映画と文藝
日本の文豪が表象する映像世界
著:清水 純子
内容紹介
日本の文学作品とその映画
一般に原作が優れていればいるほど、その映画化が原作を凌ぐのは
難しいとされている。
名立たる文豪たちが活躍した二十世紀は、サイコロジーとその応用が盛んな
時代だった。
谷崎、川端、三島、乱歩の小説に表れた
SM嗜好、人格分裂、母性への固着は、フロイトを始めとする精神分析学者が、
その原因を明らかにして人間の理解を深めようと苦心してきたテーマでもあった。
日本近代の文学者たちは、その欧米経由の精神分析を使用し、日本人らしさ、
日本人のアイデンティティを見定めようとし、ほの暗い日本家屋の闇にも
似た人間の暗い部分の描写と精緻な分析を推し進め、人間存在の「陰」の部分
へのまなざしを深めていった。そこに、外国の映画人たちは深く共感したに
違いないのである。
本書は、陰影礼賛に満ちた文豪の小説とその映画についての理解を、
さらに深めるための批評集である。
目次
1 清少納言 『枕草子』:ピーター・グリーナウェイのパロディ化
2 芥川龍之介 『藪の中』:多様な読みを許す複数の視点
3 江戸川乱歩 『陰獣』:闇に葬られた欲望
4 谷崎潤一郎 『卍』:性の境界侵犯か
5 『鍵』:ファム・ファタール夢幻/殺しの女装
6 『瘋癲老人日記』:ファム・ファタール夢幻/
女神に溺れるパラフィリア老人
7 川端康成 『眠れる美女』:老人の禁じられた遊び
8 『美しさと哀しみと』:サイコホラーの側面
9 三島由紀夫 『午後の曳航』:ナルシストの視線
ISBN:9784779126482
。出版社:彩流社
。判型:4-6
。ページ数:395ページ
。定価:3000円(本体)
。発行年月日:2020年01月
。発売日:2020年01月19日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATF。