保育所等における子ども家庭支援の展開
生活困難を支える園実践の質的分析
著:中谷 奈津
内容紹介
保育所等は日々の子育てにどのように伴走しているのか
地域社会の人間関係の希薄化により,
個人と社会を繋ぐ保育所等の役割はますます重要になっている .
子育て支援の現場では, 複雑化する問題にどのように対応しているのか.
保育所等の組織的支援の実践知について考察する.
目次
序 章 子育て家庭の脆弱化と子ども家庭支援
1 コロナ禍における家族と子育て
2 揺らぐ子育て基盤と支援の必要性
3 生活困難家庭と保育所等の役割
4 本書における「生活困難」
5 保育所等における子ども家庭支援に関する 実践知の可視化に向けて
6 本書の目的と構成
第Ⅰ部 組織で支える
第 1 章 生活困難家庭を支えるための保育所等の役割
1 日本における保育所等の役割と機能
2 子どもの貧困における保育の役割と課題―2000 年以降の海外文献レビューをもとに―
第 2 章 早期発見と他機関連携を可能にする組織特性
は じ め に
1 生活困難家庭の早期発見と他機関連携をめぐる議論
2 調査の概要
3 早期発見と他機関連携からみた組織特性
4 早期発見と他機関連携を可能にする組織特性
5 早期発見の基盤となる保育者の敏感さの向上に向けて
第 3 章 生活困難家庭を支えるプロセス
―インタビュー調査を通して―
は じ め に
1 子ども家庭支援における保育者の姿勢の再考
2 支援的介入のプロセスとその関連要因
3 子ども家庭支援に関する情報共有を支える組織的要因
4 子ども家庭支援に関する保育者間の情報共有の実際
第Ⅱ部 組織で育てる
第 4 章 園における「子育ち」への積極的支援
は じ め に
1 園における子育ちへの積極的支援―保育における「養護」に着目して―
2 子育ちへの積極的支援と家庭との連携
第 5 章 日本における「ヘッドスタート」論の諸相
―アメリカの補償教育をめぐる論点の所在―
は じ め に
1 日本におけるヘッドスタート研究の特徴
2 ヘッドスタート開始とその後の経緯
3 2010 年代の日本における再注目―ヘックマンによる研究の普及―
4 補償教育が前提とする文化剥奪論と同化主義に対する批判
5 ヘッドスタートの効果測定をめぐる論争
6 保護者の関与の重視
7 具体的なカリキュラムの内容
8 残された多様な論点
第Ⅲ部 保育者として育つ
第 6 章 困難家庭を支えるための保育者の意識改革
―先駆的実践園での取り組みを手がかりに―
は じ め に
1 生活困難家庭への支援の必要性を園長はどのように認識し,形成するか
2 管理職が抱く子ども家庭支援を支えるポリシー
3 保育者の意識改革のための園内構造とそのプロセス
第 7 章 社会福祉法人の経営と子ども家庭支援の展望
は じ め に
1 生活困窮支援をめぐる制度環境の変化
2 保育所等における子育て支援の在り方
3 公益性と事業性とのジレンマ
4 保育所等に求められる組織行動と園長のリーダーシップ
5 将来に向けた持続可能な保育所等の経営モデル
終 章 保育所等における子ども家庭支援の 新たな展開に向けて
1 本書以前の研究知見から
2 本書から得られた知見
3 「実践知」獲得からの考察
4 保育所等における子ども家庭支援の実践向上に向けて
5 今後の課題