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青弓社ライブラリー 78

「心の闇」と動機の語彙

犯罪報道の一九九〇年代

著:鈴木 智之

紙版

内容紹介

神戸連続児童殺傷事件など、1990年代の犯罪事件の新聞報道を追い、「心の闇」という言葉が犯罪や「犯人」と結び付くことで、私たちの社会に他者を排除するモードをもたらしたことを明らかにする。そのうえで、他者を理解し関係を再構築していく方途を示す。

目次

はじめに

第1章 「心」を「闇」として語るということ
 1 犯罪報道と秩序意識
 2 「動機の語彙論」という視点
 3 動機をめぐる問いの焦点としての犯罪
 4 「逸脱の文化」の消失と「心の闇」言説の浮上――一つの仮説的視点
 5 「動機規則」の適用――理解可能なものと不可能なものの一線を引く行為

第2章 「心の闇」の浮上――酒鬼薔薇事件(一九九七年)までの新聞報道から
 1 「闇」として語られ始めた「心」
 2 露出する闇――地下鉄サリン事件(一九九五年)
 3 解き明かされざる「闇」――酒鬼薔薇事件(一九九七年)
 4 「心の闇」の修辞学

第3章 「動機」が「わからない/わかる」と言うこと――「酒鬼薔薇聖斗」をめぐる大学生たちの語りから
 1 「心」は本当に「闇」のなかなのか?
 2 「「どうして」を教えて」――ある新聞記事に基づく〝問いかけ〟の試み
 3 動機がわかる/わからない、と語ること
 4 なぜ「動機はわからない」のか――動機規則の構成
 5 自己提示の方法としての〝わからない/わかる〟と言うこと
 6 代替的な説明言語の要求

第4章 「心の闇」の定着――一九九八―二〇〇〇年の新聞報道から
 1 リンクの広がりとイメージの定型化――一九九八―九九年
 2 母親たちの「心の闇」――音羽幼女殺害事件(一九九九年)
 3 「十七歳」の「心の闇」――二〇〇〇年の「酒鬼薔薇フォロワー」たち
 4 「心の闇」の行方――法改正の動きのなかで

第5章 対話としての動機の語り
 1 〈他者〉との遭遇
 2 「物語モード」と「論理―科学的モード」
 3 「起動原因」と「構築原因」
 4 疾患カテゴリーが動機理解に取って代わるときに起こること
 5 秩序意識の変容
 6 物語の力を呼び戻すために

おわりに

著者略歴

著:鈴木 智之
1962年、東京都生まれ。法政大学社会学部教授。専攻は理論社会学、文化社会学。著書に『村上春樹と物語の条件』(青弓社)、『眼の奥に突き立てられた言葉の銛』(晶文社)、共編著に『失われざる十年の記憶』(青弓社)、『ケアとサポートの社会学』、訳書にベルナール・ライール『複数的人間』、ジャック・デュボア『現実を語る小説家たち』(いずれも法政大学出版局)、アーサー・W・フランク『傷ついた物語の語り手』(ゆみる出版)、共訳書にジグムント・バウマン『個人化社会』(青弓社)など。

ISBN:9784787233660
出版社:青弓社
判型:4-6
ページ数:176ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2013年12月
発売日:2013年12月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNTP2