史的イエスをめぐる謎
豊かなる混沌
著:波多野 直人
内容紹介
歴史的に実在した人物としてイエスをとらえ、
諸宗が豊かに混沌と交わった時代的背景を詳細に辿る!
「本書では、もったいぶるわけではないが、
自身の「イエス伝」の中枢は秘することにした。
ただし、イエスの「失われた十七年」を世界漫遊で埋めるような
外連(けれん)は避けたい。
幼年時代のエジプトは別にして、青年時代に仕事で旅をしたにせよ、
東北はシリアのパルミラ即ちタドモル、西南はアカバ湾入り口、
エジオン・ゲベル、いや、その手前のペトラまで
行っていれば上等であろう。
そこまで行けば当時の主だった世界情勢は
十分つかめたはずである。
それよりもイエスが動かずとも、
世界の情報が押し寄せるガリラヤの国際性を語りたい。
バークレイではないが、少年イエスは
山上からシルクロード支線にあたる道の人の行き交いを眺め、
故郷につながるあちらの世界に思いを馳せていたであろう。
青年イエスは仕事を通じガリラヤで
様々な人間と思想にふれえたであろう。
自分の母語アラム語が
シルクロードの国際語であったことは幸いであった」。(「あとがき」より)
目次
第1 章 鼎談 イエス研究の視座――ユダヤ・キリスト教と異教世界
1、宗教と性
2、キリスト教と異教 序
3、宗教における霊 シャーマニズムを中心に
4、宗教と民俗学 神人と畸形
5、霊と憑依
6、フェニキアとヒクソスと出エジプト
7、キリスト教と異教
8、イエスとホルス
9、モーセの奇跡と科学
10、家の偶像テラピム
11、聖書アラビア起源説
12、蛇神信仰の東西
13、ヘルメスと十字架
14、イエスとベス
15、ユダヤ教と異教
16、ユダヤ・キリスト教と驢馬
17、ユダヤ・キリスト教と魚
18、エルサレムの城壁と門
19、魚の奇跡
20、イエスとヘロデ
21、イエスと火
22、イエスと異教 補遺
23、結語
第2 章 武田泰淳「わが子キリスト」にみる史的イエス