を中心に 冨永悠介
 1 『琉僑管理案』について――史料の性格と「口述調書」
 2 「捕虜」的状況からの脱出――奥平春雄・吉川仁之助の密航
 3 「体験」の「経験」化――奥平春雄の植民地台湾
 4 「台湾省琉球人民協会」の設立と喜友名嗣正(ルビ:きゆなつぐまさ)
 5 追認型就労規則と琉球人民協会――奥平春雄と吉川仁之助のその後
 6 台湾省職業訓導総隊への収容

第5章 二つの「大広島」――「軍都」と「平和都市」の貫戦史 西井麻里奈
 1 帝国日本の「大広島」――「大広島の建設」から広島港の建設まで
 2 昭和産業博覧会にみる地域と軍隊――満洲事変前後
 3 広島工業港の構想と挫折
 4 復興のなかの「大広島」
 5 広島復興大博覧会と「大広島」――昭和産業博覧会の想起をめぐって

第6章 戦争への想いを抱えて――ブラジル日系社会と戦後 ソアレス・モッタ・フェリッペ・アウグスト
 1 正史からこぼれ落ちた経験
 2 移民短歌と戦争への想い

第3部 「戦後」と「日本」のはざま

第7章 ミシンと「復興」――戦後沖縄の女性たちの生活圏 謝花直美
 1 HBT(アメリカ軍戦闘服)を着た知事――女子労働によるミシン業の出発
 2 青空市場の既製服――女性たちの新天地市場形成
 3 救済のミシン
 4 ミシンとジェンダー

第8章 「働人(ルビ:はたらきど)」平井正治における歴史との向き合い方――労働運動と民衆史と 杉原 達
 1 労働運動と民衆史と
 2 フィールドワークという方法
 3 歴史を往還する

第9章 外国人として日本で働くということ 崔博憲
 1 在日――戦後日本の「埒外」
 2 帝国からグローバリゼーションへ?
 3 密航出稼ぎ外国人労働者の後景――『無言の帰郷』をしたあるタイ人
 4 合法的な外国人単純労働者――『RENNAI忍耐』する研修生・技能実習生
 5 外国人労働者とは誰か

著者略歴

編著:杉原 達
1953年、京都市生まれ。大阪大学名誉教授。専攻は日本学・文化交流史。著書に『中国人強制連行』(岩波書店)、『越境する民』(新幹社)、『オリエントへの道』(藤原書店)、共編著に『岩波講座 アジア・太平洋戦争』(岩波書店)など。

ISBN:9784787234445
出版社:青弓社
判型:A5
ページ数:300ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2018年11月
発売日:2018年11月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ