生きられる「アート」
パフォーマンス・アート《S/N》とアイデンティティ
著:竹田 恵子
内容紹介
アートはどのように社会と関係することができるのか。夭折の芸術家(アーティスト)古橋悌二が関与したアーティスト・グループ「ダムタイプ(dumbtype)」による90年代のパフォーマンス・アートの傑作《S/N》について関係者インタビュー等を交えながら丹念に考察を深め、アートがどのように社会を変え得るのか、その可能性に迫る。
●著者紹介
竹田恵子(たけだ けいこ)
大学教員。EGSA JAPAN代表。専門は社会文化学、表象文化論、ジェンダー/セクシュアリティ研究。
主な編著書に『社会の芸術/芸術という社会――社会とアートの関係、その再創造に向けて』(共編、フィルムアート社、2016年)、『出来事から学ぶカルチュラル・スタディーズ』(共著、2016年)、The Dumb Type reader(分担執筆、Museum Tusculanum Press, 2017年)。
目次
序 章
古橋悌二 関連年表
《S/N》プロジェクトの公演日程・場所
第1部 古橋悌二と《S/N》の作品構造
第1章 古橋悌二と《S/N》を支えたつながり
1 古橋悌二の経歴
2 京都市立芸術大学のネットワークと「座☆カルマ」
3 《S/N》以前の活動
4 さまざまな支援
5 《S/N》後――つづく関係性
第2章 《S/N》の作品構造
1 作品概要
2 《S/N》における引用
3 古橋悌二と《S/N》の構造――《S/N》の作者とは誰か
4 《S/N》の中心としての古橋悌二
5 結 語
第2部 社会と関与する芸術としての《S/N》
第3章 一九九〇年代日本におけるHIV/エイズの言説と古橋悌二の〈手紙〉
1 《S/N》周辺――一九九〇年代京都におけるHIV/エイズをめぐる社会/芸術運動
2 一九八〇年代後半~一九九〇年代のHIV/エイズの言説と「カミング・アウト」
3 古橋悌二の〈手紙〉――「アート」による社会への介入へ
4 結 語
第4章 カミング・アウトの〈ドラマトゥルギー〉
1 カミング・アウト――逸脱者の異議申し立て
2 カミング・アウトと告白――カミング・アウトをめぐる議論の変遷
3 《S/N》分析――オープニング・トーク
4 《S/N》分析――シーン5
5 新しいコミュニティとアイデンティティの可能性へ
第5章 生きられる「アート」
1 アイデンティティをめぐる葛藤
2 《S/N》と芸術
3 生きられる「アート」
謝 辞
参考文献
人名索引
事項索引