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日本の「ゲイ」とエイズ

コミュニティ・国家・アイデンティティ

著:新ヶ江 章友

紙版

内容紹介

差別や偏見にさらされ行政からも除外されていた男性同性愛者たちは独自のコミュニティを築き上げていたが、エイズ政策を通して国家行政に取り込まれ、社会的な地位を確立していった。その過程を聞き書きなどから検証し、生と性の葛藤と経験を抽出する。

目次

序章 「ゲイ」と国家の関係を問う

第1章 HIV/AIDS研究と人文・社会科学
 1 文化人類学のなかのHIV/AIDS
   HIV/AIDSと啓蒙――経験主義的認識パラダイムの視点
   リスク・グループの文化?
   HIV/AIDSの文化理論
 2 クィア人類学とHIV/AIDS
   国民国家とゲイ・アイデンティティ
   アイデンティティをめぐる戦略
 3 新たな研究の展開に向けて
 
第2章 日本におけるHIV/AIDSの言説と男性同性愛者
 1 奇病としての「AIDS」
 2 AIDSの実態把握に関する研究班
 3 日本のエイズ第一号患者
 4 エイズ・パニックと女性の表象
 
第3章 エイズ政策と日本人男性同性愛者の主体化
 1 HIV感染不安の身体
   IGA日本の場合――日本におけるゲイ・アクティビズムのはしり
   「薔薇族」の場合――不安に駆られながら隠れる人々
   「さぶ」の場合――HIV抗体検査を受検すべきか?
 2 新たな主体としての男性同性愛者
 3 日本と外国の男性同性愛者
 4 「ゲイ」による「ゲイ」のための研究
 
第4章 HIV感染予防をおこなう責任ある主体の生成
 1 歴史に刻まれた疫学調査
 2 オーストラリアと「ゲイ・コミュニティ」
   日本の疫学研究とオーストラリア
   HIV/AIDS研究における「ゲイ・コミュニティ」概念
   グローバル化する「ゲイ・コミュニティ」概念
 3 MSMを統治する
   MSMとは誰か
   MASH大阪におけるMSM
   カテゴリーをめぐる変遷
 4 「ゲイ」という主体と国家の承認
 5 日本における「ゲイ・コミュニティの誕生」
   MASH大阪の場合
   ANGEL LIFE NAGOYA(ALN)の場合
   Love Act Fukuoka(LAF)の場合
 
第5章 HIV感染リスクをめぐる認知と主体の形成
 1 研究者によるリスク認知
   リスクを定義する
   リスクを計算する
 2 MSMからゲイ男性へ
   MSMを動員する
   MSMの臨界点
   「ゲイ・コミュニティ」とインターネット
 3 男性同性愛者によるリスク認知
   不分明領域としてのリスク
   リスクと穢れ
   「決定」を委ねる
 4 HIV/AIDSとともに生きる希望
 
終章 自己変容の人類学に向けて

HIV/AIDSに関する年表

インタビュー対象者の概要

あとがき

著者略歴

著:新ヶ江 章友
1975年、佐賀県生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科現代文化・公共政策専攻修了。博士(学術)。カリフォルニア大学バークレー校人類学部客員研究員、お茶の水女子大学PD研究員、財団法人エイズ予防財団リサーチ・レジデント、名古屋市立大学看護学部特任講師を経て、現在、名古屋市立大学男女共同参画室プロジェクト推進員。専攻は、ジェンダー/セクシュアリティ研究、医療人類学、カルチュラル・スタディーズ。

ISBN:9784787233578
出版社:青弓社
判型:A5
ページ数:260ページ
定価:4000円(本体)
発行年月日:2013年07月
発売日:2013年07月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBS