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物理学入門

第3版

著:原 康夫

紙版

内容紹介

物理学は自然科学の中でもっとも基礎的な学問のひとつなので,高度の科学技術に基づく現代社会で活躍するには,物理学の基礎知識および物理学的なものの見方と考え方を身につけることが不可欠である.本書は,高校で物理を選択しなかった学生諸君および物理を履修したが理解が不十分な学生諸君のために,内容を精選し,表現を工夫した,物理学の教科書である.
 数式の使用を最小限にして,グラフ,図,日常体験する例などを多用して物理学を直観的に理解できるよう最大限の努力を払い,物理学を理解するとともに,日常体験する身のまわりの現象を科学的に考え,理解する能力と数理的処理能力を養えるよう配慮した.
 本書の特徴は,
(1) 各章の最初に各章のあらましを説明し,各節の最初にその節の学習目標を具体的に示した.そして,各章のおわりにその章で学んだ重要事項を示し,その章の学習目標が達成されたかどうかを確認できるよう配慮した.
(2) 物理現象を特徴づける概念である物理量および物理量の関係を表す法則を丁寧に説明した.
(3) 例と例題を適切に使って,物理量の理解および物理法則の適用法の理解を助けるようにした.
(4) 三角関数,ラジアン,ベクトル積,微積分の知識は前提とせず,グラフ表現を多用し,数学的な困難のために物理学の理解が妨げられないように配慮した.
(5) 各章の最後に多くの演習問題(Aは比較的やさしく,Bは比較的難しい)と巻末にその詳しい解答を付して,各章の理解が深まるようにした,
(6) 臨床工学技士国家試験の過去問から物理学の問題を借用し,どのような形で物理学の基礎知識が問われているのかを知ることができるよう配慮した.
ことなどである.
 本書を使用して,物理学の学習に真剣に取り組めば,技術者を志す学生諸君が将来必要になる物理学の基礎知識およびその応用に必要な物理学的なものの見方と考え方を身につけられるはずである.
 この教科書による学習では,まずテキストを繰り返し読んで,内容を自分が理解できる言葉に翻訳した上で理解し,物理学の基礎知識と物理学の手法を身に付けてほしい.演習問題を解くことも重要である.疑問が生じた場合には,疑問点を明確にし,良く考え,それでもわからなければ先生や友人に質問して疑問を解決する習慣をつけてほしい.

 本書の印刷はフルカラーであり,写真を大幅に取り入れた.高校までカラー印刷の教科書を使用してきた学生諸君にとってフルカラーの紙面は,親しみやすく,取り付きやすいのではなかろうか.
 本書では,内容をわかり易くするために,次のように色を使用した.
 1. 位置,力,速度,加速度などをそれぞれ別の色の矢印で表す.
 2. 重要な結論や定義などは青色で印刷する.
 3. 重要な式は黄色で印刷する.
 このような色の利用で,めりはりの効いた,学びやすい紙面になったとすれば幸いである.
 また,読者が親しみをもてるよう多くのカラー写真を掲載した.

目次

第0章 はじめに
0.1 物理学とは――物理学の学び方
0.2 物理量は「数値」×「単位」という形をしている
0.3 国際単位系
0.4 大きな量と小さな量の表し方(指数,接頭語)
0.5 有効数字
0.6 次元

第1章 運 動
1.1 速さ
1.2 直線運動をする物体の位置と速度
1.3 直線運動をする物体の速度と変位
1.4 直線運動をする物体の加速度
1.5 等加速度直線運動
1.6 平面運動の速度と加速度
   演習問題1

第2章 力と運動
2.1 ニュートンの運動の法則
2.2 運動量と力積
2.3 直線運動での運動の法則
2.4 地球の重力
2.5 力の合成と分解
2.6 運動方程式の解き方の例
2.7 摩擦力
2.8 力のつり合い――剛体に作用する力のつり合い条件1
   演習問題2

第3章 仕事とエネルギー
3.1 力と仕事
3.2 仕事率(パワー)
3.3 仕事と運動エネルギーの関係
3.4 重力のする仕事と重力ポテンシャルエネルギー
3.5 力学的エネルギー保存則
3.6 エネルギー保存則
   演習問題3

第4章 周期運動
4.1 等速円運動をする物体の速度,加速度と運動方程式
4.2 人工衛星
4.3 等速円運動をする物体の位置,速度,加速度
4.4 単振動
4.5 単振り子
4.6 減衰振動と強制振動
   演習問題4

第5章 連続体の力学
5.1 圧力
5.2 力と変形
5.3 流体の力学
   演習問題5

第6章 波 動
6.1 波の性質1
6.2 波の性質2
6.3 音波
6.4 光波
   演習問題6

第7章 熱と温度
7.1 熱と温度
7.2 熱の移動
7.3 理想気体の状態方程式
7.4 熱力学の第1法則
7.5 熱力学の第2法則
7.6 熱機関
   演習問題7

第8章 電荷と電流
8.1 電荷と電荷保存則
8.2 電流――導体と絶縁体
8.3 クーロンの法則
8.4 電場
8.5 電位
8.6 導体と電場
8.7 キャパシター
8.8 回路と起電力
8.9 オームの法則
8.10 キルヒホッフの法則
8.11 電源の仕事率と電流の仕事率
   演習問題8

第9章 電磁気学
9.1 磁石と磁場
9.2 電流のつくる磁場
9.3 運動する荷電粒子に作用する磁気力と電流に作用する磁気力
9.4 電磁誘導
9.5 交流†
9.6 電磁波
   演習問題9

第10章 原子物理学
10.1 原子の構造
10.2 光の二重性――光は波動性と粒子性の両方を示す
10.3 電子の二重性
10.4 原子の定常状態と光の線スペクトル
10.5 元素の周期律
10.6 金属,絶縁体,半導体
10.7 半導体の応用
10.8 レーザー
   演習問題10

第11章 原子核
11.1 原子核の構成
11.2 核エネルギー
11.3 原子核の崩壊と放射能
11.4 素粒子
   演習問題11

コラム
 ニュートン以前の物理学
 人間は筋力で1日にどのくらいの仕事ができるか
 遠心力
 津波
 電磁波による通信
 日本のエネルギー消費量
 静電気
 アインシュタインの奇跡の年

付録 数学公式集
問,演習問題の解答
PhotoCredits
索 引

著者略歴

著:原 康夫
原 康夫
1934年 神奈川県鎌倉にて出生
1957年 東京大学理学部物理学科卒業
1962年 東京大学大学院修了(理学博士)
1962年 東京教育大学理学部助手
1966年 東京教育大学理学部助教授
1975年 筑波大学物理学系教授
1997年 帝京平成大学教授
2004年 工学院大学エクステンションセンター客員教授
この間,カリフォルニア工科大学研究員,
シカゴ大学研究員,プリンストン高級研究所員.
1977年 仁科記念賞受賞
現在 筑波大学名誉教授

ISBN:9784780605006
出版社:学術図書出版社
判型:B5
ページ数:280ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2015年10月
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PH