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C・S・ルイス 霊(プネウマ)の創作世界

著:小林 眞知子

紙版

内容紹介

C・S・ルイスは、ナルニア国物語、詩集、SF小説、神話物語、文学研究書、文学史、キリスト教神学と弁証家としての著作、書簡集、自叙伝など多様なジャンルを自由に往来して作品を仕上げた多作な作家である。
 古典叙事詩、中世ロマンスに伝承されてきた超自然と自然の交錯する物語世界をファンタジーの糸を手繰り寄せながらひも解き、ルイス固有の物語構造や関心領域の特質、内面に生起するものを言語化する技法などにせまる労作。
本書の基本姿勢は、作品の中に根ざしている生来の固有の論拠を用いてルイス自身が世界をどのように把捉し、表現しようとしたのか、境界の発想、可変的な生成の世界と不変的永遠の世界、古代異教世界とキリスト教との関わりなどについて考察することにある。ルイスが立てた問とその推論過程を書かれたテクストを解釈し把握することにより、創作の時空の設定、寓話的語り、比喩、神話体系などにどのように反映しているかの関連を見出すことにある。あるいは、逆に作品を読み、語りの象徴性を読み解くことの可能性を探るものである。(それによって)ルイスという作家に固有の物語構造や表現の反復性にみられる関心領域の特質、内面に生起するものを言語化する技法などが対象として捉えられてくる。(「まえがき」より)

目次

まえがき         
序 章 C・S・ルイスとキリスト教
 一 すべてのものを照らす光
 二 受肉の言語としての神話
 三 キリスト教の精髄
 四 キリスト教と文化
第一章 憧れ
 一 まだ見ぬ先に
 二 記憶の記憶
 三 北欧への憧れ
 四 至福の記憶と喪失感
 五 疼き 
 六 憧れの源
 七 巡礼者
 八 避けられた堕罪
 九 聖らかさ
第二章 理性 
 一 アクロポリスの女神
 二 普遍的なもの
 三 理性の純潔を汚すもの
 四 理性と経験
 五 主観主義の毒
 六 正しさの判断基準
 七 超自然–自然–下位自然
 八 奇跡について
 九 理性と信仰
第三章 想像力
 一 想像する人間
 二 「すべてはイメージではじまる」
 三 二重の意識と構造 
 四 スピリットの生息する世界の想像
 五 想像力の機能、観念と形象 
 六 夢に現れたもの
 七 想像力による洗礼
 八 ファンタジーによる準創造
 九 想像力作用と思考
第四章 愛
 一 吟遊詩人の恋愛歌
 二 『四つの愛』
 三 『愛はあまりにも若く』
 四 『愛のアレゴリー』『宮廷風恋愛』
 五 ロマンスの擁護──『薔薇物語』
 六  スペンサー『妖精の女王』
第五章 ログレス1
 一 書簡体小説──『悪魔の手紙 
 二 アレゴリー─『天路退行』
 三 ランサムのSF三部作 
 四 古太陽言語─マラカンドラ
 六 聖霊降臨とバベルの塔─サルカンドラ
第六章 ナルニア国年代記物語
 一 物語の構造と啓示
 二 天地創造─『魔術師の甥』
 三 福音と律法─『ライオンと魔女』
 四 自由への道─『馬と少年』
 五 歴史と昔話─『カスピアン王子の角笛』
 六 預言─『朝びらき丸 東の海へ』
 七 知恵─『銀のいす』
 八 黙示録─『最後の戦い』
第七章 詩はささやかな受肉
 一 ロゴスとポイエマ 
 二 受肉と四つの原理
 三 個性理論の異端性 
 四 ダンテとルイス
 五 スペンサーの生み出す自然の像 
 六 歴史の時代区分について
 七 詩の言葉と祈りの言葉
結び
謝辞──あとがきにかえて
ルイス著作一覧

著者略歴

著:小林 眞知子
こばやし まちこ
1959年 東京都に生まれる
国際基督教大学(B.A.)ICU大学院比較文化博士前期課程修了(文学修士、M.A.)
ICU大学院比較文化博士後期課程単位取得後退学、日本学術振興会特別研究員
英国ケント大学カンタベリー校(Diploma)
聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化研究科博士後期課程修了(学術博士、Ph.D.)
現在 実践女子大学非常勤講師、流通経済大学非常勤講師
論文 “A Manifold Scheme of Symbol in Dante’s The Divine Comedy”,“Good&Evil in Paradise Lost. ”“The Waste Land 1922 by T.S.Eliot”“George Herbert,His Faith&Poetry”etc.
訳書 ロッホマン『講解・使徒信条 キリスト教教理概説』(共訳)

ISBN:9784779115189
出版社:彩流社
判型:A5
ページ数:288ページ
定価:2900円(本体)
発行年月日:2010年03月
発売日:2010年03月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB