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南山大学学術叢書

水と大地の環境学

持続可能性の根を求めて

著:篭橋 一輝

紙版

内容紹介

水と大地の「代替不可能性」はどう認識され、乗り越えられてきたか。水融通、ランドケア、価値論から迫る、新しい持続可能性論。
水と大地の「代替不可能性」を切り口に、日本の水融通と豪州ランドケアの制度から、クリティカル自然資本や関係価値の概念まで学際的に分析する。「自然と人間の関係性」という視座から持続可能性を問い直す野心作。

目次

はじめに
序章
1. 〈代替可能性〉の4つの次元
1.1. 〈有用性〉の次元
1.2. 〈希少性〉の次元
1.3. 〈固有性〉の次元
1.4. 〈通約不可能性〉の次元
2. 本書の分析視角と理論枠組み
2.1. 第一象限:弱い持続可能性論 。
2.2. 第二象限:コモンズ論
2.3. 第三象限:関係価値論
2.4. 第四象限:強い持続可能性論
3. 本書の構成
4. 水融通とランドケアについて
4.1. 水融通
4.2. 讃岐平野について
4.3. 1994年の異常渇水とその対応
4.4. ランドケア
第1部:水
第1章 水融通とは何か
1. 香川県讃岐平野の水事情
2. 香川用水
3. 1994年の異常渇水への讃岐平野の対応
3.1. 上水道への水融通
3.2. 農業用水内での水融通
3.3. 発電用水の一時転用
4. 水融通の類型化と渇水被害の軽減効果
4.1. 水融通の3 類型
4.2. 水融通による渇水被害の軽減効果
5. “水融通”の原理的考察
6. 小括
第2章 水融通の渇水適応力を検証する
1. はじめに
2. 讃岐平野における水融通システム
3. 分析方法
3.1. 費用項目の定義
3.2. ため池掛かりの分類
3.3. データ
4. 分析結果
5. 考察
6. 小括
第3章 水資源開発によるため池コモンズの変容
1. はじめに
2. 戦後日本の水資源開発の功罪
3. 讃岐平野における農業用水の水利用・管理の変化
3.1. 讃岐平野の農業水利慣行と制度変化
3.2. オストロムの制度変化の枠組み
3.3. 農業水利慣行の制度変化の合理性
4. 考察
5. 小括
第4章 讃岐平野の渇水適応の制度的持続可能性
1. はじめに
2. 1994年の異常渇水を契機とした制度変化
3. 渇水適応の制度的持続可能性
3.1. オストロムの設計原理
3.2. 讃岐平野の渇水管理の持続可能性
3.2.1. 資源と利用者の明確な境界
3.2.2. 利害関係者の参加,自治的な資源利用を行う正当性,コンフリクトの解決
3.2.3. モニタリング,段階的な制裁
3.2.4. 便益と費用負担のバランス
3.2.5. 入れ子状の組織形態
3.3. 讃岐平野の渇水管理の持続可能性の評価
4. 考察
5. 小括
第5章 水融通の理論枠組みの再構築
1. 渇水への制度的適応と持続可能性の分析枠組み
1.1. オストロムのコモンズ論
2. オストロムの枠組みの課題
3. オストロムの枠組みの拡張
3.1. “生産的基盤”概念との接合
4. 小括
第2部:大地
第6章 ランドケアとは何か
1. はじめに
2. ランドケアに至るまでの環境政策史
3. 1980年代中盤から1990年代の初期ランドケア運動の広がり
3.1. 初期ランドケアの政策的展開
3.2. 初期ランドケアの参加者の特徴
4. ランドケアの取り組みの事例
4.1. ローカルレベルでの活動
4.1.1. ブーマヌーマナ・ランドケアグループ
4.1.2. パンヤビア・ランドケアグループ
4.1.3. ウォーナンブール・コーストケア・グループ
4.2. 地域(流域)レベルでの活動
4.2.1. バスコースト・ランドケアネットワーク
4.2.2. バサルト・トゥ・ベイ・ランドケアネットワーク
4.2.3. Woady Yaloak Catchment Group
4.3. 州レベルの活動
4.3.1. Department of Environment and Primary Industries (DEPI), Victoria
5. ランドケアの制度的特質に関する考察
5.1. ランドケアグループやネットワークはどう形成されるのか
5.2. ランドケア活動の持続可能性を決定づける要因は何か
6. 小括
7. ランドケアの成功要因
第7章 ランドケアと持続可能な発展
1. ランドケアと生産的基盤
2. 初期ランドケアの4つのステップ
2.1. 自然資本の代替不可能性の認識
2.2. 資本資産への投資
2.3. クリティカル自然資本の回復・保全の達成
2.4. 知識ストックの蓄積・共有
3. ランドケアと持続可能な発展
4. 小括
第8章 ランドケアと水融通に共通するものは何か
1. ランドケア
2. ランドケアの原理
3. ランドケアと讃岐平野の渇水管理の比較分析
3.1. 「倫理」の比較
3.2. 「目的」の比較
3.3. 「アプローチ」の比較
4. 小括
第3部:自然と価値
第9章 将来世代に引き継ぐべき自然環境をどう考えるか
1. はじめに
2. なぜ「代替不可能性」が問題になったのか?
2.1. 枯渇性資源の代替可能性をめぐる議論
2.2. 代替可能性をめぐる議論の広がり
3. 4つのサステイナビリティ論から見たクリティカル自然資本
3.1. 生産アプローチ
3.1.1. ソロー=ハートウィックの枠組み
3.1.2. デイリーの枠組み
3.1.3. 2つの枠組みの比較
3.2. 機能アプローチ
3.2.1. ピアス=ターナーの枠組み
3.2.2. エキンズの枠組み
3.2.3. 2つの枠組みの比較
4. 「代替可能性」を問い直す
4.1. 代替可能性の客観性と主観性
4.2. 辞書式選好に基づいた評価の可能性
5. 小括
第10章 クリティカル自然資本と持続可能性:到達点と課題
1. はじめに
2. 持続可能性をめぐる議論
2.1. 弱い持続可能性の考え方
2.2. 強い持続可能性の考え方
3. クリティカル自然資本の概念史
3.1. クリティカル自然資本概念の導入(1993 年)
3.2. 自然資本の代替不可能性を表す概念としての定義づけ(1993 〜1999 年)
3.3. クリティカル自然資本概念の発展(2000年以降)
4. ポール・ エキンズのクリティカル自然資本論の再検討
4.1. 持続可能な発展(SD)の目的
4.2. 自然資本の位置づけ
4.3. エキンズのクリティカル自然資本論の特徴
4.4. エキンズのクリティカル自然資本論の問題点
5. 小括
第11章 クリティカル自然資本概念を再考する
1. はじめに
2. エキンズのCNC論の特徴と課題
2.1. 自然資本に関する認識
2.2. エキンズのCNC論の特徴
2.3. エキンズのCNC論の問題点
3. CNCの価値類型
3.1. CNCと一次的価値
3.2. 一般的な価値類型と自然の価値
4. CNCの判定条件としての必要不可欠性
4.1. 自然資本/CNCの価値と個人の選好
4.2. 辞書式選好と必要不可欠性
4.3. 辞書式選好を必要不可欠性の評価に用いる際の課題
5. 小括
第12章 〈関係価値〉を問いなおす
1. はじめに
2. 先行研究における関係価値の定義
3. ハイムスとムラカの関係価値論
3.1. 〈手段的価値〉=代替可能か?
3.2. 〈関係価値〉は内在的価値から独立か?
3.3. 関係価値は「手段としての価値」を持たないのか?
4. 一般的な価値分類における関係価値の位置づけ
5. 小括
終章
おわりに
初出一覧
引用文献
索引

著者略歴

著:篭橋 一輝
南山大学国際教養学部/社会倫理研究所・准教授

ISBN:9784771038134
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:296ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年04月04日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TQ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JHB