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出会いと別れ

「あいさつ」をめぐる相互行為論

編:木村 大治
編:花村 俊吉

紙版

内容紹介

出会いとは何か、別れとは何か? 挨拶(あいさつ)とは何か?

人類学、認知科学、エスノメソドロジー、会話分析、霊長類学、動物行動学など学際的に分野を横断しながら、「出会い」という特異点を見ることで、相互行為(インタラクション)そのものの成り立ちに迫る!【便利で充実した用語集も収録】

目次

はじめに
凡  例

第1部 出会いと挨拶の謎

01 出会いと挨拶――相互行為論的位置づけ(木村大治)

1 出会いと挨拶
2 「する」と「ある」の循環的関係
3 相互行為の起動

02 出会いを達成する「呼びかけ-応答」,状態の移行と関係を確認する「挨拶」(花村俊吉)

1 出会いの「宙ぶらりんさ」
2 出会いと「呼びかけ-応答」
3 共在の諸相と挨拶
4 「挨拶」による関係の確認・表明

コラムA 森を聞く/感じるバカ・ピグミー:ヒトの聴覚的な出会い/共在(彭 宇潔)
コラムB チンパンジーのパントフートを介した非対面下の出会いと朝晩の挨拶(花村俊吉)

第2部 定型的相互行為の認識と創発

03 霊長類における挨拶と集団生活(中村美知夫)

1 はじめに:何を「挨拶」とするのか
2 霊長類とその社会集団
3 霊長類研究に見る挨拶
4 「文脈としての挨拶」と「型としての挨拶」
5 「出会い」との関係
6 毛づくろい「ではない」社会交渉?
7 群れ生活と挨拶

04 相互行為は楽し――遊戯としての相互行為分析の可能性(牧野遼作)

1 日常相互行為における遊戯的側面に光を当てて
2 息子と母の「手合わせ」のやり方
3 息子と筆者の「手合わせ」:新参者に対する振る舞いの調整と独自性の維持
4 相互行為はそれ自体が楽しいという側面

05 出会っているのか,いないのか――チンパンジーの「出会いそこね」と「出会い直し」の技法(西江仁徳)

1 はじめに:出会うことの難しさ
2 空間的共在・出会い・相互行為の境界
3 野生チンパンジー社会における「出会い」
4 チンパンジーのジェスチャーによるコミュニケーション
5 チンパンジーの「リーフクリップ」行動
6 チンパンジーは実際にリーフクリップをどのように使っているのか
7 チンパンジーが「出会いそこねる」とき
8 アトラクター=呼びかけとしてのリーフクリップと「あいさつ」:つねに「出会いそこね」「出会い直し」続けること

コラムC 握手におけるラッパーたちのpoetics/politics(矢野原佑史)
コラムD 共に暮らすことから生まれるケアのかたち:ケニアにある障害者支援施設の入所者が繰り広げる相互行為(善積実希)
コラムE 内なる「他者」との出会い:憑依,シャーマニズム(岡田浩樹)

第3部 共在の諸相

06 「共鳴的共在」としての歯科診療の場(坂井田瑠衣)

1 はじめに
2 会話を始めること
3 歯科医院における「出会い」の様相
4 共鳴的共在:歯科医院における共在の様相

07 個体識別と匿名性(高梨克也)

1 はじめに:サル学における個体識別という習慣
2 近代社会と匿名性:社会学における古典的見解
3 現代社会における類型的出会い
4 成員カテゴリー化装置と匿名性
5 社会的スキーマ:社会心理学における認知的転回
6 脱埋め込みと再埋め込みの歴史

コラムF 出会いについての覚え書き:ワンバの森に棲むボノボの観察から  (坂巻哲也)

第4部 別れにおける相互行為

08 共在状態における会話からの離脱(幸田瑞希)

1 離脱:会話から抜けること
2 離脱するタイミングを見計らう
3 離脱を保留する
4 話しながら離脱する
5 「別れない」こととしての離脱

09 電話会話における別れ――別れがたさの理由(居關友里子)

1 はじめに:人と別れる際の難しさ
2 別れに関する先行研究
3 電話会話を締めくくる
4 電話会話の別れにおける葛藤
5 電話での別れと対面での別れ
6 おわりに

10 動物社会の共存の様態とあいさつ――挨拶せず別れるチンパンジー,挨拶せずには別れにくいヒト(花村俊吉)

1 動物の「あいさつ」とヒトの「挨拶」:ヒトに特有の別れの挨拶
2 あいさつと「関係の持続性」「個体識別」「別れと再会」
3 チンパンジーの別れと再会
4 別れの挨拶の有無と共存の様態

コラムG 生まれたときも死ぬときも別々だ(園田浩司)

第5部 出会いと挨拶の進化と極限

11 「あいさつ」の心理メカニズムと「ためらい」の進化(藪田慎司)

1 「敵対」と「友好」
2 動機づけメカニズム
3 動機づけの葛藤とディスプレイ
4 ペアパートナー間の「あいさつ」
5 「あいさつ」と動機づけの葛藤
6 「あいさつ」の進化と「ためらい」の進化:理論的考察
7 「挨拶/あいさつ」の本質
■ 補  論

コラムH 相互行為としてのタンチョウのダンス(武田浩平)
コラムI サルの「会話」(香田啓貴)

12 「見えないもの」の気配を知るための技術――酒造り現場での実践を事例として(岩谷洋史)

1 はじめに:重なり合う感覚
2 酒造りの概要
3 作り手らが出会うもの
4 酒造りに関わる書類
5 同じ時間に同じところでなるべく同じことをしようとする努力
6 おわりに:安定した実践に向けての試み

コラムJ ボンガンドの「投擲的発話」とツイッター(木村大治)

おわりに
用語集

索 引

著者略歴

編:木村 大治
京都大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。
京都大学名誉教授。
主要著作:『見知らぬものと出会う――ファースト・コンタクトの相互行為論』(東京大学出版会,2018年),『括弧の意味論』(NTT出版,2011年),『共在感覚
――アフリカの二つの社会における言語的相互行為から』(京都大学学術出版会,2003年)他。
編:花村 俊吉
京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(理学)。
京都大学アフリカ地域研究資料センター・特任研究員。
主要著作:「偶有性にたゆたうチンパンジー――長距離音声を介した相互行為と共在のあり方」(『インタラクションの境界と接続――サル・人・会話研究から』[分担執筆],昭和堂,2010年),「フィールドでサルと出遇い,その社会に巻き込まれる――観察という営みについての一考察」(『動物と出会うⅠ――出会いの相互行為』[分担執筆],ナカニシヤ出版,2015年),「新入りメスがはぐれるとき――チンパンジーの別れと再会からみたヒトの共存の様態とその「極」」(『極限――人類社会の進化』[分担執筆],京都大学学術出版会,2020年)他。

ISBN:9784779514982
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:374ページ
定価:4400円(本体)
発行年月日:2021年10月
発売日:2021年10月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB