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第4版 Freshman化学

著:浅野 努
著:上野正勝
著:大賀 恭

紙版

内容紹介

学生の皆さんへ
 この教科書は高校で化学を十分学習せずに大学に入学した人でも,講義の後で復習をするといったある程度の努力をすれば,理工系学部の卒業生として必要な化学の基礎知識と科学的考え方が身に付くようにと考えて執筆しました.
 環境問題やエネルギー問題といった私たちの生存に大きな影響を及ぼす問題の解決には,正しい科学的情報に基づいた論理的思考によって政治的判断を下すことが重要であるのは言うまでもありません.政治的判断は政治家が下しますが,その判断を左右しているのは世論です.したがって,多くの国民が正しい科学的知識に基づいて論理的に考えることが,今後ますます必要になります.また,このような態度は,職場においても日々の生活の場においても,個々の問題を解決するために必要です.そのような態度を身につける手助けを,この教科書が化学の学びの場で提供できれば,それに勝る喜びはありません.


先生方へ
 この教科書は,理工系の学部で開講される専門基礎科目としての「化学」を念頭において執筆した.
 よく言われることであるが,理工系学部であっても新入生全員が高等学校で「化学I」を履修してその内容を理解していることを期待はできない.また「化学II」を履修したか,センター試験や個別学力検査で化学を選択したかによっても化学の基礎知識に大きな開きがある.このように多様な学生にどのような「化学」を教えるべきかについては意見の分かれるところかも知れないが,本書では「化学I」で扱われている“物質の構成”“物質の変化”および「化学II」で扱われる“物質の構造と状態”“化学反応と平衡”に相当する分野を中心に,高校レベルから始めて大学の専門基礎科目と考えられるレベルに至るまでを記述した.(週90分の講義15回/学期)×(2 学期) を念頭に置いているが,たとえば結晶構造のように,著者の判断から極めて限られた記述にとどめたトピックもあれば,逆に詳し過ぎると感じられる部分もあるかも知れない.ご意見をお寄せ頂ければ幸いである.平衡論における囲み記事は専門科目のレベルと考えられるが,余裕のある学生にはできるだけ正確な知識を身につけてもらいたいと考えてのものである.
 物理量の単位はSI 単位に統一した.

目次

第1章 化学の基本
1.1 物質の分類
1.2 巨視的観点と微視的観点
1.3 元素の名称と元素記号
1.4 元素記号の使い方
1.5 原子番号と同位元素
1.6 原子量の決定

第2章 単位と測定値の扱い
2.1 物理量と次元
2.2 SI 単位
2.3 基礎物理定数
2.4 指数表示とSI 接頭語
2.5 測定値の精密さと有効数字
2.6 測定値を含む計算

第3章 原子の構造と性質
3.1 電子の発見
3.2 核をもつ原子
3.3 プロトンの発見
3.4 水素原子から出る光
3.5 ボーアのモデル
3.6 電子の波動性
3.7 不確定性原理
3.8 軌道関数と電子配置
3.9 周期表と元素の分類
3.10 ルイス構造

第4章 原子から分子へ
4.1 ルイスの考えた共有結合
4.2 共有結合1:σ(シグマ)結合
4.3 分子の形と軌道の混成
4.4 共有結合2:π(パイ)結合
4.5 ベンゼンの構造と共鳴
4.6 配位結合
4.7 電子対反発則
4.8 極性分子と原子の電気陰性度
4.9 分散力
4.10 水素結合

第5章 いろいろな結晶
5.1 固体の分類
5.2 イオン結晶
5.3 電子配置の安定性
5.4 金属結合
5.5 共有結合結晶
5.6 半金属と半導体

第6章 分子の世界1:相図と気体
6.1 相図
6.2 気体の特徴
6.3 実在気体の状態方程式

第7章 分子の世界2:固体と液体
7.1 分子がつくる固体の特徴
7.2 液体
7.3 溶液と濃度単位
7.4 溶液の蒸気圧とラウールの法則
7.5 理想溶液の沸点と分別蒸留
7.6 非理想溶液と共沸混合物
7.7 揮発性の溶質:ヘンリーの法則
7.8 沸点上昇と凝固点降下
7.9 浸透圧
7.10 液体の微視的構造
7.11 氷と水の構造

第8章 エネルギーとエントロピー
8.1 エネルギーと熱力学第一法則
8.2 内部エネルギー
8.3 エンタルピー
8.4 標準生成エンタルピー
8.5 変化の方向を決めるもう1 つの因子:エントロピー
8.6 熱力学第三法則とエントロピーの絶対値
8.7 ギブズエネルギー
8.8 ギブズエネルギー変化の温度依存性

第9章 化学平衡の原理
9.1 動的平衡
9.2 平衡定数
9.3 ギブズエネルギーと平衡定数
9.4 平衡定数の温度依存性
9.5 ル・シャトリエの原理

第10章 酸と塩基
10.1 酸と塩基の定義
10.2 水の自己イオン化とpH
10.3 強い酸と弱い酸-酸解離定数
10.4 強い塩基と弱い塩基
10.5 中和反応と酸塩基滴定
10.6 加水分解と弱酸あるいは弱塩基の滴定
10.7 pH 指示薬
10.8 緩衝溶液

第11章 酸化と還元
11.1 酸化と還元の定義
11.2 酸化数
11.3 酸化剤,還元剤の強さの定量化
11.4 標準電極電位
11.5 標準状態にない電池の起電力:ネルンストの式
11.6 濃淡電池と溶解度積

第12章 反応の速度
12.1 反応のエネルギープロフィル
12.2 反応速度
12.3 反応速度式と反応機構
12.4 速度定数の温度依存性
12.5 触媒の働き

索 引

著者略歴

著:浅野 努
大分大学名誉教授
著:上野正勝
同志社大学名誉教授
著:大賀 恭
大分大学理工学部教授

ISBN:9784780610345
出版社:学術図書出版社
判型:B5
ページ数:256ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2022年10月
発売日:2022年11月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PN