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『愛の不時着』論

著:本橋 哲也

紙版

内容紹介

あらゆる分断を乗り越えて、
「会いたい」と願い続ける人びとへ――
朝鮮半島の二つの国家を舞台にした「史上最高」の韓流ドラマの魅力を、心に響く数々のセリフと、ピアノ、ロウソク、腕時計といったモチーフから浮き彫りにする。
巻末には朝鮮半島の歴史と文化と人びとをより知るための書籍・映画・ドラマリストを収録。


「このドラマを一話でも見た人は、その面白さに惹かれ、声を上げて笑い、涙を流し、サスペンスにドキドキする……。そして何より、あの愛すべき登場人物たちにもう一度会いたい、そう願うようになったのではないでしょうか? 世界の人びとをそこまで虜にする『愛の不時着』の魅力は何か――本書では、表象分析と文化批評と歴史省察の知見を借りながら、そして何よりこのドラマが描く人と人との関係の不思議に驚きながら、この問いを掘り下げて考えていきたいと思います。」(「プロローグ」より)


■著者略歴
本橋哲也(もとはし・てつや)
1955年東京生まれ。東京大学文学部卒業、イギリス・ヨーク大学大学院英文科博士課程修了。D. Phil。
現在、東京経済大学教授。カルチュラル・スタディーズ専攻。
著書は、『映画で入門 カルチュラル・スタディーズ』『カルチュラル・スタディーズへの招待』『ほんとうの「ゲド戦記」』(大修館書店)、『本当はこわいシェイクスピア』(講談社選書メチエ)、『ポストコロニアリズム』(岩波新書)、『侵犯するシェイクスピア』(青弓社)、『思想としてのシェイクスピア』(河出書房新社)、『深読みミュージカル』(青土社)、『ディズニー・プリンセスのゆくえ』(ナカニシヤ出版)、『宮城聡の演劇世界』(共著、青弓社)など。翻訳書は、ガヤトリ・スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』(共訳、月曜社)、ホミ・バーバ『文化の場所』(共訳、法政大学出版局)、ロバート・ヤング『ポストコロニアリズム』(岩波書店)、C. L. R.ジェームズ『境界を越えて』(月曜社)、レベッカ・ウィーバー=ハイタワー『帝国の島々』(法政大学出版局)など。

目次

人物相関図

プロローグ 프롤로그 愛に不時着――二つの国家、一つの民族


第1話 飛 翔 비상 
 1 風 바람 「風はなぜ吹く? 通り過ぎるためよ、立ち止まらずにね。風が吹いてこそ――私は飛んでゆける」
 2 信頼 믿는다 「君のことは信頼してる」
 3 再会 만남 「愛する人たちは再会できる。どんなに遠く離れても、最後には――戻ってくる」

第2話 エネルギー 에너지
 1 記憶 기억 「私は帰ったらすぐ記憶喪失になる予定だから」
 2 ロウソク 초 「もう見えない。心配するな。災いのあとは幸せが来るものだ。
きっと何とかなる」
 3 家 집  「家なんかないわ」

第3話 演 技 연기
 1 嘘 거짓말 「(中隊長は)ウソはけっして言いませんから」
 2 ピアノ 피아노 「あなたもピアノを?」
 3 水 물 「顔と手を洗え。食べるときは清潔でないと」

第4話 サイン 사인
 1 食事 식사 「だから“小食姫”っていうあだ名まで付いた」
 2 家族 가족 「このなかで一度でもセリを家族と認めた者がいたか」
 3 指 손가락 「感謝の気持ちをこめて私もあげたいものがある」

第5話 移 動 이동
 1 線 선 「心配しないで、線はきちんと守るから」
 2 腕時計 손목시계 「値段は重さで決まるのに、軽すぎる」
 3 目的地 목적지 「間違った電車が時には目的地に運ぶ」

第6話 コミュニケーション 커뮤니케이션
 1 運命 운명 「私を運命の人だと思いたいの?」
 2 まなざし 눈 「危険だわ。私を心配してるまなざし。私を好きにならないでね」
 3 握手 악수 「握手じゃなくて――抱きしめてよ。最後なのに」

第7話 負 担 부담
 1 自分 내 「私には自分の他に誰もいなかった」
 2 ときめく 설레기 「人がときめくのは結末を知らないからだ」
 3 曲 음악 「ちょうどその時――私に語りかけるように曲が鳴り響いた」

第8話 軌 道 궤도
 1 本心 진심 「本心?」「本心よ」
 2 心配 걱정 「私は――娘が心配なのよ」
 3 人生 인생 「そんな人生は――不幸すぎないか?」

第9話 リプレイ 리플레이
 1 思い出 생각 「気分のよくなることを思い出すのよ」
 2 地獄 지옥 「彼女を守れないと――僕の人生は地獄になります」
 3 お母さん 엄마 「でも帰ったらお母さんに会えるでしょ」

第10話 願 い 소원 
 1 会いたい 보고싶은 「すごく会いたいです 私の唯一の友に」
 2 執着 집착 「それは愛じゃない、執着だ。愛が古くなって腐ったんだ」
 3 贈り物 선물 「How are you doing?(ハウ・アー・ユー・ドゥーイング?)」 

第11話 祖 国 조국
 1 電気 전기 「まさか南朝鮮では俺たちが来るのを知って電気をつけたのではあるまいな」
 2 忘却 잊어버리지 「だが――覚えててくれ、忘れてはならない人は――憎い人じゃなくて好きな人だ」
 3 行動 일들 「ここにいる間、思い出になる行動は禁止」

第12話 過 去 과거 
 1 約束 약속 「お願いだからそれだけは約束して」
 2 恩返し 은혜 「私は恩返しと復讐はきちんとやるの」
 3 誕生日 생일 「だからずっと幸せな誕生日になるはず」

第13話 幸 せ 행복
 1 小鹿 아기사슴 「仲間に捨てられた小鹿は――結局死んでしまう」
 2 弟妹 동생 「弟や妹が喜びそうだけど」
 3 走馬灯 주마등 「人は死の間際に――一瞬だけど走馬灯のように――人生で一番良かった瞬間が頭をよぎると言うでしょ」

第14話 存 在 존재
 1 夢 꿈 「かなわぬ夢でもいいから 未来を夢見ていたい」
 2 娘 딸 「娘を帰してくれたら 母の気持ちを伝えたいと なのにできなかった」
 3 傷痕 흉터 「傷痕が――こんなに大きい」

第15話 情 報 정보
 1 父親 아버지 「お前の父親はお前がここで死ぬことを望んでる」
 2 故郷 고향 「僕の故郷の村を詳細に把握してました」
 3 選択 선택 「その長い夢の中で――ついに私は選択をした」

第16話 ユートピア 유토피아
 1 恋しさ 그리움 「セリズ・チョイスが出したこの限定品の名前は“恋しさ”だそうです」
 2 命 목숨 「その人もダンのことを……命よりも大事に思ってくれてます」
 3 花 꽃 「その花が咲く国で会おう」 


エピローグ 에필로그 愛に無事着――二つの共和国、一つの半島


朝鮮半島の歴史と文化と人びとを、より知るために――書籍・映画リスト、それに私が選んだ韓流ドラマ


コラム 비평
 ①韓ドラ小史
 ②南北分断
 ③盗聴と宿泊検閲
 ④市場と停電
 ⑤『ロミオとジュリエット』
 ⑥初 雪
 ⑦家父長制度
 ⑧質 屋
 ⑨朝鮮戦争
 ⑩脱北者
 ⑪兵役および同志と兄貴
 ⑫おかゆと焼き肉
 ⑬『天国の階段』
 ⑭国家保衛省と国家情報院
 ⑮韓国のエンタメ文化
 ⑯ハングル

著者略歴

著:本橋 哲也
本橋哲也(もとはし・てつや)
1955年東京生まれ。東京大学文学部卒業,イギリス・ヨーク大学大学院英文科博士課程修了。D. Phil。
現在,東京経済大学教授。カルチュラル・スタディーズ専攻。
主な著訳書に『映画で入門 カルチュラル・スタディーズ』『カルチュラル・スタディーズへの招待』『ほんとうの「ゲド戦記」』(大修館書店),『本当はこわいシェイクスピア』(講談社選書メチエ),『ポストコロニアリズム』(岩波新書),ガヤトリ・スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』(共訳,月曜社),ホミ・バーバ『文化の場所』(共訳,法政大学出版局),ロバート・ヤング『ポストコロニアリズム』(岩波書店)がある。

ISBN:9784779515903
出版社:ナカニシヤ出版
判型:4-6
ページ数:192ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年09月
発売日:2021年08月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATF