ポーランドの建築・デザイン史
工芸復興からモダニズムへ
著:デイヴィッド・クラウリー
訳:井口 壽乃
訳:菅 靖子
内容紹介
アーツ・アンド・クラフツ復興から1930年代末のデザイン論争まで、日本ではほとんど知られていないポーランドのデザイン史。
18世紀末、隣接する列強に分割されてヨーロッパの地図から消え去ったポーランド。 1918年の独立後も常に「祖国喪失」に晒された自国の複雑な歴史に直面した芸術家やデザイナーたちは、独自の「ポーランド文化」の創造に重要な役割を果たした。
デザイン改革の理念と実践、中東欧の文化表象の構造と西欧とのつながり(バウハウス、デ・ステイル等)、ナショナリズムとの関係をとおして、政治的・社会的動向が明確に映し出されたポーランドの建築・工芸・デザインを考察する。
目次
日本語版への序文
第1章 はじめに〜ポーランド・デザインの歴史的背景
*「国家」なきポーランドの国民意識の表象
*19世紀ポーランドの社会情勢
*愛国的記憶とデザイン文化
第2章 19世紀後半のザコパネ様式〜ナショナル・スタイルを求めて
*バラニェツキとクラクフの産業博物館
〜趣味と工芸の教育機関
*ヴィトキェヴィチによるザコパネ様式の建築
〜「純粋」なポーランドとしてのタトラ山地
第3章 20世紀初頭の動き〜ポーランド応用芸術協会とクラクフ工房
*ポーランド応用芸術協会
〜アーツ・アンド・クラフツ運動の中心
*ヴィスピヤンスキの建築への貢献
〜応用芸術と文学の支流
*クラクフ工房
〜「芸術家と職人の共同作業」
第4章 第一次大戦後のナショナル・スタイル〜国家再建とクラクフ派
*ポーランドの復興
〜戦争と分割の混乱を超えて
*首都ワルシャワとクラクフ派
〜「北のパリ」の文化の担い手たち
*クラクフとクラクフ工房
〜手仕事と民衆芸術のナショナリズム
*1925年のアール・デコ展
〜「ポーランド性」の表象
*ナショナル・スタイルと国民国家
〜国とクラクフ派による芸術文化の推進
第5章 1920年代の構成主義〜地域性へのこだわりとインターナショナリズム
*シュチュカとグループ「ブロック」
〜モダニズムのクラクフ派への挑戦
*スィルクスとグループ「プレゼンス」
〜住宅デザインの刷新
*国外からの影響とグディニャにみるモダニズム
*モダニズムとプラグマティズム
〜「プレゼンス」の分裂と「a.r.」の結成
第6章 1930年代の修正モダニズム
*機能主義の衰退と協同組合「秩序」の結成
〜クラクフ派の伝統の継承
*インターナショナリストとナショナリストの和解
*地方主義
〜地域性のある「モダニズム」の展開
*モニュメンタリズムとイタリアへの関心
*パリ万国博覧会(1937)におけるポーランドのパヴィリオン
第7章 おわりに
■地図/関連年表付