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ホテル博物誌

著:富田 昭次

紙版

内容紹介

文化を生み出すホテルの魅力とは何か。華やかな非日常の空間=ホテルをめぐる史実やドラマを、文学・美術・事件・建築・食文化などをキーワードに、数多くの文献・史料や取材によって描き出す。絵はがきやパンフレットほかの貴重な写真・図版も多数所収。

目次

はじめに

第1章 文豪たちのホテル――密室で何が起きていたか
 森鴎外と築地精養軒ホテル
 高級ホテルが舞台の極上のメルヘン
 アメリカのホテルの一室で記された『武士道』
 仏領インドシナの港町のホテルでは
 電話交換手に着目して斬新さを表現
 路地に潜む異次元空間のホテルに誘われて
 作家の創造力を引き出す妖しげな空気
 未曾有の評判を呼んだ「ミヤコ・ホテル」
 リゾートに滞在して着想を得る作家も
 眠れない夜に三島由紀夫が頭に思い浮かべたこと
 帝国ホテルの客室に隠された秘密
 対照的だった松本清張と川端康成
 迷える女たちの避難所になる駅舎ホテル
 巨大化するホテル産業の陰で
 ホテルを棺の集積と例えた作家の思い
 ホテル文明を作り上げた人類の功績
 寂しさと温もりが錯綜するビジネスホテル

第2章 より豪華に、より大きく、より高く
 ホテルの開業を祝った華やかな宴
 皇帝の亡命先もまた豪華ホテル
 グランド・ホテル、宮殿ホテルの時代が到来
 異国情緒を売り物にしたフラグラーの城
 新興成り金の客と慇懃無礼な給仕頭
 豪華ステーション・ホテル建設競争
 最も人気がある出会いの場所
 豪華カジノ・リゾートという錬金術
 人気舞台劇の映画化『グランド・ホテル』
 ドイツの最高級ホテルを念頭に置いて
 貴婦人たちが闊歩した孔雀の小道
 すべてのホテルのなかで最も偉大なホテル
 最先端を走っていた世界最大のホテル
 豪華高層ホテルを建てる男の物語

第3章 ホテルを彩る日本美術家の活躍
 再現不可能と思われていた展覧会を開催
 日本の伝統美が溢れたホテル
 私立美術館の草分け、大倉集古館の開設
 美術界の衝突がきっかけとなって
 絶大な人気を誇った昭和の龍宮城
 美術愛好家の興味をそそる出来事
 喧騒から逃れてきた人を迎える赤石
 由緒ある名園の復活に賭けた事業家
 事業家の人柄が反映されるコレクション
 由緒ある場所に革新的な日本画
 民芸運動の理解者が生んだバー空間
 先輩後輩の関係で実現した巨大な壁画
 外資系ホテルが関心を示す日本美術
 ホテルをアトリエとして利用する
 岡本太郎の巨大な壁画の意外な来歴

第4章 歴史の目撃者、事件の当事者として
 政治はホテルのロビーから始まった?
 ホテルライフを初めて体験した日本人
 とても口にできない料理の数々
 恥ずかしいことの連続だった使節団
 アメリカ政治の象徴が焼き打ちに
 宮殿ホテルで決定された世界秩序
 徳冨蘆花はカイロのホテルで市民デモを目撃
 ホテル従業員が見た二・二六事件
 近代史から現代史までを象徴するホテル
 アメリカを震撼させた事件の震源地
 英ソ首脳会談で起きた盗聴事件
 韓国元大統領候補の拉致事件が発生
 暗殺や内紛で大きく揺れ動くホテルが映画に
 ゾルゲも滞在した革命家たちのホテル
 天安門事件をホテルで目撃した作家
 中国の新国家建設を目撃したホテル
 政情不安で騒然となるマニラでは
 テロ首謀者の攻撃目標となる高級ホテル

第5章 ホテルライフという優雅な暮らし
 芸術家はなぜホテル暮らしをするのか
 ホテルを転々としたユダヤ人作家
 庶民が暮らしたパリの下町のホテル
 高級リゾートで悶々とするフィッツジェラルド
 横浜のホテルにあった鞍馬天狗の部屋
 長期滞在者には定期乗車券を提供
 偏奇館前の山形ホテルにて
 恋の思い出と先進性でホテル住まい
 時代遅れにならないために
 田中絹代と藤原義江、そしてティルトマン
 “自堕落な”生活が送れるのが魅力
 意外な理由のホテル暮らし
 独身女性に愛されたホテル
 ストレスを抱えた女性教師の憩いの場
 アメリカ人に好まれた日本人経営の清潔なホテル
 ホテルは老齢者の安息の場
 それぞれのホテルライフ観

第6章 食通たちの理想郷
 忘れられない美味の国
 アメリカ人が感銘を受けた料理場
 ウェイターが歩く距離を測る料理長
 厨房は料理の出来栄えを左右する
 文豪をとりこにした夕景と料理
 ワイルが起こしたレストラン革命
 天井の扇が起こす緩やかな風
 アインシュタイン博士も感激
 秘話だった喜劇王のステーキ伝説
 希代の料理長エスコフィエの登場
 プルーストのリッツ、治郎八のリッツ
 大人の匂いが感じられたホテルの朝食
 ビーフ・カツレツと人生の先生
 百けん先生の華麗な宴会術
 天ぷら職人に日本の職人の原点が
 「バイキング」という呼び名は映画から

第7章 美しいメロディが流れるなかで
 オーケストラの音楽で女性客を誘う
 午後はホテルでお茶とダンスを
 ホテルのボールルーム・ディケイド
 時間帯で楽しみ方が分類されていたダンス
 日本では舞踏会は醜聞のもとになった
 帝国ホテルでのダンスが縁で結婚した詩人
 音楽がハワイへの旅情をかきたてた
 接収ホテルでのちの著名人が活躍
 ホテルのディナーショー事始め
 レコード・コンサートから歌声喫茶まで
 人気者は老人たちのジャズ楽団
 ビートルズと一緒にテレビを見た従業員
 嘘のような本当の話が残るホテル
 積極的なメセナ活動でホテルの品格を磨く

参考文献一覧

ホテルは文化のインキュベーター――あとがきに代えて

著者略歴

著:富田 昭次
1954年、東京都生まれ。立教大学卒業。ホテル専門誌の編集記者、編集長を経て、ホテル・旅行作家の活動に入る。著書に『ホテルと日本近代』『絵はがきで見る日本近代』『ホテルの社会史』『旅の風俗史』(いずれも青弓社)、『「極み」のホテル』『東京のホテル』『おひとりホテルの愉しみ』『サービスはホテルに学べ』(いずれも光文社)、『東京ヒルトンホテル物語』『最上のホテル その隠された秘密』『鯨を釣る男』『キャピトル東急ホテル物語』(いずれもオータパブリケイションズ)、『ノスタルジック・ホテル物語』(平凡社)、『日本ホテル協会 百年の歩み』本編執筆(日本ホテル協会)、『恋愛ホテル』監修(にじゅうに)など。

ISBN:9784787233370
出版社:青弓社
判型:4-6
ページ数:282ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2012年04月
発売日:2012年04月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNSG