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「社会学」としての鶴見俊輔

「記号の社会学」の構想と意味の多元性

著:寺田 征也

紙版

内容紹介

これからの鶴見俊輔研究のための礎石となる一冊

本書は、鶴見俊輔の思想を「記号の社会学」として再構成する新しい試みである。従来の鶴見俊輔論の整理と、プラグマティズムや大衆文化論の内在的検討を通じて、「記号の意味の『共通性』と『個別性』」の視点から大衆の知的生産の理論的・実践的把握を企図していたことを明らかにする。

目次

第Ⅰ部 鶴見俊輔の語られかた

第1章 鶴見俊輔についての語りの諸類型
 第1節 鶴見俊輔論の検討の必要性
 第2節 鶴見俊輔についての語りの典型──社会学者による「追悼」から
 第3節 「世代」と「交流」と鶴見俊輔への聞き取り  
 第4節 鶴見俊輔と親密だった人物による語り  
 第5節 鶴見俊輔を語る「動機」と「交流」の問題  
 第6節 「ちゃんと研究する」ことへ  

第2章 鶴見俊輔論の交錯   
 第1節 菅孝行『鶴見俊輔論』(1980)
 第2節 海老坂武『雑種文化のアイデンティティ 林達夫、鶴見俊輔を読む』(1986)  
 第3節 上原隆『「普通の人」の哲学』(1990)  
 第4節 新藤謙『ぼくは悪人』(1994)  
 第5節 原田達『鶴見俊輔と希望の社会学』(2001)  
 第6節 木村倫幸『鶴見俊輔ノススメ』(2005)  
 第7節 上野俊哉『思想の不良たち』(2013)  
 第8節 大河原昌夫『鶴見俊輔に学んだ精神医療』(2014)  
 第9節 松井隆志「05鶴見俊輔」(2014)、「運動のつくり方の知恵」(2015)  
 第10節 村瀬学『鶴見俊輔』(2016)  
 第11節 谷川嘉浩『鶴見俊輔の言葉と倫理』(2022)、荒木優太『サークル有害論』(2023)、
       高草木光一『鶴見俊輔 混沌の哲学』(2023)
 第12節 鶴見俊輔論の整理からわかること  

  第Ⅱ部 鶴見俊輔「記号の社会学」の理論的基礎

第3章 鶴見俊輔の社会学的可能性   
 第1節 鶴見俊輔研究の課題  
 第2節 鶴見俊輔の理論的視座  
 第3節 鶴見俊輔の漫画論  
 第4節 「記号の社会学」への展望  

第4章 ディスコミュニケーション論の検討   
 第1節 ディスコミュニケーション論の展開  
 第2節 「ディスコミュニケーション」概念の誕生──「二人の哲学者」より
 第3節 コミュニケーション史と文化史──「マルクス主義のコミュニケーション論」
 第4節 コミュニケーション史から芸術論・運動論へ──「コミュニケーション史へのおぼえがき」
 第5節 「ディスコミュニケーション」から大衆文化論へ

第5章 プラグマティズムにおける民主主義とアナキズム   
 第1節 プラグマティズムのふたつの政治思想  
 第2節 プラグマティズムにおける対話と抵抗──アメリカにおける分断の問題
 第3節 プラグマティズムの民主主義論  
 第4節 プラグマティズムのアナキズム論
 第5節 アナキズムと「私的な根」の正しさ/マチガイ

第6章 「親問題」としての教育と知的生産   
 第1節 鶴見俊輔の「親問題」と「子問題」
 第2節 言語習慣の変革のための国語教育
 第3節 生活綴り方運動とサークル
 第4節 鶴見俊輔の教育論の射程  

  第Ⅲ部 鶴見俊輔の大衆文化論と「意味」

第7章 大衆文化論の基礎視角としての「思想」   
 第1節 大衆の「思想」という論題  
 第2節 「大衆思想史」という課題  
 第3節 鶴見俊輔における「思想」の定義  
 第4節 「思想」と哲学のあいだ  
 第5節 大衆の「思想」から伝記へ  

第8章 「限界芸術」論の再検討   
 第1節 「限界芸術」とは何か?  
 第2節 「限界芸術」はいかなる芸術なのか?  
 第3節 「限界芸術」論の原型──「ルソーのコミュニケイション論」から
 第4節 「限界芸術」と大衆社会──「限界芸術論再説」から
 第5節 「限界芸術」と「思想」と文化  

第9章 鶴見俊輔の漫画の捉えかた   
 第1節 漫画言説史における鶴見俊輔  
 第2節 鶴見俊輔の漫画論の概要  
 第3節 鶴見俊輔はいかに漫画を捉えたか?  
 第4節 鶴見俊輔の漫画論の展開可能性  

第10章 鶴見俊輔の「笑い」論   
 第1節 鶴見俊輔の大衆文化論における「笑い」  
 第2節 鶴見俊輔「笑い」論の概略  
 第3節 鶴見俊輔の漫才論・落語論・漫画論と「笑い」  
 第4節 神話と「笑い」  
 第5節 「笑い」論の限界と可能性

終 章 「社会学」としての鶴見俊輔
 第1節 「記号の意味の『共通性』と『個別性』」  
 第2節 G・H・ミード「思考の社会学」との接続可能性  
 第3節 鶴見俊輔の仕事はいかに社会学的であるのか?  
 第4節 鶴見俊輔の人間観と社会学との接点  
 第5節 「開かれた」鶴見俊輔研究のために  

補論1 鶴見俊輔における「信念」と「態度」の解離──多元的な鶴見像の再記述に向けて
補論2 鶴見俊輔「旧蔵書」にみる思想形成の基盤

著者略歴

著:寺田 征也
寺田 征也(てらだ まさや)
1981年静岡県生まれ。東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了,博士(情報科学)。
現在、明星大学人文学部人間社会学科准教授

主要業績として、「鶴見俊輔──『まちがい』の世界を生きることの社会学」(『戦後日本の社会意識論 ある社会学的想像力の系譜』,奥村隆編,有斐閣,2023年)、「鶴見俊輔はいかに漫画をとらえたか?──開かれた『鶴見の漫画論』研究に向けて」(『マンガ研究』25,日本マンガ学会,2019年)、「コミュニティ放送局はいかに調べられ,語られているか──3.11後の研究動向」(『日本のコミュニティ放送 理想と現実の間で』,松浦さと子編著,晃洋書房,2017年)、「G・H・ミードとJ・デューイの芸術論──『経験』概念と芸術家観に注目して」(『社会学研究』90,東北社会学研究会,2012年)。

ISBN:9784771038035
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:304ページ
定価:5600円(本体)
発行年月日:2024年02月
発売日:2024年02月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB