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自然科学の基礎としての 物理学

著:原 康夫

紙版

内容紹介

大学で理系の幅広い分野で学ぶ際の基礎になる物理学として,力と運動,エネルギーと熱,波動,電磁気,原子,原子核,宇宙などの幅広い対象の物理学を基礎から平易に記述した.
 高校で物理をあまり学習しなかった読者や学習したが十分に理解できなかった読者も念頭に,物理学では自然現象をこういう見方で把握して,まず定性的に理解し,その上でこのように定量的に取り扱うのだということが理解できるよう工夫し,努力した.高校物理を十分に学んだと考えている読者も,新しい見方で物理学を理解できると期待する.
 物理学が難しいといわれる大きな理由の1つは,いろいろな記号で表された多くの変数の出てくる式に出会うことです.これは自然現象を数量的に取り扱う物理学では,数式を使うと自然法則を簡単明瞭に表せるためです.本書では記号で表された数式の横に日本語の式も記載して,数式は日本語で表した文章の簡潔な表記であることを体験できるようにした.
 また,数式の使用を最小限にして,グラフ,図,日常体験する例などを多く使用して,物理学を直観的に理解できるよう最大限の努力を払い,物理学を理解するとともに,日常体験する身のまわりの現象を科学的に考え理解する能力と数理的処理能力を養えるよう配慮した.
 物理学がなじめないといわれるもう1つの理由は,数式を解くことになじめないことです.そこで,
(1) 数式の物理的な意味を説明するとともに,数式を解く際には,計算の途中を省略しない.
(2) 微分計算と積分計算は原則として行わないが,導関数の記号と定積分の記号は文章で説明された計算手順を表す記号として使用する.
(3) 微分と積分の平易で簡潔な解説および導関数(微分)を含む方程式である微分方程式としての放物運動と単振動の運動方程式の丁寧な解き方を付録に示す.
(4) ラジアンと三角関数と指数関数は本文では使用せず,ラジアンと三角関数の簡潔な解説を付録Cで行う.
などの方針で執筆した.
 上記以外の本書の特徴は,
(1) 各節の最初にその節の学習目標を具体的に示した.
(2) 物理現象を特徴づける概念である物理量および物理量の関係を表す法則を丁寧に説明した.
(3) 例と例題を使って,物理量の理解および物理法則の適用法の理解を助けるようにした.
(4) 多くの演習問題とその詳しい解答を付して,理解が深まるようにした.
(5) 親しみやすく,取り付きやすいように,フルカラー印刷にした.
(6) 内容をわかり易くするために,次のように色を使用した.
 1.位置,力,速度,加速度などを別の色の矢印で表す.
 2.重要な結論や定義などは青色で印刷する.
 3.重要な式は黄色で印刷する.
 (7) 多くのカラー写真を掲載した.
 物理学は自然科学の基礎的な学問なので,高度の科学技術に基づく現代社会で活躍するには,物理学の基礎知識および物理学的なものの見方と考え方を身につけることが不可欠です.

目次

第0章 物理学とは
0.1 物理学とは
0.2 空間と時間
0.3 物理量と物理法則
0.4 単位
0.5 測定値の不確かさと有効数字

第1章 力
1.1 力とその性質
1.2 万有引力と重力
1.3 摩擦力と抵抗
1.4 力のつり合い
1.5 水圧,気圧
   演習問題1

第2章 力と運動
2.1 速度と加速度
2.2 運動の第1法則(慣性の法則)
2.3 運動の第2法則(運動の法則)
2.4 重力と放物運動
2.5 等速円運動
2.6 単振動―単振り子
2.7 運動量と力積
2.8 中心力と角運動量保存則
   演習問題2

第3章 仕事とエネルギー
3.1 仕事
3.2 仕事率(パワー)
3.3 仕事と運動エネルギーの関係
3.4 重力による位置エネルギーと重力のする仕事
3.5 力学的エネルギー保存則
3.6 流体の力学的エネルギー保存則―ベルヌーイの法則
   演習問題3

第4章 熱と温度
4.1 温度と内部エネルギー
4.2 熱力学の第1法則―熱と仕事が関与する場合のエネルギー保存則
4.3 エネルギーの変換と保存
4.4 熱力学の第2法則
4.5 熱機関とその効率
4.6 熱放射
   演習問題4

第5章 波
5.1 波の性質
5.2 音波
5.3 光波
   演習問題5

第6章 電荷と電流
6.1 物質の構造と電荷の保存則
6.2 クーロンの法則
6.3 電場
6.4 電流
6.5 電位
6.6 導体と電場
6.7 回路と起電力
6.8 オームの法則
6.9 電源のパワーと電流の仕事率
   演習問題6

第7章 電磁気学
7.1 磁石と磁場
7.2 電流のつくる磁場
7.3 電流に働く磁気力
7.4 電磁誘導
7.5 マクスウェルの法則
7.6 電磁波
   演習問題7

第8章 原子物理学
8.1 原子と原子模型
8.2 光は波か粒子か
8.3 原子の放射する線スペクトルと原子の定常状態
8.4 電子は粒子か波か
8.5 不確定性関係
8.6 元素の周期律
   演習問題8

第9章 原子核と素粒子
9.1 原子核の構造
9.2 原子核の崩壊と放射線
9.3 核エネルギー
9.4 素粒子
   演習問題9

第10章 宇宙
10.1 恒星と銀河
10.2 ビッグバン宇宙論
   演習問題10

付録A ベクトルの公式
付録B 微分と積分
付録C 単振動の運動方程式の解
問,演習問題の答

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索引

コラム
 アルキメデス
 遠心力
 カオス

著者略歴

著:原 康夫
原 康夫
1934年 神奈川県鎌倉にて出生
1957年 東京大学理学部物理学科卒業
1962年 東京大学大学院修了(理学博士)
1962年 東京教育大学理学部助手
1966年 東京教育大学理学部助教授
1975年 筑波大学物理学系教授
1997年 帝京平成大学教授
2004年 工学院大学エクステンションセンター客員教授
この間,カリフォルニア工科大学研究員,
シカゴ大学研究員,プリンストン高級研究所員.
1977年 仁科記念賞受賞
現在 筑波大学名誉教授

ISBN:9784780602005
出版社:学術図書出版社
判型:B5
ページ数:208ページ
定価:1900円(本体)
発行年月日:2014年10月
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PH