C・W・ミルズとアメリカ公共社会
動機の語彙論と平和思想
著:伊奈 正人
内容紹介
9・11以降、グローバル化する社会で続く「憎しみの連鎖」を断ち切る
想像力を獲得するために、今こそ、ミルズ社会学を再読する!
「プラグマティズム」、「ヴァナキュラー」、「ハイブリッド」、「パスティッシュ」といった鍵が、本書を貫く。
ミルズは、大戦間期から冷戦期のアメリカ社会とアメリカ社会学について
考察した社会学者である。南北戦争、二つの世界戦争、冷戦を貫く
問題を見すえ、アメリカ社会を分析した。そして多元的民主主義に基づく
「ゆたかな社会」というアメリカ合衆国の自負を批判した……。
C・W・ミルズ(チャールズ・ライト・ミルズ)とは?
1916 〜1962 年。アメリカの社会学者。
主な著書に『ホワイト・カラー』(創元社)、『パワー・エリート』(東京大学出版会)、
『第三次世界大戦の原因』(みすず書房)、『キューバの声』(みすず書房)、
『社会学的想像力』(紀伊國屋書店)など、訳書多数。
目次
はじめに……………1
Ⅰ プロローグ――予備的考察……………15
●序章 C・W・ミルズ再入門――グローバル化と動機の語彙論……………16
一 ミルズを読みなおす視点について……………16
1 「憎しみの連鎖」と社会学的想像力……………16
2 アメリカ的なアメリカ批判――「向こう岸」としてのヨーロッパをめぐって……………17
二 「戦後思想」としてプラグマティズムを読む
――L・メナンドのプラグマティズム解釈から学ぶこと……………20
1 南北戦争とアメリカ思想の分水界――鶴見俊輔のプラグマティズム論……………20
2 「正しさ」への抵抗とプラグマティズム――加藤典洋の「戦後思想」論を手がかりに……………24
三 ミルズのプラグマティズム批判……………27
1 プラグマティズムの変貌とグローバル化 ……………27
2 ミルズの批評性とプラグマティズム……………30
3 “substantive”なものと職人性……………34
四 動機の語彙論から「戦争の昇華」へ……………37
1 プラグマティックなプラグマティズム批判――プラグマティズムから動機の語彙論へ……………37
2 ヨーロッパ的な危機意識と知識社会学――動機の語彙論の社会学史的整理……………39
3 動機の語彙論……………41
4 隠喩の隠喩……………43
5 動機論の動機論……………44
五 大衆社会を動機の語彙論で読み直す……………46
Ⅱ 問題としての動機の語彙論……………47
●第一章 公共社会学から動機の語彙論へ――研究の動向と問題の所在……………48
一 公共社会学と知識社会学をつなぐもの……………49
二 「よりどころのない立場」と公衆論……………52
三 国家と社会制御――D・メロッシにおける公衆と動機の語彙……………54
四 動機の語彙と作品性の文化社会学……………55
●第二章 社会学的動機論から動機の語彙論へ――社会学史的位置づけの素描……………58
一 概念の定義について――動機と動機の語彙……………60
1 動機の定義をめぐって……………60
2 動機の語彙と実体排除……………61
二 行為論的な動機論の動機――経済的動機と宗教的動機の構成と制御……………63
1 反映から構成へ……………63
2 動機論の社会学史――手がかりとしての井上俊の整理……………64
3 動機の構成と行為論的動機論――「宗教的な現象としての社会」の制御……………66
三 相互行為論的な「動機論の動機論」の動機――社会学的動機……………69
1 動機の「内面化」をめぐって――「道徳的なもの」と行為論……………69
2 動機外在説をめぐって……………70
四 動機の語彙論と学説史の分水嶺……………73
Ⅲ 動機の語彙論から社会学的批評へ……………75
●第三章 動機の語彙論と知識社会学――動機付与論から「動機論の動機論」へ……………76
一 二つの知識社会学と「動機論の動機論」……………76
二 動機の語彙論のテキスト問題……………78
1 動機の語彙論の再発見……………78
2 初期論考と『性格と社会構造』との相違――第一のテキスト批判……………80
3 『性格と社会構造』の共著関係――第二のテキスト批判……………82
三 ミルズ知識社会学の検討……………88
1 思考の座標軸と語彙体系――プラグマティズムとK・バーク……………88
2 動機付与論……………93
3 「動機論の動機論」と生の作品性……………95
●第四章 大衆社会論と動機の語彙……………99
一 動機の語彙論から大衆社会論へ……………100
二 D・メロッシにおける国家と社会制御……………102
1 想定としての国家と社会制御――「国家なき国家」と動機の語彙……………102
2 相互行為論的な民主主義モデルと動機の語彙……………105
3 動機の語彙の複数性――民主主義モデル改造の二つの方向……………106
三 パワー・エリート論の再検討――“politics of truth”論を手がかりに……………113
1 権力概念……………115
2 エリート概念……………116
3 支配階級論批判……………118
4 職業の概念……………118
5 「保守的ムード」論……………120
四 公共社会学と「新しい左翼」……………120
1 「新しい左翼」……………121
2 公衆論をめぐって……………122
五 動機の語彙論と大衆/公衆論……………125
【補論1】 ハイブリッドな動員社会とミルズの社会病理学批判……………127
一 ハイブリッドな動員社会とシカゴ学派の機能主義……………127
1 サブカルチャー研究の先駆としてのシカゴ学派……………127
2 機能主義の先駆としてのシカゴ学派……………128
二 批判的機能主義とサブカルチャー研究……………129
1 『アウトサイダース』の画期性……………129
2 ミルズの社会病理学批判……………130
3 ミルズの批判的機能主義とカルチュラルスタディーズ……………130
●第五章 社会学的リアリズムと動機の語彙――人間喜劇と歴史的特殊性……………132
一 動機の語彙論と社会学的リアリズム――「隠喩的なもの」を手がかりに……………132
二 社会学的人間喜劇と批評性……………134
1 文学的文体と公共社会学……………134
2 社会学的人間喜劇とバルザック的手法――D・ベルのパワー・エリート論批判……………138
3 「よりどころのない立場」と喜劇的方法……………140
4 喜劇的方法と動機の語彙論……………143
三 歴史的な方法と深層心理学……………145
1 二つの隠喩的方法……………145
2 歴史的特殊性の概念について――隠喩としての歴史……………146
3 自己の「深さ」――隠喩としての深層……………150
四 「動機論の動機論」と社会学的リアリズム……………155
【補論2】 人間喜劇としての『ホワイトカラー』……………157
一 自己形成と『ホワイトカラー』……………157
二 自己形成の契機としての父と祖父……………158
三 反抗と癒し――自己形成の契機としての大都会と田舎町……………160
四 「職人性」――ダラス・テクニカル・ハイスクールとテキサスA&M……………162
五 テキサス、ウィスコンシン、ニューヨーク……………165
六 ハイブリッドなアメリカ像……………166
●第六章 社会学的想像力と動機の語彙……………168
一 社会学的想像力の動機……………168
1 動機としてのアメリカ社会学……………169
2 動機としての異化と隠喩……………171
3 動機としての歴史性……………173
4 動機としてのプロブレマティックと公衆……………174
二 「不調和によるパースペクティブ」……………176
1 「不調和によるパースペクティブ」とミルズ……………176
2 「不調和によるパースペクティブ」と社会学的想像力……………177
三 パワー・エリート論と「不調和によるパースペクティブ」……………179
1 「不調和によるパースペクティブ」としての権力一元論……………179
2 権力一元論と「人間の多様性論」……………180
3 「不調和によるパースペクティブ」と「戦争の昇華」論……………181
四 語用論的転換と「不調和によるパースペクティブ」――「よりどころのない立場」……………183
1 ドラマティズムと知識社会学……………183
2 「地口構造」と「不調和によるパースペクティブ」……………184
3 「不調和によるパースペクティブ」とミルズ知識社会学……………185
4 「よりどころのない立場」と純粋な反省性……………186
五 「マルクス主義のマルクス主義」と知識人論の動機……………186
Ⅳ アメリカ公共知識人の作品動機……………189
●第七章 公共知識人論とミルズ社会学
――R・ジャコビーの所説を手がかりとして……………190
一 公共知識人論と動機論――清水晋作のトライユニティ論を手がかりに……………190
二 ジャコビーの公共知識人論――ハイブリッド、ヴァナキュラー、パスティッシュな作品性……………192
1 公共知識人と「見えない知識人」――ハイブリッドなアメリカ像と知の制度化……………192
2 ヴァナキュラーな批評とテクニカルな批評――知識人と公衆のことばをめぐって……………195
3 ハイブラウな文化とパスティッシュな文化……………197
三 ミルズにおける知識人論と公衆論――中間階級化との関わりで……………200
1 自由な知的職人と雇われ知識人……………201
2 政治的公衆と大衆的公衆……………204
四 ミルズにおける職人性と合理化――商業化と批評的作品性……………206
1 職人性と商業文化……………207
2 産業の動機とビジネスの動機――合理化をめぐって……………208
3 「動機論の動機論」と動機の逆理――産業化の動機と禁欲の倫理をめぐって……………210
五 アメリカ社会学の動機論:ミルズ、パーソンズ、ベル……………213
●第八章 現代アメリカ知識人論の再考察
――ラディカルな逆理論を手がかりに……………216
一 大衆社会と知識人――問題としての一九四〇年代論……………216
二 現代知識人論の課題・再考――馬場修一の所説を手がかりに……………217
1 テクノクラシー・文化・ラディカリズム――二つの状況認識……………217
2 知識人と大衆の相互転化……………218
3 多数性と両義性……………220
三 ラディカルな逆理・再考――反省の無限化をめぐって……………221
1 ラディカルな逆理……………221
2 再考察の手がかり――「独立ラディカル」と一九四〇年代論……………222
3 『ポリティックス』の路線変更……………224
4 非歴史的絶対としての「個」――P・グッドマンとミルズの論争……………225
5 「イン」であること――衝動と根拠……………227
四 パースペクティブとしての大衆と知識人――衝動と法理の自省的パースペクティブ……………230
1 衝動・法理・反省……………230
2 プラグマティズムの自己論――G・H・ミードの独創性……………232
3 スタイル概念と逆説性……………234
4 スタイル概念と両義性――近代批判・無限化批判とのかかわり……………236
5 マイノリティの特恵性をめぐって……………237
五 「知の遠近法」モデルと同一性論……………240
Ⅴ エピローグ……………245
●終章 C・W・ミルズ脱入門――公共社会学と平和思想……………246
一 ミルズの公共社会学と共生=平和思想……………246
二 ミルズにおける共生=平和の方法――動機の語彙・職人性・人間喜劇……………250
1 「国家なき国家」と政治的公衆……………250
2 職人性論の論理――ミルズの論法をめぐって……………253
3 喜劇的方法と機能主義……………256
三 組織化の「外部」の作品性……………259
1 高級文化と大衆文化における両義性の問題――D・マクドナルドとミルズ……………260
2 作品性としての「線引き」と「変換」……………262
3 貴族性のゆくえ……………265
四 「想像の武器」――ミルズの共生=平和思想のスタイル……………266
おわりに……………270
索引
文献一覧
初出一覧
ISBN:9784779118975
。出版社:彩流社
。判型:A5
。ページ数:288ページ
。定価:3200円(本体)
。発行年月日:2013年06月
。発売日:2013年06月05日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB。