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量子力学選書

相対論的量子力学

著:川村 嘉春

紙版

内容紹介

 「相対論的量子力学」とは「特殊相対性理論」と「量子力学」が融合された理論で、1928年に提案されたディラック方程式を基礎方程式とする。したがって、「特殊相対性理論」と「量子力学」を学んだ方が本書の主な対象であるが、これらに関する基本的な概念と知識を付録に記載したので、大学の下級生でも意欲のある学生ならば、自主学習や自主ゼミを通して読みこなせる構成になっている。
 第 I 部では、相対論的量子力学の構造と特徴について学ぶ。具体的には、ディラック方程式を導出し、そのローレンツ変換性、解の性質、非相対論的極限、水素原子のエネルギー準位、負エネルギー解の解釈について考察する。
 第 II 部では、相対論的量子力学の検証について学ぶ。具体的には、電子・陽電子などの荷電粒子と光子の絡んださまざまな過程(クーロンポテンシャルによる散乱、コンプトン散乱、電子・電子散乱、電子・陽電子散乱)に関する散乱断面積を導出し、高次の量子補正について考察する。

目次

第 I 部 相対論的量子力学の構造

1.ディラック方程式の導出 (pdfファイル)
 1.1 相対論と量子論
 1.2 クライン‐ゴルドン方程式
 1.3 ディラック方程式
 1.4 パウリ方程式の導出

2.ディラック方程式のローレンツ共変性
 2.1 ローレンツ共変性
 2.2 ローレンツ変換の具体例
 2.3 空間反転

3.γ行列に関する基本定理,カイラル表示
 3.1 γ行列に関する基本定理
 3.2 双一次形式のローレンツ共変量
 3.3 カイラル表示

4.ディラック方程式の解
 4.1 ディラック方程式の再導出
 4.2 エネルギーとスピンに関する射影演算子
 4.3 自由粒子解と波束の物理的意味
 4.4 クラインのパラドックス

5.ディラック方程式の非相対論的極限
 5.1 自由粒子に関する谷‐フォルディ‐ボートホイゼン変換
 5.2 電磁場の存在下での谷‐フォルディ‐ボートホイゼン変換

6.水素原子
 6.1 水素原子のエネルギー準位
 6.2 実験値との比較

7.空孔理論
 7.1 ディラックの解釈
 7.2 荷電共役変換
 7.3 空間反転と時間反転
 7.4 CP変換

第 II 部 相対論的量子力学の検証

8.伝搬理論 -非相対論的電子-
 8.1 伝搬関数
 8.2 摂動論

9.伝搬理論 -相対論的電子-
 9.1 電子・陽電子が絡む過程
 9.2 電子の伝搬関数
 9.3 摂動論

10.因果律,相対論的共変性
 10.1 クライン‐ゴルドン粒子の伝搬
 10.2 非相対論的摂動論と伝搬関数
 10.3 多時間理論

11.クーロン散乱
 11.1 ラザフォードの散乱公式
 11.2 クーロンポテンシャルによる電子の散乱
 11.3 クーロンポテンシャルによる陽電子の散乱
 11.4 γ行列に関するさまざまな公式と定理

12.コンプトン散乱
 12.1 コンプトン散乱
 12.2 電子・陽電子の対消滅

13.電子・電子散乱と電子・陽電子散乱
 13.1 電子・電子散乱
 13.2 電子・陽電子散乱
 13.3 電磁場に関する補足

14.高次補正 -その1-
 14.1 ファインマン則
 14.2 電子・陽電子散乱における高次補正
 14.3 真空偏極
 14.4 電子の自己エネルギー
 14.5 頂点の補正

15.高次補正 -その2-
 15.1 制動放射
 15.2 ラムシフト
 15.3 今後の展望

付録
A.国際単位系
B.特殊相対性理論
C.量子力学
D.ポアンカレ群
E.スピノル解析
F.さまざまな時空におけるスピノル
G.正則化
H.表記法,公式集

著者略歴

著:川村 嘉春
信州大学教授、学術博士。1961年 滋賀県生まれ。名古屋大学理学部卒業、金沢大学大学院自然科学研究科博士課程修了。信州大学助手、同 助教授を経て現職。専門は素粒子物理学。主な著書に『理解する力学』(裳華房)などがある。

ISBN:9784785325107
出版社:裳華房
判型:A5
ページ数:368ページ
定価:4600円(本体)
発行年月日:2012年10月
発売日:2012年10月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PH