現代社会を拓く教養知の探求
編:教養教育研究会
内容紹介
混迷を深める現代社会の問題を解きほぐすためには,
教養知の学びに裏打ちされた知性と人間的態度,とりわけ21世紀社会に応える市民的公共性を育むことが欠かせない.
「教養知とは何か」を思索と多様な実践で提起する
現代社会に求められる教養知の探究はどのように行われているのか.
学生はアイデンティを確立する学びを教養教育で培い,教員は学生に問いかけ,向き合いリフレクションを重ねながらさらに教養知を探索する.
本書は,大学での多様なアプローチによる実践を踏まえた成果を紹介する.
目次
まえがき
第一部 教養知とその枠組み
第1章 「教養知」の目指すもの 野家啓一
1「方法」から「教養」へ
2 西欧における「教養知」の展開
3 日本における「教養知」の移入
4 「教養知」とは何か
第2章 大学生の成長と教養知 河井亨
1 大学生の知識との関係での成長
2 大学生の学校から仕事・社会への移行
3 大学生の学びとアイデンティティ形成
4 知識・エージェンシー・アイデンティティ形成の連関
5 教養知をめぐる困難を見据えて
6 教養知の学び
第3章 自分を解放するための知に出合う 柳原恵
――教養知とジェンダー――
1 教養/教養教育におけるジェンダー視点の重要性
2 現代の学生が考える教養知としてのジェンダー
――立命館大学教養科目「ジェンダーとダイバーシティ(GC)」受講動機から――
3 新しい教養知に出合う
――ある女性の語りから――
第4章 大学における教養教育の課題についての経験的考察 小関素明
――歴史学からの模索――
1 大学における教養教育に求められるもの
2 歴史学における教養教育の模索事例
3 日本近代を事例に権力の真の恐ろしさを語る工夫を
4 思考を縛るタブーからの解放
第二部 教養知の学びと実践
第5章 「格差と教養の戦後史」と「空きコマ」の可能性 福間良明
――「偶然性のメディア」としての教養科目――
1 農村と教養共同体
2 都市と「知的なもの」への憧れ
3 人生雑誌の盛衰
4 現代の「大学と教養」をどう考えるか
第6章 地域学を創る 家中茂
――生活に根ざす知の実践――
1 鳥取大学における地域学の実践
2 生活のなかから生まれる学問
3 地域学における実践性
――生活者のプラグマティズム――
第7章 大学教育において、〈考える力〉を再構成する道について 山口歩
1 問題のありか
2 思考を蘇生させる講義のスタイルと方針
3 社会批判に関わることの難しさと重要性
4 対話としての講義レポートの往復
――レポートの応答で疑似対話空間を作ること――
第8章 「地域を基盤にした学習」がもたらす教養 秋吉恵
――知識を地域の文脈に即して調整し市民に育つ――
1 教養はどこにあるのか
2 学校教育への危機感と学びの転換
3 「地域を基盤にした学習」で促される教養
第9章 学びほぐしと教養の知 中村正
――臨床の知と教養の知の交差をとおした社会人の学び――
1 臨床の場からのアンラーン unlearn
2 横につながるネットワーク型の知の創造
3 大学教育にアンラーンをどう組み込むか
4 オートエスノグラフィという知
――「私」というポジショナリティと関連して――
5 教養の知の役割
――認識的不正義――
6 他者を理解するための知として
――認識的不正義を教養に活かす――
7 個人のアンラーンと社会のアンラーンをつなぐこと
第10章 人類の歴史に見られる「教養知」形成への局面 兵藤友博
――科学史・技術史からの覚書――
1 人間的自然の形成
――人類の起源に遡って――
2 古代における「学問知」「技術知」
――国家の成立と知性の階級制――
3 宗教と科学の対抗
――科学的知性観はどう獲得されたのか――
4 科学と産業、政府、そして戦争
――人類社会の未来を照らす市民的公共性――
あとがき
ISBN:9784771038158
。出版社:晃洋書房
。判型:A5
。ページ数:224ページ
。定価:2800円(本体)
。発行年月日:2024年03月
。発売日:2024年03月11日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN。