出版社を探す

「老いの時間」を共に生きる

心理臨床からの試み

著:久保田 美法

紙版

内容紹介

老人病棟で、ふとこぼれる言葉。認知症老人のわけがわからない言葉。そこに込められている思いや体験世界を探究する、素朴な営み。ただ共にいることに意味はあるのだろうか。あなたはこの本から何を聴くだろうか。


●著者紹介
久保田美法(くぼた・みほ)
淑徳大学総合福祉学部実践心理学科准教授

目次

第I部 「老い」とは何か
第1章 なぜ「老い」なのか
1.私たちと「老い」  
2.生きることの一つの極み  
3.有用性から離れるところ  
4.認知症について  
5.「老い」に聴く  

第2章 老いの「みずみずしさ」考
はじめに  
1.「若さ」という神話  
2.「老い」が「若さ」を求める時  
3.「いのち」のつながり  
4.汲めども尽きぬ語り  
5.老いが「みずみずしい」時  

第3章 老いの「索漠」考
はじめに
1.老いるという体験と戦争体験  
2.老いの「独特な在り方」  
3.人としての矜持  
4.「隠蔽する力」と「戦争の深淵」  
5.生と死の重なり  
6.「新しい人」へ  
おわりに  

第4章 老人と出会う場と筆者のスタンス
はじめに―アウトリーチ型の心理臨床について  
1.日常の場で,老人のおられるその場で  
2.“枠以前”の営み  
3.記録の仕方  
4.事例の書き方と考察の仕方について  
5.臨床実践とその研究について  
6.inspireという普遍性

第II部 「老い」に聴く心理臨床

第5章 老人から「こぼれる」言葉―その「重奏性」から
はじめに  
1.老いの「重奏性」  
2.「物語」と「こぼれる」言葉  
3.Kさんの「詩」 
4.「女の名前」  
5.在り様の語り  
6.響きあいの中で  

第6章 認知症老人から受けとるもの―日常の意味再考
1.「混沌から」という視点  
2.日常の場で「こぼれる」言葉  
3.夢のような語り口  
4.老人から「こぼれた」言葉  
5.「この世」と「あの世」の重奏  
6.“土に還っていく”過程の言葉  
7.日常の内奥にある生と死の営み  
おわりに  

第7章 老人の在り様が響きあう世界―“ナンセンスの意味”に触れる
1.老人の沈黙  
2.「存在の底からもれでるだめ息のような」  
3.「寝ても覚めても楽しい。楽しい言うか…」  
4.触れるということ  
5.“ナンセンスの意味”  
6.「女のことば」を通して浮かびあがるもの  

第8章 「土に還っていく過程」に生まれる詩のような言葉
1.老人の語り―物語から断片へ  
2.「日常・実用の言葉」と「詩的言語」  
3.3人の女性の「詩のような言葉」  
4.「土に還っていく」様相と,そこに添うということ  
むすびにかえて―言葉をよすがに言葉にならないものへ  

第III部 老人の遊びと「なぞなぞ」

第9章 子どもの遊びと老人の遊び
はじめに―ある老人デイケアでの出会いから  
1.「子ども・大人・老人」と「遊び」  
2.子どものファンタジー  
3.日常を裏打ちしている世界  
4.老人のファンタジー  
5.“究極のごっこ遊び”  
6.“どこかで知っている”  
7.「容易に言葉にはならないもの」  
8.老人の「うた」と「なぞなぞ」  
おわりに  

第10章 老人と「母子の時間」
はじめに  
1.「なぞなぞ」の論理  
2.母にまつわる「なぞなぞ」  
3.「なぞなぞ」から見えてくるもの  
おわりに  

第11章 老人の「おもかげ」をめぐって
1. 身体をイメージとみる  
2.「引き込まれる」仕草  
3.「仕草」という「なぞなぞ」  
4.「胸の内にある“大切な何か”」  
5.立ちのぼる様々な気配  
6.イメージと言葉の関係  
7.分からないものは分からないままに  
8.臨床としての位置づけ  

第IV部 老人と若者のつながり―「高齢者心理学」を受講した大学生の感想から

第12章 老いへの関心は,生きることへの関心
はじめに  
1.「エイジング教育」と「高齢者心理学」  
2.「世代継承」としての「高齢者心理学」  
3.内的体験としての〈老いる〉  
4.筆者が担当する「高齢者心理学」  
5.「高齢者心理学」を受講した学生の感想から  
おわりに  

第13章 「新しい人」としての認知症
1.「おばあちゃんは宇宙人」?  
2.認知症の人は「ふつう」の人  
3.「うちゅうじん」に込められたもの  
4.大学生の認知症高齢者イメージ  
5.「届かないって辛い」と「幸せの垣間見」  
6.「“ぼける意味”が生まれる」  
7.「人生の次のステップ」  
8.「存在でわかりあう」  
9.「淋しいけどステキ」「ステキだけど淋しい」  
10.もう一つの「ふつう」  

第14章 「柔らかな」死生観
はじめに  
1.超高齢社会と「死生観の空洞化」  
2.死の不可知性と学生の感覚  
3.「高齢者心理学」を受講した学生の感想  
4.「半具象」の物語  
5.現代に生きる「地下水脈」  

むすびにかえて

補 遺 「老人は“枠外”ではなく“根幹”の一つだよ」―山中先生のまなざしから教わってきたこと

著者略歴

著:久保田 美法
淑徳大学総合福祉学部准教授,臨床心理士,公認心理師。
京都大学大学院教育学研究科臨床教育学専攻博士後期課程修了,博士(教育学)
主な著著に「『老いの時間』を共に生きる―心理臨床からの試み」(ナカニシヤ出版)

ISBN:9784779514609
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:280ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2020年03月
発売日:2020年04月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JMC