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響応する身体

スリランカの老人施設ヴァディヒティ・ニヴァーサの民族誌

著:中村 沙絵

紙版

内容紹介

他人でしかない人々の間に老病死を支える関係性は、いかに築かれているのか。スリランカの老人施設が投げかける問いとは何か。

目次

はじめに  フィールドとの出遭い  

序 論 ヴァディヒティ・ニヴァーサが投げかける問い
 一 ヴァディヒティ・ニヴァーサの社会的位置づけ  
 二 「施設における老い」への視角  
 三 他者の窮状や苦悩への応答性をめぐって  
 四 臨床現場における関係倫理と本書の視座  
 五 調査概要および本書の構成  

第Ⅰ部
第一章 老親扶養をめぐる規範と実態
    ――シンハラ農村社会の家族と世代間関係から
 一 親子間の長期的互酬性  
 二 高地シンハラ農村における家族と老い
 三 K村における高齢者の生活と老親扶養  
 四 交渉される世代間関係  

第二章 シンハラ社会とモラトゥワ
    ――ヴァディヒティ・ニヴァーサをとりまく社会的・空間的文脈
 一 西南海岸の町、モラトゥワ  
 二 カトリックと仏教の相互浸透  
 三 シンハラ社会研究と関係構築の特質  

第Ⅱ部 ダーナ実践がとりむすぶ社会関係

第三章 ヴァディヒティ・ニヴァーサの成立
    ――ダーナを通したチャリティの現地化
 一 植民地化と慈善事業の展開  
 二 新興富裕層の台頭と社会/慈善事業  
 三 ヴァディヒティ・ニヴァーサの創設期における二つの運営形態
   ――カトリック的なチャリティと「ミールス・カレンダー」  
 四 「近代性をめぐる実験」の産物 

第四章 ヴァディヒティ・ニヴァーサを支える社会関係
 一 「施設の社会化」という帰結  
 二 担い手の多様化  
 三 ダーナ施主とヴァディヒティ・ニヴァーサとの結びつき  
 四 「社会奉仕事業」と、そうでないもの  

第五章 揺らぐ「与え手/受け手」関係
    ――ダーナ実践における相互行為とその意味
 一 ヴァディヒティ・ニヴァーサでのダーナをどう捉えるか  
 二 ダーナ儀礼における与え手 - 受け手関係の揺らぎ  
 三 配慮の双方向性――与え手の生の偶発性が露わになるとき  
 四 ダーナ実践への多様な意味づけ  

第Ⅲ部 施設における老いと死、看取り

第六章 「生活の場」としての施設
    ――MJSニヴァーサ概況
 一 MJSニヴァーサの人びと  
 二 MJSニヴァーサでの日常 
 三 生活の場であり、「慈善」「施設」でもあるということ  

第七章 ヴァディヒティ・ニヴァーサで生きるということ
    ――入居者たちの「人生の物語」と日常生活の記述から
 一 ライフ・ナラティブを聴くこと、記述すること  
 二 事例紹介  
 三 考察  ヴァディヒティ・ニヴァーサで生きるということ  

第八章 ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける死と看取り
 一 ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける看取りの実際  
 二 ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける死  
 三 看取り行為への意味づけ  フロアスタッフの語りから  
 四 偶有性への気づき  

結 論 ヴァディヒティ・ニヴァーサを支える関係性とその倫理
 一 ダーナをめぐる相互性  
 二 老病死をめぐる相互性  
 三 響応する身体が生み出す肯定的態度

補 論 スリランカにおける高齢者福祉の展開
 一 独立以降の社会保障・福祉サービスの充実化  
 二 高齢者福祉を取り巻く国際的状況と「高齢者福祉」の展開

著者略歴

著:中村 沙絵
1983 年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の博士課程を修了。博士(地域研究)。現在,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科准教授。専攻は南アジア研究,文化人類学。主な著書・論文に,『スリランカを知るための58 章』(分担執筆,明石書店,2013),「現代スリランカの慈善型老人ホームとダーナ」『南アジア研究』no.23(2011): 100-120,「スリランカ・シンハラ社会における施設での看取りと死に関する一考察」『アジア・アフリカ地域研究』no.13-2(2014):174-211,ほか。

ISBN:9784779510199
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:404ページ
定価:5600円(本体)
発行年月日:2017年03月
発売日:2017年04月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS