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歴史と責任

「慰安婦」問題と一九九〇年代

編著:金 富子
編著:中野 敏男

紙版

内容紹介

冷戦が終結し、日本軍「慰安婦」問題が鋭く問われた1990年代、それは世界中で迫害と暴力の歴史が見直され、その責任が問われだした時代だった。この時代を広い文脈から捉え直し、正義と真実の立場から新たな和解への道を切り開く行動提起の書。

目次

はじめに――「慰安婦」問題と一九九〇年代 金 富子

序章 日本軍「慰安婦」問題と歴史への責任――本書の認識と課題
 0 日本軍「慰安婦」問題と歴史への責任――本書の認識と課題 中野敏男

第1章 「慰安婦」問題と日本の過去克服――問われた課題
 1 「慰安婦」被害者の「尊厳の回復」とは何か?――女性国際戦犯法廷が求めた正義と「国民基金」 西野瑠美子
 2 国民基金と被害者の声 鄭鉉栢[中野宣子訳]
 3 「日本軍戦時性暴力被害」訴訟から見えてくること――裁判はどこまで「慰安婦」問題を裁けているか? 大川正彦
 4 戦後責任と日本人の「主体」 中野敏男
 5 「慰安婦」問題と脱植民地主義――歴史修正主義的な「和解」への抵抗 金 富子
 コラム 戦犯裁判と「慰安婦」問題史料 林 博史
 コラム ナヌムの家の現在と未来 村山一兵

第2章 世界の過去克服への取り組みから
 6 韓国現代史と過去清算の展開 韓洪九[金栄訳]
 7 台湾における未完の脱植民地化 駒込 武
 8 南部アフリカに「真実和解委員会」が残したこと――植民地主義の過去をめぐって 永原陽子
 9 紛争下の性的暴力と国際法の到達点 東澤 靖
 10 ドイツの過去克服 矢野 久
 11 植民地支配の歴史の再審――フランスの「過去の克服」の現在 菊池恵介
 12 批判的フェミニズムと日本軍性奴隷制――アジア/アメリカからみる女性の人権レジームの陥穽 米山リサ
 コラム 「朝鮮人戦犯」――誰が何を裁かれたのか 内海愛子
 コラム 中国人強制連行 杉原 達
 コラム 日系アメリカ人への戦後補償 タカシ・フジタニ

第3章 何がなお問われているのか
 13 脱冷戦と植民地支配責任の追及――続・植民地支配責任を定立するために 板垣竜太
 14 帰国事業と日本の戦後責任 テッサ・モーリス=スズキ[大川正彦訳]
 15 在日朝鮮人弾圧から見る日本の植民地主義と軍事化 金栄
 16 韓国の歴史論争とナショナリズムの克服――「親日」と「反日」の争点化を中心に 河棕文
 17 アメリカ議会下院と「慰安婦」問題 荒井信一
 18 植民地女性と脱帝国のフェミニズム 宋連玉
 コラム 沖縄の「集団自決」と教科書検定 宮城晴美
 コラム ハンセン病資料館設立の経緯とその意義 金貴粉
 コラム 「慰安婦」問題を記録し、記憶するために――アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」の試み 池田恵理子

おわりに 金 富子/中野敏男

資料 ブックガイド
   年表
   日本で行われている戦時性暴力被害訴訟一覧(二〇〇八年三月十一日付)
   河野官房長官談話
   女性国際戦犯法廷・最終判決文「勧告」
   アメリカ下院「慰安婦」謝罪要求決議
   欧州議会「慰安婦」謝罪要求決議
   ダーバン二〇〇一宣言・行動計画(抄)

著者略歴

編著:金 富子
1958年生まれ。ハンシン大学校(韓国)教員。専攻はジェンダー史・ジェンダー論、植民地教育史、韓日文化論。著書に『植民地期朝鮮の教育とジェンダー』(世織書房、第一回女性史学賞受賞)、共編著に『裁かれた戦時性暴力』(白澤社)、『消された裁き』(凱風社)など。◆ひと言:日本のジェンダー史・ジェンダー論研究が、内なる植民地主義に無自覚なまま(だからこそ)、歴史修正主義と手をつなぎ始めている現状に危機感を覚えている。
編著:中野 敏男
1950年生まれ。東京外国語大学教員。専攻は社会理論、社会思想。著書に『大塚久雄と丸山眞男』(青土社)、『近代法システムと批判』(弘文堂)、『マックス・ウェーバーと現代』(三一書房)、共編著に『沖縄の占領と日本の復興』(青弓社)など。◆ひと言:NHK番組改竄事件を発端として作られた「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」の事務局に参加する一方で、「継続する植民地主義」という関心を持ちながら、国際共同研究を組織して「戦後」を歴史的・思想的に問い直す作業を続けている。

ISBN:9784787232861
出版社:青弓社
判型:A5
ページ数:432ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2008年06月
発売日:2008年06月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS