にっぽん心中考
著:佐藤 清彦
内容紹介
近松の時代から人はなぜ心中に惹かれるのか? 至純の愛の果てに、愛を試すために、迷信に翻弄されて、虚無に包まれて……太宰治、有島武郎から坂田山心中、天城山心中まで、死を賭した凄絶な愛情劇の足跡を丹念に追跡・検証する。
目次
第一章 小説なればこその『失楽園』
1 「小さな死」ばかりを愉しむ
2 三十代、教授夫人は危ういか
3 ちらと見える交合心中の影
第二章 「天国に結ぶ恋」の世界
1 “清い恋”に異論もある坂田山心中
2 至純の愛を語る天城山心中の遺簡
3 異地時差が哀しい精進湖心中
第三章 “伝説”の色あせる舞台裏
1 近松も「恋では死なぬ」の本音
2 明治の新型は兵士と娼妓組
第四章 大正自由主義の“先駆者”たち
1 “女として”伯爵家若夫人の一石
2 愛は買わない有島武郎の複雑な愛
3 生活苦と愛と死へのあこがれと
第五章 空前──昭和戦前は情死ラッシュ
1 死を軽んずる“時代病”蔓延
2 有名人子弟は情死をめざす
3 なぜに目立つか慶応ボーイ
4 モダニズム芸術家たちの閃光
5 夢破れた左翼青年の結着
6 名誉では癒えぬ傷痍軍人の傷
第六章 戦後の混乱と繁栄を映して
1 虚構の愛に溺れた太宰治の死
2 五重塔を道連れにした無謀ペア
3 裁判官をも巻き込む新しい波
第七章 さまざまなるパラドックス
1 憎むから死に、愛するから止める
2 嘘から出たまこともある
3 死ぬふりをして愛のテスト
4 袖振り合うも情死の縁
第八章 情死はときにミステリアス
1 得恋者なのになぜ死にたがる
2 意外なペアの平凡な真実
3 愛を偽装した“殺人者”たち
第九章 人生最後のバラエティー
1 キス心中、ほんとにできるか
2 二人旅、正装と異装の理由
3 迷信が一九〇六年生まれを直撃
4 小説よりも奇な十三話
第十章 にっぽん大情死時代の終幕
1 最古の情死衣通姫の「なぜ」
2 「口紅の碑」のロマンの陰に
3 タブーなき社会の共同自殺
参考にした主な本
あとがき
ISBN:9784787231574
。出版社:青弓社
。判型:4-6
。ページ数:256ページ
。定価:2000円(本体)
。発行年月日:1998年11月
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF。