存在肯定の倫理 II
生ける現実への還帰
著:後藤 雄太
内容紹介
生まれること、死ぬことを、共にありのまま肯定することは可能だろうか? がん告知、中絶、若者の孤独……、現代の「正義」の強迫観念を振り解き、活き活きとした生を取り戻すための、逞しき応用倫理学の挑戦。
●著者紹介
後藤? 雄太(ごとう ゆうた)
1972年 岐阜県生まれ。
1995年 広島大学文学部哲学科インド哲学専攻卒業。
1999年 広島大学大学院文学研究科博士課程後期倫理学専攻修了。博士(文学)(広島大学)。
現 在 北海道情報大学准教授。哲学・倫理学専攻。
著 作 『人間論の21世紀的課題6 教育と倫理』〔共著〕(ナカニシヤ出版,2008年),『情報倫理学入門』〔共著〕(ナカニシヤ出版,2004年),「東洋哲学における〈自己への配慮〉と〈平和〉――ガンディーとティク・ナット・ハンの実践と思想から」(『ぷらくしす』第17号,2016年),「スピリチュアル・ペインは癒やされうるか――死生観の転回構造」(『医学哲学医学倫理』第23号,2005年),「ニーチェとハイデガーにおけるニヒリズムの「超克」,あるいは〈解消〉」(『倫理学年報』第47集,1998年),他。
目次
序
【第Ⅰ部】死に逝くことの肯定――生命・医療倫理学的探究(1)
第1章 死の知らせを聴く
――がん告知の問題・再考
1 がん告知をめぐる現在の傾向から見る「死の受容のかたち」
2 死期を「知る」ということ、〈察する〉ということ
3 もうひとつの〈死の受容のかたち〉
4 医療技術から、一歩〈距離〉をとる
第2章 死の苦しみと向き合う
――スピリチュアル・ペインは癒やされうるか
1 死生観の転回構造
――絶対否定から絶対肯定へ
2 時間観の転回構造
――今という仕方で現われる存在・生命
3 癒やされないままに癒やされること
【第Ⅱ部】生まれ来ることの肯定――生命・医療倫理学的探究(2)
第3章 生まれ来ることの歓待
――人工妊娠中絶批判のための一試論
1 中絶による〈生を歓待する場〉としての社会の損傷
2 生を歓待するということ
――生命の神聖さ・再考
3 関係論的観点からの中絶問題解決の展望
第4章 生の肯定vs.優生思想
――ニーチェ哲学を手がかりに
1 矛盾の原因
2 生を肯定するということ
3 苦しみとともに生きる
第5章 望まない妊娠・中絶をめぐる〈生の倫理〉
1 日本における中絶の歴史の概観
2 現代日本における性と中絶
3 〈独り行く者〉たちの連帯
【第Ⅲ部】成長すること、変貌することの肯定――教育倫理学的探究
第6章 青少年における〈拠り所〉としての友人関係
1 現代日本の青少年における友人関係の重視
2 〈最後の拠り所〉としての友人関係
――社会的背景の素描
第7章 〈独り在ること〉を学ぶ
1 〈他なるもの〉の排除
――内閉化について
2 様々な具体的問題
――スクールカースト、いじめ、不登校、自殺……
3 〈自己との関係〉の断絶
4 〈独り在ること〉の肯定
5 大人にできることは
【第Ⅳ部】情報と技術の時代における存在肯定――情報・技術倫理学的探究
第8章 インターネット・スマートフォンに関する倫理的諸問題
――〈拠り所〉としてのインターネット
1 ネット依存
――背景の一つとしての「コミュニケーション至上主義」
2 公共空間との断絶の加速
3 他者との〈距離感覚〉の喪失
――危険な他者や情報への接近がもたらす諸問題
4 〈自己と関係していく力〉の喪失の加速
5安楽な世界から、一歩〈距離〉をとる
第9章 不和の増幅装置としてのインターネット
――ハイデガーの技術論を手がかりに
1 インターネット時代における不和
2 インターネット技術とニヒリズム
3 ゲラッセンハイト(放下)について
【第Ⅴ部】存在肯定の倫理を生きる――〈実践=行〉の倫理学
第10章 〈自己へのケア〉と存在肯定
――ガンディーとティク・ナット・ハンにおける〈平和〉の実践と思想から
1 東洋哲学における〈自己へのケア〉
――自己の中にある〈平和〉
2 〈存在〉への還帰
――〈平和〉の場を開く
3 現実と理想のはざまで
第11章 功利主義・義務論・徳倫理学から〈距離〉を置く
――宮沢賢治の実践と思想を手がかりに
1 功利主義と賢治
――〈ほんとうのさいわい〉をめぐって
2 義務論と賢治
――〈かなしみ〉という感情をめぐって
3 徳倫理学と賢治
――〈デクノボー〉の倫理
*
あとがき
事項索引
人名索引
ISBN:9784779515972
。出版社:ナカニシヤ出版
。判型:A5
。ページ数:238ページ
。定価:2800円(本体)
。発行年月日:2021年11月
。発売日:2021年12月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDX。