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学校を離れる若者たち

ヨーロッパの教育政策にみる早期離学と進路保障

編:園山 大祐

紙版

内容紹介

多様な教育の場を保障するために――
早期に学校から離脱する若者たちに対して各国はどのような対策をとっているのか。政策実態を基に予防、介入、補償という観点から検討する。


「[本書では]学校が,労働人材の育成のみに偏らないためにも,多様な教育の場を保障するためにはどのような課題がヨーロッパ諸国ではみられるのか,またその対策はどのように講じられているのか,各国の特長から明らかにしたい。」(「序章」より)

目次

はしがき 

序章 学校から離れる若者,多様な学び方と教育訓練の場:日欧教育比較(園山大祐)
 1 はじめに
 2 日本の教育に照らして
 3 本書の目的  


第1部 総  論

第1章 学校教育制度における「早期離学」の問題性認識(池田賢市)
 1 はじめに
 2 「離学」問題の前提
 3 「問題」を支える幻想的現実
 4 義務教育制度の原理
 5 労働市場と学校教育
 6 国家間の関係
 7 教育と雇用とのマッチング論
 8 社会的排除との闘いとして
 9 おわりに:「早期離学」問題研究の課題

第2章 OECDによる早期離学の予防・介入・補償政策(斎藤里美)
 1 はじめに
 2 OECDにおける「早期離学」への着目:定義,対象,現状分析
 3 OECDにおける早期離学への着目と予防・介入・補償の政策
 4 OECDにおける「早期離学」解決に向けた政策とその評価:質の高い職業教育訓練の推奨
 5 おわりに:OECDにおける「早期離学」政策の課題

第3章 EUによる早期離学に関する教育訓練政策の展開(小山晶子)
 1 はじめに
 2 EUの教育訓練政策のアジェンダとなった早期離学
 3 早期離学問題の共有と取り組み:OMCの活用
 4 「教育と訓練2020」と早期離学の抑制
 5 おわりに


第2部 各 国 編

第4章 イギリスにおける早期離学への対応とニートへの支援(菊地かおり)
 1 はじめに
 2 イギリスにおける早期離学とニート 
 3 データからみる早期離学とニートの現状 
 4 イングランドにおける早期離学/ニートをめぐる政策的対応
 5 若者の教育・訓練への参加を促すための支援
 6 おわりに

第5章 フランスにおける早期離学対策の多様性とその課題(島埜内恵)
 1 はじめに
 2 早期離学の現状
 3 早期離学に関する政策の変遷
 4 多岐にわたる対策 
 5 早期離学対策の今後の方向性とその特徴
 6 早期離学を「問題」とみなす前提の問い直し
 7 おわりに

第6章 ドイツの早期離学問題:就学義務の正当性と射程(辻野けんま・布川あゆみ)
 1 はじめに
 2 ドイツにおける早期離学者とは
 3 早期離学対策の政策動向
 4 不登校にみる「就学義務の正当性」の問題
 5 おわりに

第7章 オランダにおける早期離学の現状と課題(見原礼子)
 1 はじめに
 2 早期離学者の定義と推移
 3 職業訓練教育課程の概要
 4 早期離学改善政策の変遷と統計手法の改善
 5 移民の背景をもつ生徒の早期離学
 6 残された課題
 7 おわりに

第8章 スペインにおける早期離学問題に対する教育制度上の対策と限界(有江ディアナ)
 1 はじめに
 2 スペインにおける早期離学
 3 教育関連法と学校教育制度の変遷
 4 予防・介入・補償の観点からの早期離学対策
 5 学校教育制度の限界
 6 おわりに 

第9章 スウェーデンの離学予防・復学支援施策(林 寛平・本所 恵)
 1 はじめに
 2 早期離学者の割合 
 3 最近の政策の重要な転換点
 4 離学予防・復学支援策
 5 おわりに

第10章 ノルウェーにおけるドロップアウトの問題と修了率向上政策(中田麗子)
 1 はじめに 
 2 ドロップアウトと修了の定義と推移
 3 後期中等教育の改革
 4 修了率向上のための施策とその評価 
 5 諸施策の効果
 6 おわりに

第11章 EU新規加盟国にみる早期離学の多様性と共通性(柿内真紀)
 1 はじめに
 2 早期離学率データにみるEU10諸国の位置
 3 早期離学のさまざまな背景
 4 多様性と共通性を探る
 5 おわりに


補章 「離学」の意味をノンフォーマル教育から問いかける(丸山英樹)
 1 はじめに 
 2 問われる通学と学習の意味
 3 生涯学習とノンフォーマル教育の関係
 4 NFEからみるオルタナティブ教育と遠隔教育
 5 おわりに:形式としての通学か,実質的学習との連携か

終章 ヨーロッパから俯瞰してみた日本の学校社会(園山大祐)
 1 はじめに
 2 ヨーロッパの教育動向 
 3 早期離学のヨーロッパ比較と各国の教育制度の変遷
 4 本共同研究における主要8か国の特徴
 5 EU及び主要8か国の政策動向からみえてきたこと
 6 稀有な日本の低退学高欠席率 


コラム1 フランスの障害児における就学,進路変更,復学の課題(梅田まや)
コラム2 オランダにおける教育格差是正のための就学前教育(福田紗耶香)
コラム3 早期離学率減少を目指すポルトガルの挑戦(二井紀美子)
コラム4 フィンランドにおける進路選択:ソフィアの事例から(星野 優)
コラム5 エストニアにおける早期離学(カドリー・カリプ/丸山英樹)
コラム6 映画にみる進路選択(園山大祐)


執筆者によるコロナ禍での本書完成の《舞台裏》
あとがき
事項索引
国名索引
人名索引
略語表

著者略歴

編:園山 大祐
大阪大学人間科学研究科教授
主要著作:『フランスの社会階層と進路選択―学校制度からの排除と自己選抜のメカニズム』(編著,勁草書房,2018年),『岐路に立つ移民教育―社会的包摂への挑戦』(編者,ナカニシヤ出版,2016年),『フランスの高等教育改革と進路選択―学歴社会の「勝敗」はどのように生まれるか』(編著,明石書店,2021年)など

ISBN:9784779515293
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:272ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年04月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNB