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越境する近代 6

精神病の日本近代

憑く心身から病む心身へ

著:兵頭 晶子

紙版

内容紹介

いつから、私たちに狐は憑かなくなったのか。憑かれるという知覚を否定され、精神を病む経験を刻印された心身は、さまざまな監視・排除を受けて医療観察法に囚われていく。民俗や宗教から司法、社会事業までをも貫く人間像の転換を、多くの史料から紡ぎ出す。

目次

はじめに――ある忘却の歴史から

序章 「憑かない心身」からの問い
 1 精神病の日本近代
 2 狐憑きという視座
 3 「精神病とはそもそも何なのか」
 4 狐憑きが当たり前だった世界
 5 狐が神となる瞬間
 6 狐憑きが再定義されるということ
 7 「憑かない心身」の考古学へ

第1章 精神医学史はなぜ〈もの憑き〉を語るのか――憑く心身との邂逅
 1 精神病の歴史を書くということ
 2 金子準二の「日本精神病史」――「精神病観」と「怪異」
 3 呉秀三「磯辺偶渉」――神意の発現としての「怪異」
 4 「神意」から「心意」へ――精神病史の始点
 5 〈もの憑き〉という世界観

第2章 〈もの憑き〉は医の領域に属するか――日本近世の問い
 1 〈もの憑き〉という問題
 2 医事か否かという問い
 3 儒医という自己規定
 4 「淫祀」という認識の登場と、新たな対処法
 5 日本近世からの問い

第3章 〈もの憑き〉の再定義――病む心身が構築される過程
 1 近代精神病学の樹立と〈もの憑き〉
 2 〈もの憑き〉の現場から――〈繋がり〉の異変の修復
 3 精神病としての再定義――〈存在〉を病むということ
 4 〈もの憑き〉と近代社会――「個人」が形成される時代
 5 新たな心身への問い

第4章 〈もの憑き〉をめぐる世界観の剥奪――「憑物」問題の成立
 1 「憑物筋」と「患者筋」
 2 民間治療場をめぐって
 3 「精神病者」が見出される場所
 4 「患者筋」の発見
 5 定住社会への併呑と「憑物筋」
 6 民間治療場のゆくえ

第5章 憑く心身か、病む心身か――大本と「変態心理」の相剋
 1 〈もの憑き〉への存命の賭け
 2 民衆宗教の現場で
 3 心のありかをめぐって――精神の再定義と潜在意識
 4 「精神病」を癒すこと――精神治療の可能性
 5 心の内奥への眼差し――「変態心理」における潜在意識
 6 大本の憑霊をめぐる論争――潜在意識という論拠の変質
 7 大本の精神鑑定――責任能力と潜在意識
 8 不可視の異常へ

第6章 病む心身の主題化――新刑法と精神病者監護法・精神病院法
 1 犯罪と病む心身
 2 新たな責任概念と精神病学――〈存在〉に固定された危険性
 3 「中間者」概念の登場と精神病者監護法の変質
 4 入江事件の衝撃――精神病院法への前哨
 5 精神病院法をめぐる議論とその実施――司法の外での拘束
 6 「第二の入江三郎」の死――永続的な監禁の果てに
 7 〈存在〉を封じること

第7章 未然の危険をめぐって――社会問題の「予防」と病む心身
 1 「予防」という権力
 2 危険の予知
 3 危険を未然に防ぐこと――断種・新たな監獄・未発の病
 4 非監置病者の危険と収容――監護法を超えて
 5 監置の現場から――危険の「予防」と非監置病者の包囲網
 6 架空の危険と精神病

終章 精神病の日本近代
 1 〈もの憑き〉の世界観と憑く心身
 2 病む心身の再定義と「精神」の潮流
 3 〈存在〉の時間幅と病む心身の危険性
 4 民間治療場の近代
 5 医療観察法という結実
 6 医療観察法の問題点
 7 いま、精神病を語るために

あとがき

索引

著者略歴

著:兵頭 晶子
1978年、兵庫県生まれ。立命館大学文学部卒業。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、日本学術振興会特別研究員、学習院大学非常勤講師、大阪大学非常勤講師。専攻は歴史学。共著に『戦死者のゆくえ』『憑依の近代とポリティクス』(ともに青弓社)、『時代がつくる「狂気」』(朝日新聞社)。論文「大正期の「精神」概念」(「宗教研究」第344号)で、第1回日本思想史学会奨励賞を受賞。

ISBN:9784787220325
出版社:青弓社
判型:A5
ページ数:324ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2008年11月
発売日:2008年11月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MJ